東日本大震災:「やっと報われた」 勝訴の遺族、涙で握手
毎日新聞 2013年09月17日 11時42分(最終更新 09月17日 11時48分)
「やっと報われた」。東日本大震災で犠牲になった園児4人の遺族が、私立日和幼稚園(宮城県石巻市)の過失責任を追及した損害賠償請求訴訟。遺族は、法廷での園側証言やインターネット上の中傷などに心が折れそうになりながらも、我が子の笑顔を思い出しながら「幼い子が死なねばならない悲劇が二度と起きぬよう、形を残したい」と自らを奮い立たせてきた。
午前10時、仙台地裁101号法廷。斉木教朗裁判長が原告勝訴を告げると、次女の春音(はるね)ちゃん(当時6歳)を亡くした会社員、西城靖之さん(45)は原告席に座ったまま天井を仰いだ。妻江津子さん(38)は、下を向いておえつを漏らした。法廷の外に出ると遺族らは、苦しんだ2年半をかみしめるように、涙ぐみながら握手をしたり、肩をたたき合ったりした。
2011年3月11日。激しい揺れに江津子さんは約2キロ離れた職場から園に駆けつけたが、春音ちゃんを乗せたバスは既に出発していた。園職員は「すぐに戻ってきますから」と言ったが、その「すぐ」が訪れることはなかった。
捜し続けた14日昼、靖之さんは、がれきが広がる地獄のような風景の中に、津波火災で焼け落ちたバスを見つけた。春音ちゃんは友達と手をつないでいた。「怖かっただろうに。みんな一緒に逃げようとしたんだな」。涙が止まらなかった。