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ビーチ文化と海の家 音楽禁止の余波(上)「音霊」閉鎖、頭ごなしに“抗議”

2013年9月12日

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今季を最後に閉鎖を決めた「音霊」の建物を解体するスタッフたち=逗子海岸

今季を最後に閉鎖を決めた「音霊」の建物を解体するスタッフたち=逗子海岸

 この夏、逗子海水浴場(逗子市)の“象徴”と呼ばれた施設が浜辺を去っていった。

 6日。数日前までの熱狂がうそのようにがらんとした海岸では、「音霊(おとだま)」の解体作業が行われていた。逗子出身の音楽ユニット「キマグレン」の2人が経営する海の家兼ライブハウス。2005年夏のオープン以来、毎年約4万人の入場者を数える人気スポットだった。

 その音霊が突然、今夏限りの閉鎖を発表したのはシーズン終盤の8月23日。「こんな頭ごなしのやり方では、決して良い方向にいかない。閉鎖は行政へのメッセージですよ」。店長の清水良太さん(25)は苦々しい表情を浮かべていた。

 
■「安全安心のため」
 「頭ごなし」とは、平井竜一市長が強く打ち出す「音楽禁止」を含めた条例改正の動きだ。7月に発生した客同士の殺傷事件が契機となり、市は警察など関係機関と対策協議会を設置。来夏に向け「あり方を根本的に見直す」(平井市長)検討を進めている。

 〈逗子海岸が今、大変な状況に陥っています〉
 市のホームページには危機感をあらわにした声明が掲載された。

 入れ墨やタトゥー姿の若者たち。小競り合い騒動を起こす酔客。露出度の高い水着で密着するカップル、果ては殺傷事件の発生…。「これでは家族連れは安心して遊べないだろう」。シーズンさなか、ライフガードを務める男性(22)は困った顔で海岸を見渡していた。市が掲げる「ファミリービーチ」とはかけ離れた実情があった。

 こうした風紀の乱れ、治安の悪化の一因を、市は「音楽」と捉える。片瀬海岸西浜海水浴場(藤沢市)や由比ガ浜海水浴場(鎌倉市)が続けざまに音楽やクラブイベントを自主規制したことで、あぶれた客らが東へ東へと流れている-。そう指摘する海の家の関係者もいた。

 逗子市はこれまで海水浴場の運営方針やルール策定は逗子海岸営業協同組合とも協議してきたが、今夏は協議の場に組合を交えず、海の家の営業時間短縮や取り締まり強化などを行った。66日間で海の家への指導は20件、警告が6件、防音対策不備などで営業停止3日間も2件あった。「ルールを守らない人がいる以上、厳しいと言われようと安全安心を取り戻すのが最優先だ」。毎週末の夜間パトロールで客らから、「強硬だ」と批判された平井市長は重ねて持論を訴えた。


■共存の道筋見えず
 「泥酔客やごみの問題も、すべて音楽を規制すれば解決するのか」。自主的な努力を重ねてきたという同組合代表理事の原敦さん(44)は違和感を隠さない。自身の海の家では、若者たちが熱狂するクラブイベントを行う団体の受け入れを自粛し、土日の売り上げは昨夏の半分ほどに落ちた。海岸へ下りる高架下通路入り口には夜間の街灯を設置し、浜辺に残されたごみは拾い、自費で処分した。

 だが、組合の試験的な対応としてクラブイベントを自粛する動きがあるなか、逗子市は民間の反発を受けながらも条例規制に乗り出す。

 「市のやり方は、ゼロか100かだ」と原さん。音霊店長の清水さんも言う。「海岸を今後どうしていくのか、もう少し歩み寄り、共存を探る方法はなかったのか」

 しこりを残したまま、逗子の夏は終わりを迎えた。

■ ■ ■

 西浜から由比ガ浜、そして逗子へと広がった音楽やクラブイベントの規制は今夏、海の家の集客手法のあり方に大きな問いを投げかけた。全国的なブランドを誇る湘南海岸はどこに向かうのか。各地の模索や来夏へ向けた挑戦の動きを通し、あるべきビーチの姿を考える。


◆クラブイベント
 明確な定義はないものの、音楽をかけるディスク・ジョッキー(DJ)が大音量でダンスミュージックを次々と流し会場の男女が重低音のリズムに合わせて踊る催し。都内などのクラブでは一晩中踊り続ける企画も少なくない。厳密には風営法上の許可が必要とされるケースもあり、都内では警察に摘発される店が出始めている。海の家では、ダンスフロアがある建物の外で酒類を提供する店もある。


◆20年で海水浴客半減
 藤沢市教育委員会発行の「湘南の誕生」(2005年)によると、日本で海水浴が始まったのは明治時代に入ってからだ。1887(明治20)年の東海道線開通をきっかけに、全国に先駆けて相模湾を覆うように開設された。1910年には江ノ電が全線開通し、海水浴をはじめとする行楽が庶民的な娯楽として普及していった。

 近年の海水浴客数は、レジャーの多様化などを受けて緩やかに減少している。

 県環境衛生課によると、2012年の県内海水浴場の利用者数は685万人。天候の影響も受けつつ、ここ数年は500万人台前後で推移しており、約20年前の1994年(1098万人)と比べ半減した。海水浴場の数も、95年の36カ所に対し、2012年は26カ所になっている。

 海岸に並ぶ海の家も、時代とともに変化を遂げてきた。かき氷や焼きそばなどを提供する昔ながらの店は少なくなり、代わりにカウンターがあるカフェ風の店やクラブイベントを行えるライブハウスが増えるなど形態が多様化している。


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この記事へのコメント

taquiner9 [2013/9/12 13:54]  編集する
アタシも正直「モラルの低過ぎる人種が、問題なだけ」なのに「便乗して刺青と音楽を排除したいが本音」だと感じてますね。

まぁ、来月半ばで「横浜BLITZ」も閉館になり、その後を誰がどのように転用するのか存じませんが…。

いいんじゃないですか?県内、バカみたいに祭だらけになっているけれど「家族連れにだけ、遊んで消費して頂く」をモットーにすれば。

独身者な方々まで、国内に無理する必要ないですもんね。
ootahara [2013/9/12 16:39]  編集する
海水浴場に刺青さんがうろうろしていると子ども連れは引きます。
海水浴場の海開き前や閉鎖後のオフシーズンに解禁するとか、社会実験的に取り組んでみるのも有るような気がします。
音霊がどの海岸に移転するのかが気になります。
コージータハラ [2013/9/12 21:26]  編集する
まぁこれは問答無用に規制対象だね。
海水浴場は繁華街じゃないからね。
クラブやライブなら、それが許される環境下でやればいい。
海水浴場には必要ないから。

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