「暴排条例の盲点…ネット上の“バーチャル組事務所”打つ手なし」の記事詳細：イザ！

　配下の組員に不良集団の排除を“指示”したとする容疑で暴力団組長が逮捕（不起訴）された事件にからみ、暴力団の活動を制限するために整備された暴力団排除条例に一つの「盲点」が露呈した。組長らはインターネット掲示板を業務連絡に利用していたが、条例では中止させる明確な根拠がないのだ。掲示板の運営事業者も書き込みに監視の目を光らせるが、明白な違法行為でなければ利用停止は難しく、“バーチャル組事務所”に打つ手がないのが実情という。

　◆業務連絡用

　大阪府警は６月、掲示板に「半グレ」と呼ばれる不良集団を追い払うよう指示する書き込みをしたとして、暴力行為法違反（教唆）容疑で山口組系暴力団組長を逮捕。組長は不起訴になったが、掲示板が日常的に組の業務連絡に利用されていたことが分かった。

　捜査関係者によると、掲示板は５～６年前から存在。組長のほか、別の組幹部と思われる書き込みもあり、組員たちは日々掲示板をチェック。組長専用のハンドルネーム（仮名）で指示が書き込まれると、組内で徹底がはかられていた。

　一方、暴排条例は事業者や個人に対し、暴力団の活動助長につながる行為を禁じている。具体的には暴力団事務所や会合の場所を有償無償を問わず提供することが禁じられ、改善の見込みがない場合や悪質なケースは業者名が公表される。

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記事本文の続き　ただ、今回の犯行に使われた掲示板は誰でも無料で開設できる「レンタル掲示板」。開設手続きはネット上で行い、厳格な身元確認もない。

　府公安委員会では委員から「掲示板業者は条例違反にならないのか」との質問が出たが、事業者側に暴力団との認識がなければ条例違反に問うのは難しいという。

　◆事業者も困惑

　府警内には、一般に公開された掲示板が暴力団の活動に使われていたことに対する警戒感は強く、捜査幹部は「何らかの取り締まりが必要だが根拠となる法令がない。事業者側の協力が不可欠だ」と指摘する。

　事業者にとっても暴力団や犯罪集団のネット利用は頭の痛い問題だ。事業者の多くは違法書き込みなどが見つかった場合、削除や運用停止措置をとっているが、ネット上にあふれる情報をくまなく監視する方法はなく、第三者機関や警察からの情報頼みになっている。

　また、組長の書き込みには隠語も織り交ぜられており、一見するだけでは暴力団関係者のやりとりには見えなかった。大手インターネット事業者の担当者は「違法な書き込みを放置すると刑事責任を問われるケースも想定され、できるだけ注意しているが、暴力団であるかどうかを見分けるのは難しい」としている。

　【用語解説】暴力団排除条例

　暴力団の活動や影響力を規制することを目的に定められた条例。平成２３年に東京都と沖縄県の条例が施行されたことで、全都道府県で出そろった。組事務所や会合場所の提供、「みかじめ料」の支払いなど、暴力団の活動を助長する行為や取引を禁止している。違反者に対しては都道府県の公安委員会が指導や勧告を行い、改善の見込みがない場合は業者名が公表される。