2013年09月16日

◆ 桂川 氾濫 とダム制御

 京都に豪雨が襲って、桂川が氾濫した。これはダムの制御で何とかならなかったか?

 ──

 京都に豪雨が襲って、桂川が氾濫した。
  → 警戒 京都・桂川が“氾濫”27万人に避難指示
  → 都やばい。限界を超えた日吉ダムの放流。桂川が氾濫。
  → 京都嵐山の渡月橋が台風で流されそう!! 桂川が氾濫!?
  → 桂川も鴨川も普段とは全く違う川になってます
  → 台風18号で京都がヤバイ!








  twitter の報告で、午前3時ごろにはほぼ満杯状態で氾濫しかけているとわかる。実際に氾濫が確認されたのは、16日午前7時20分ごろだという。

 ──

 ここで疑問なのは、ダムの役割だ。
 「洪水を防止するダムがあったのに、役に立たなかったのか? ひょっとして、豪雨の前には放流しないで、豪雨が来たら大量に放水しているのでは?」
 そう思って調べてみた。下記だ。
  → リアルタイムダム諸量一覧表(日吉ダム)

 このページは刻々と書き換わるので、保存に適さない。そこで、見やすい形に整理して、保存しておこう。
  → 日吉ダムの貯水率

 これを見ると、次のことがわかる。
  • 15日の夕方までは、放水量は少なめ。
  • 15日の夜には、流入量が少しずつ増えたが、放流はあまり増やさない。貯水率を高めている。
  • 15日の深夜から 16日初期にかけて、流入量が急増したが、放流はいくらか増やすだけ(148程度)。貯水率を急激に高めている。
  • 16日の午前3時ごろには、流入量が激増したが、放流は同程度(148程度)。貯水率を急激に高めている。
  • 16日の午前6時〜8時ごろには、流入量が最大値となった。(このとき桂川は氾濫した。)放流は同程度(148程度)。貯水率を急激に高めている。
  • その後はなだらかに流入量が減ったが、依然として高い水準。放流は同程度(148程度)。貯水率を急激に高めている。
  • 16日の午後 12時過ぎになると、流入量は同程度だが、貯水率が 上限値( 380% )に近づいた。このままではダムが決壊する。そこで、放流を急激に増やした。これまでは 148程度だったが、一挙に 500以上に増やした。
  • その後は、流入量と放流量をほぼ同程度に保ったまま、その値が少しずつ減っていった。
  • 午後7時現在で、流入量と放流量はともに 300弱。このあとも漸減する見込み。

 ──

 以上を見たあとで、次のように判断する。
 (1) 台風が来る前には、放流しておくべきだった。
 (2) 豪雨になる前にも、放流しておくべきだった。
 (3) 以上によって、事前の貯水量を大幅に引き下げておくべきだった。
 (4) 現実には、放流はなされなかった。そのせいで、貯水率は 97%からどんどん高まるばかりだった。午前6時以降の放水量をゼロにできなかった。
 (5) もし(1)〜(3)の措置を取っておけば、午前6時以降の放水量をゼロにできたはずだ。そうすれば水位は1割ぐらいは低まったと見込まれる。その場合、氾濫は避けられた可能性が高い。


 【 放流のモデル 】(数字は貯水率)

  ・ 12時間前:台風が来そうだ → 60% まで下げる。(大量放流)
  ・ 6時間前:豪雨はほぼ確実 → 30% まで下げる。(大量放流)
  ・ 3時間前:近辺で既に豪雨 → 10% まで下げる。(中量放流)
  ・ 0時間前:下流で氾濫していなければ放流は継続。(少量放流)
  ・ 6時間後:下流で氾濫しそうならば放流を停止。 (ゼロ放流)

 ──

 まとめ。

 豪雨の前には、放流を増やしてダムの貯水率を低めるべきだ。一方、豪雨のせいで下流が氾濫寸前になったら、ダムは放流をやめべきだ。
 現実には、そうしなかった。豪雨の前には、放流を増やさずにダムの貯水率を高めていた。一方、豪雨のせいで下流が氾濫寸前になったら、ダムは多大な放流を続けて、下流の氾濫の一助となった。
 要するに、今のダムの制御は、「氾濫を防ぐ」という目的には役立っていない。かわりに、「水資源としての貯水量を最大化する」ということばかり考えている。ダムの役割が根本的に狂っている。というか、ダムの制御の仕方を、根本的に間違えている。
 制御の仕方しだいで、氾濫を防ぐこともできるし、氾濫を招くこともできる。今回の氾濫は、台風のせいで起こったというよりも、ダムの制御の仕方を間違えたから起こった、と言えそうだ。
 IT時代とは言え、ダムの制御の仕方さえ、我々はまともにできていないのである。何たる愚かさ。IT技術がいくら進んでいても、それを使うための頭がパープリンであったなら、優れた技術も宝の持ち腐れになるだけだ。




