【楢崎貴司、藤原学思】京都市右京区の神護寺の元従業員らが、寺の資産管理に問題があるとして住職に辞任を要求し、その後不利益な取り扱いを受けたとして、寺を相手取り、慰謝料など計約2950万円の支払いを求める訴えを京都地裁に起こしたことがわかった。
訴えたのは、寺の事務担当だった24〜61歳の男性4人。訴状によると、4人は1月、「寺の資産を私的に流用した疑いがある」として、住職に説明と辞任を要求。京都府警などにも公益通報した。その後、寺側は60歳を定年などとする就業規則や給与規定を作成。これにより、同月以降の男性(61)の基本給は月54万円から35万円に減り、60歳を迎えたとして定年退職を迫られた。また、拝観受付の小屋が取り壊され、ここで働いていた別の男性らは休業を指示されたとしている。
男性の1人は「公益通報などへの報復だ。小屋の撤去も仕事を取り上げるためだ。門に人がいないと文化財保護の点で危険だ」と批判する。
これに対し、住職は「(私的流用は)事実ではない。疑いを抱かれた心あたりは全くない。公益通報の前提となる事実がない。通報を理由にした不当な解雇ではない。就業規則は、法令に基づき、作成が望ましいと考えた。拝観受付(の撤去)は老朽化したためだ。(就労機会を奪うためとの)指摘は事実ではない」などと朝日新聞に書面で説明した。
神護寺は8世紀、和気清麻呂が創建した寺が始まりとされる。本尊・薬師如来立像や、所蔵する「伝源頼朝像」は国宝。紅葉の名所としても知られる。