集団的自衛権有識者懇が再開9月17日 19時22分
集団的自衛権の行使を巡る政府の有識者懇談会は、7か月ぶりに議論を再開し、安倍総理大臣は、「いかなる憲法解釈も、国民の生存や存立を犠牲にするような帰結となってはならない」と述べ、集団的自衛権の行使を容認することに改めて意欲を示しました。
歴代の政府が、憲法解釈上認められないとしてきた、集団的自衛権の行使を巡る政府の有識者懇談会は、ことし2月以降開かれていませんでしたが、17日、およそ7か月ぶりに議論を再開し、安倍総理大臣と菅官房長官も出席しました。
安倍総理大臣は、「いかなる憲法解釈も、国民の生存や存立を犠牲にするような帰結となってはならない。懇談会での検討が、憲法制定以来の変化を直視し、新しい時代にふさわしい憲法解釈のあり方を検討していく基礎となることを期待している」と述べ、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに、改めて意欲を示しました。
座長代理を務める国際大学の北岡伸一学長は、「世間では、集団的自衛権について、十分に理解があるとは言えないが、政府の最大の任務は、国民の安全を守ることであり、そのために何が必要で、不十分なところはないか考えていきたい」と述べました。
懇談会では、日本と密接な関係にある国が攻撃を受け、日本の安全保障に影響を及ぼすおそれがある場合は、同盟国のアメリカに限らず、集団的自衛権の行使を容認する方向で議論が進められる見通しです。
また、外国で日本人が戦乱やテロに巻き込まれた場合に、自衛隊による救出活動をどこまで認めるかについても、議論することにしています。
懇談会は、年内にも報告書をとりまとめる方針で、これを受けて安倍総理大臣は、政府の対応を検討する考えです。
ただ、連立政権を組む公明党は、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使を容認することに慎重な姿勢で、調整は難航することも予想されます。
有識者懇談会これまでの経緯
集団的自衛権の行使を巡る政府の有識者懇談会は、安倍総理大臣が6年前の第1次安倍内閣の時に設置し、翌年に報告書を取りまとめました。
この報告書は、歴代の政府が憲法解釈上認められないとしてきた集団的自衛権の行使について、「これまでの解釈は、激変した国際情勢や日本の国際的地位に照らせば、もはや妥当しなくなってきており、憲法9条は、集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁じるべきものではないと解釈するべき」としています。
そのうえで、報告書では、▽公海上でアメリカの艦船が攻撃された際、自衛隊の艦船が防護することや、▽アメリカに向かう弾道ミサイルを自衛隊が迎撃することは認めるべきだとしています。
また、▽PKOなどで活動をともにするほかの国の部隊が攻撃された際には、警護のために駆けつけて武器を使用することを認めるよう求めています。
さらに、▽PKOなどに参加しているほかの国の部隊の後方支援を行う際は、「他国の武力行使と一体化しない」としている憲法解釈を変更し、支援もできるようにする必要があるとしています。
報告書は、安倍内閣の退陣を受けて就任した、当時の福田総理大臣に提出されましたが、福田総理大臣が憲法解釈の変更に慎重だったこともあって、具体的な対応はとられませんでした。
こうしたなか、安倍総理大臣は、政権復帰後のことし2月、5年ぶりに懇談会を再開し、当時の報告書の提出を改めて受けたうえで、日本を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえて議論を行い、新たな報告書を取りまとめるよう指示しました。
自公で意見異なる
政府が憲法解釈上、認められないとしてきた集団的自衛権の行使について、自民党は、去年の衆議院選挙の政権公約で「行使を可能にする」と明記し、行使を容認することを目指しています。
これに対して公明党は「海外で武力を使うことを認める道を開くものであり、明らかに一線を越える考え方だ」などとして、憲法解釈の変更によって行使を容認することに慎重な姿勢を示しています。
こうしたことから自民党は、両党の意見の違いを埋めるため実務者による協議の場を設けたいとしていて、石破幹事長は、これに先立って、安倍総理大臣と公明党の山口代表による党首会談を開き、協議の進め方などについて調整する必要があるという考えを示しました。
公明党の山口代表は、集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈の見直しについて「丁寧に議論し、国民の理解を得る必要があり、近隣諸国の理解を促す努力も求められる」とする一方で「党首同士が話す場面はあっていいし、安倍総理大臣との間で議論の進め方についてコンセンサスを得たい」と述べています。
政府関係者の1人は「懇談会の議論が再開したことをきっかけに与党内の議論が活発化することを期待したい」と述べていますが、党首会談の日程は今のところ決まっておらず、今後、調整が行われる見通しです。
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