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【暮らし】

夫からのDVで荒れた母子関係 修復プログラムで改善

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 ドメスティックバイオレンス(DV)の警察による認知件数が過去最多の4万3950件(2012年、警察庁調べ)となる中、夫のDVですさんだ母子関係を修復させるプログラムが注目を集めている。プログラムで成果を上げているNPO法人「湘南DVサポートセンター」(神奈川県藤沢市)の瀧田信之理事長に聞いた。 (加藤木信夫)

 DV被害を受けた母子の心の傷は深い。修復プログラムを受けた四十代の母と小学校高学年の息子の場合、息子が母を「サル」と呼び続けた。瀧田さんらスタッフが「お母さんでしょ?」と問うと、「いや、あれはお手伝いさん」「実は借り腹(代理出産)なんだ」と、母の存在を認めようとしなかった。

 三十代の母、小学校低学年の長女、保育園の次女のケースでは、財布や鍵などを長女が管理するという母との逆転現象が現れた。

 「男の子は父親から『あいつ、サルみたいだろ』という母への暴言を刷り込まれていた。女の子は、DVで疲れ果てた母親の代わりになろうとした。いずれも、よくあるケース」と瀧田さん。

 精神的に不安定になった母親が、子に「言葉の暴力」を向けたり、家事・育児をおろそかにする「ネグレクト」という形で子を虐待したり。DVが長引き、状況が悪化するにしたがって、母子の関係も悪くなるという。

 「母子の再統合」と呼ばれるプログラムは、約二年間にわたるカウンセリングのほか、必要に応じてミニ合宿、野外でのロープを使った「レスキューごっこ」などを行う。

 カウンセリングは母と子を交互に行う。スタッフが仲介者になり、母のつらかった思いを子に、放置されるなどした子のいら立ちを母に、双方が理解し合えるよう丁寧に伝えていく。ミニ合宿ではかまど造り、火おこし、水運びなどすべてを母子の共同作業で担わせる。

 ユニークなのは「レスキューごっこ」だ。母子がカヌーで川を五キロほど下った後、流れの遅い浅瀬で子どもがわざと流され、母がロープを投げて救助する。反対に、流される母を子が助ける場合もある。「相手がいないと生きられない」と再認識させる狙いだ。

 「サルを連呼した男の子は当初、学校に行けず、漢字も十個くらいしか書けなかった。今は高校生になり、専門学校へ進学したいとメールをくれる。支援者冥利(みょうり)に尽きます」と瀧田さん。

 「DVを受けたり間近で見たりした子は、親になったとき、家族の愛し方が分からず、DVの加害者や被害者になる確率が高くなる」と指摘。「暴力の連鎖を断ち切るため、できるだけ早く専門知識と対策を持つ団体に相談を」と呼び掛けている。

 湘南DVサポートセンターの電話番号は090(4430)1836。電話相談は受け付けておらず、必ず有料の面談で状況を聞き取り調査する。

 

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