受験生の皆様

Global News −南山大生の海外見聞録

「東洋の神秘」はまぼろし?

日本・ヨーロッパ

Lars Ylinenpää(ラース・ウリネンペー)さん (人文学部日本文化学科)スウェーデンからの留学生


スウェーデンの湖でカヌーを漕いでいる時


長野県木曽駒の紅葉を見に


那覇市の守礼門にて

合気道、黒澤明、そして禅。
この3つが、私と日本を結びつけた。
合気道は小学校後半から中学にかけてやっており、それを通じて日本の文化に関心を持った。
10歳の頃、テレビで観た黒澤明の「七人の侍」は、衝撃的で忘れられない。
白黒映画なのに、それまで観たどの映画よりも感動した。
禅は、地元の図書館で見つけた本で興味を持った。
頭の中を常に行き来する様々な考えに目を向けず、その時にやっていることに専念するという考え方に惹かれ、日本に行ってみたいという思いがいよいよ強くなった。
「東洋の神秘」と言われるように、東洋には神秘的な知恵の伝統があり、日本は最先端の技術を取り入れながらも、その昔ながらの神秘的な知恵を残している。
日本人は皆、何か理性を超えた、禅的な知恵を持っているのではないか。
そういったことが書かれている本をたくさん読み、日本の大学への留学を目指して日本語の勉強を続けた。
南山大学を選んだのは、日本の近現代文学を学ぶためだ。

ところが……
「これがあの繊細で神秘的な文化を生み出した日本?」
独特な文化に憧れて、日本への留学を果たしたばかりの私は、神秘さどころか、日本人の行動に疑問や苛立ちを覚えた。
例えば、大皿から自分の箸で料理を取る、という日本人にとっては普通の行動が、私の母国スウェーデンでは失礼な行為となる。 そんな場面が多々あるのだ。
違う文化の中で生活していく上では、今まで当たり前と思っていた多くのことが覆される。
これが文化の違いか、とためらいながらも徐々に違いを受け入れていくうちに、「母国で培った考え方や価値観が固まりすぎていたのかもしれない」と思い始めた。
他国を受け入れ、理解するためにも、自分と相手との違いを認め、価値観や考え方を再構築しよう。
そう思い、先入観を持たずに日本を見てみると、たくさんの良いところに目が向き始めた。
美しい日本庭園、ゴミの落ちていないきれいな街、おいしい料理…。
日本の人々も近しい存在となり、よく観察してみると、言語や行動という表面的なことが違っても、泣いたり笑ったり、変わらない本質的なところがあることに気づく。
「東洋の神秘」を体現していると思い込んでいた日本人の人間的な面に、ある意味ほっとしたところもある。 日本人もスウェーデン人も、そう、人間はみな同じなのだ。
当たり前のことだけど、それが国籍に関係なく相手を想いやれる心となる。
人間として、世界の中の一人として、大切なことを私は日本へ来て学んだ。

見聞録メモ

日本で好きなもの

日本庭園やお寺

旅行が大好きで、北海道と沖縄が特に良かった。

好きな日本食

蕎麦

ちなみに、タコやイカなどの、ぐにゃぐにゃした食感は苦手。

休日の過ごし方

大学の友達とバンドを組んでいるのでその練習や、読書や映画鑑賞、小説を書いたり音楽を作ったりもしています。また、休日に限らず毎朝座禅を組むようにしています。

母国・スウェーデンはこんな国

スウェーデンは時間がゆっくりと流れていく国です。仕事が終わるのは早いので、夜はゆっくりと時間をすごします。
お金の節約も兼ねて、その時間に自分の手で家のリフォームなんかをする人が多いです。週末は友達と集まってホームパーティを開いたりします。
また、スウェーデンは湖が多く、スウェーデン人は湖で泳ぐことが大好きです。冬でも凍った湖に穴を開けて飛び込むのです!その後、サウナに入って体を温めます。

(2012年11月掲載)