NTTドコモが米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売を決めた。20日の発売を前に神経をとがらせるのは、国内の携帯電話端末メーカーだ。現状は「影響は織り込み済み」などとして比較的冷静な反応をみせるが、今後、成熟した国内市場をアイフォーンが侵食していくことが確実。すでに多くの国内メーカーが崖っぷちに立たされており、単独で生き残る道は狭まっている。(後藤信之)
国内最大の通信事業者であるドコモの端末ラインアップにアイフォーンが連なることになっても、各社があわてていない理由は二つ。一つはドコモが自社の携帯電話販売に占めるアイフォーンの割合を3割程度に抑える方針を表明していること。NECとパナソニックがスマホ事業から撤退し、プレーヤーが減ったことを背景に、富士通首脳は「アイフォーンがワントップ。残りの7割を日本の主要メーカー3社(富士通、シャープ、ソニー)を中心に分け合う形は悪くない」と指摘する。「(特定2機種を優遇販売するドコモの)『ツートップ』戦略の方がきつかった」と明かす。
シャープ幹部も「すでにアイフォーンを取り扱うKDDIとソフトバンクモバイルにも端末を供給してきた」と強調。アイフォーンは事業の存在を脅かすようなものでなく、対応可能であることを説明する。
二つ目の理由は、以前からドコモのアイフォーン販売がある程度想定されていたためだ。シャープ首脳は「予想していたからすでに織り込み済み」と話す。実際にシャープは8月に2014年3月期の携帯電話販売見通しを前回予想比23・6%減の550万台(前期比10%減)に下方修正した。
アイフォーンを巡り携帯大手3社が“横並び”になるメリットも想定される。「携帯会社の競争で、アイフォーンの取り扱いの有無による差はなくなる。商品ラインアップに特色を出すため日本メーカーのスマホに意識を向けてくれるのではないか」と富士通首脳は期待する。
■廉価版注目
ドコモのアイフォーン販売を契機に国内携帯端末メーカーが直ちに危機的状況に陥ることはなさそうだ。ただ、国内メーカーのスマホがアイフォーンに押され、劣勢なことはなんら変わらない。MM総研(東京都港区)がまとめた12年度のメーカー別携帯電話端末出荷台数シェアはアイフォーンが25・5%(前年度比8・5ポイント増)と初の首位を獲得した。
またアイフォーンの廉価版「5c」の販売動向も注目される。米国での販売価格は2年契約でアイフォーン5sが199ドルからに対し、同5cは99ドルから。当初5cは新興国がメーン市場で、日本には投入されないと見られていた。カラフルでカジュアルで「安い」5cは、従来取り込めなかった顧客層の獲得につながりそうだ。今後、日本の携帯電話販売台数は年4500万台と横ばいで推移する見通し。世界的に見ると小規模な日本市場の中でアイフォーンが増え、残ったパイを国内勢などが奪い合う構図が続く。
■世界から遅れ
国内メーカーはどう対抗していくのか。富士通は、バッテリーの持ち時間などスマホの基本性能を高め顧客獲得を目指す。シャープは高精細と低消費電力を両立させたIGZOスマホの機種数を増やし「国内シェア奪回を図る」(高橋興三社長)。以前から海外重視の京セラのほか、ソニーは海外市場に活路を見出しスマホ事業の成長を目指す。
世界に目を向けるとスマホビジネスの主戦場は新興国に移り、伸びるのは割安な端末。アップルもアイフォーン5cの投入で対応する。一方、日本の端末メーカーはこうした潮流から大きく取り残されており、成長するスマホ市場の果実を得ることができていない。
00年頃、10社超あった国内携帯端末メーカーは、個人向けスマホの取り扱いに限れば4社にまで集約された。業界再編の火種はまだ燻(くすぶ)っている。
【富士通、スマホ年販500万台継続】
富士通はNTTドコモが米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の新機種を20日に発売することによる自社のスマホ販売に対する影響について「それほどのインパクトはない」(富士通首脳)と指摘し、2014年3月期の携帯電話端末の販売目標520万台(前期比20%減)を変更しない方針だ。バッテリーの持ち時間など基本性能を高めたスマホを継続的に投入。今後、数年間は年500万台規模の販売で営業黒字を維持する考え。
ドコモは自社の携帯電話販売のうちアイフォーンの割合を3割程度に抑える方針。「すでにドコモから秋冬商戦向けに一定量の受注をもらっている」ことを明らかにし、ドコモでの端末販売シェア約20%を維持していく方針を示した。
富士通は10年にスマホに参入し、これまで携帯大手3社すべてに製品を供給した実績がある。13年4―6月期は特定2機種を優遇販売するドコモの「ツートップ」戦略から外れ苦戦した。だが、新製品の「アローズNX」については「メードインジャパンが評価され健闘している」(佐相秀幸副社長)面もあるという。14年3月期の同社の携帯電話端末販売に占めるスマホ比率は70%の見通し。今後もバッテリーの持ち時間のほかカメラ機能、液晶の画質といったスマホの基本機能を磨き顧客獲得を目指す。
富士通の山本正已社長は携帯電話端末事業について「ITでユーザーの課題を解決するソリューションサービスで、パソコンなどとともに重要な要素」と位置付け、「利益を確保できる500万台のラインをおさえていく」との方針を示してきた。
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