広島:消えゆく昭和 闇市の風情「愛友市場」再開発へ

毎日新聞 2013年09月16日 16時00分(最終更新 09月16日 17時18分)

再開発ビルの建設に伴い今年度中に姿を消す「愛友市場」=広島市南区で、植田憲尚撮影
再開発ビルの建設に伴い今年度中に姿を消す「愛友市場」=広島市南区で、植田憲尚撮影

 1945年8月6日の米軍による原爆投下で廃虚となったJR広島駅前にあり、戦後の闇市の風情を残す唯一の商店街「愛友(あいゆう)市場」(広島市南区)が再開発事業で姿を消すことになった。今年度中に取り壊しが始まる予定で、2016年に新しい再開発ビルが完成する。1階に市場の雰囲気を再現した商業スペースを設置、戦後広島の台所を支えた市場の記憶を後世に伝える。

 一帯は戦前から商店街が連なり、「荒神(こうじん)市場」と呼ばれていた。原爆投下で爆心地の東約2キロにある市場は壊滅。終戦後は跡地に闇市が立ち、日用雑貨や食料品などを扱う店が並んだ。

 乾物店を営む石風呂明三(あけみ)さん(79)は原爆で両親を失い、兄弟を養うため親類とこの闇市で商売を始めた。「思い出すのもつらい生活だった。米軍のガムやチョコレートから片方だけの靴下まで何でも売った。並べれば売れるので、売り物を集めるのが大変だった」と当時を振り返った。

 復興に伴って市場も整備された。80年代に「愛友市場」と名付けられ、多い時は約100店が軒を連ねた。だが、郊外大型店などとの競合や老朽化で徐々に客足も店数も減少。81年に一帯は広島駅前の再開発事業の対象になった。

 市によると、愛友市場一帯の約1.9ヘクタールに46階建て住宅棟と11階建ての商業棟で構成する再開発ビルを建設。家電量販店やスポーツ施設、駐車場が整備される。総事業費は約270億円。市場の店舗は順次閉店し、数十店は一時移転して完成後の再開発ビルに入る。

 しかし、高齢化などで店をたたむ経営者も少なくない。石風呂さんは「再開発の話が持ち上がった時、広島の台所としての商店街の役割は果たしたのかなと思った」。弟に経営を任せていた乾物店があったが、閉店した。

 愛友市場や地元町内会の会長を務める中村興夫(たつお)さん(73)は「新しいビルにどういう状態で店舗が入るか分からないが、愛友市場の名を残して市民の記憶にとどめてもらいたい」と話している。【植田憲尚】

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