豚に真珠






 【 追記 】
 民間の気象業者と提携して、気象を予想して、ダムの水域の降水量を予想すれば、
 「いつどれだけ放水すれば被害を最小にできるか」
 という数値計算ができるはず。
 つまり、IT技術を上手に使えば、被害を最小化できるはずだ。
 異分野の連携が必要。
 
posted by 管理人 at 20:58 | Comment(7) | 災害・安全 このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
 ダムの目的を欲張るとこういうことになると聞いたことがあります。利水ダムと洪水調節ダムは両立しないとの議論の正しさの証拠になる今回の氾濫ですね。
Posted by guyver1092 at 2013年09月16日 22:48
数年前に砂防ダムも含め、ダムの治水効果が否定されている資料(釣り雑誌だった様な)を見た記憶があります。
記憶では中禅寺湖の出口だけが(これは殆ど自然湖ですが)その効果がありました。
同じ様な現象は昨年か一昨年前に新潟でもあったような気がします。
Posted by 京都の人 at 2013年09月16日 23:02
実は今回のデータを見てもわかる通り、効果はかなりあります。流入量に比べれば放出量の方がかなり小さい。その差の分だけ、氾濫しかける危険が減っています。
 仮にダムがなかったら、氾濫の時間は何時間か早まって、氾濫の水量は数倍になっていたでしょう。

 本項は、「もうちょっと工夫すれば、被害をゼロにできただろう」という話。
( ※ ダムの制御は全然ダメだったが、ダムの存在そのものは基本的には有益だった。割合で言うと、ダムの存在によって[最大限の]7割ぐらいの有益性を発揮した。残りの3割は、うまくやればできたのだが、うまくやれなかったので無駄になってしまった。3割の分を失敗した。)
Posted by 管理人 at 2013年09月17日 00:41
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2013年09月17日 00:43
 「日吉ダムはかなり効果があった」
 という記事。
  → http://matome.naver.jp/odai/2137930407974463101
Posted by 管理人 at 2013年09月17日 07:36
とんでもないタラレバだな。
俺はニラレバのほうが好きだよ。
この地域は少なくとも何十年も
豪雨災害などなかった(テレビで
住民のコメントを見た限りでは)。
そもそも今夏の日照り続きでダムの
貯水量は下がっていたのだろう。
できるだけ貯めたままにしておきたい
という心理が働いたと思われる。
そんなに雨が降るかどうかも確信が
持てない段階で放流とか無理だわな
Posted by パーチクリン at 2013年09月17日 11:46
> この地域は少なくとも何十年も 豪雨災害などなかった

 近年は異常気候なので、各地で「史上最悪の豪雨」が起こっています。過去の経験は当てになりません。
 あなたの発想を取ると、今後も各地で「異常気象のせいで多大な被害」が発生します。私の方式ならば、それを阻止できます。
 原発事故であれ何であれ、「事前に予防できるならば予防する」というのが私の方針です。「事故や被害が起こってから騒ぐだけで、被害発生は看過する」という方針とは違います。つまり、「最善を尽くす」か「無為無策で諦める」か。

> 今夏の日照り続き……できるだけ貯めたままにしておきたい

 8月ならば日照りで渇水になるのを心配するべきですが、9月中旬以降は台風の季節ですから、日照りの心配はありません。9月下旬に渇水になった例など、私は知りませんね。

> ダムの 貯水量は下がっていたのだろう。

 データを見てください。台風が来る直前で、貯水率は 97%です。台風が来たあとは、377%です。もともと貯水率は 97%ですから、たっぷりとありました。

> そんなに雨が降るかどうかも確信が 持てない段階で放流とか無理だわな

 放水の仕方は、本文中の 【 放流のモデル 】 を参考にしてください。これなら大丈夫。
Posted by 管理人 at 2013年09月17日 12:16
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