シリア化学兵器:安保理、汚名返上かけ「迅速な採択」
毎日新聞 2013年09月15日 20時26分(最終更新 09月15日 21時05分)
【ニューヨーク草野和彦、パリ宮川裕章、ロンドン小倉孝保】シリアの化学兵器に関する米露合意を受け、この合意に実効性を持たせる国連安保理決議案の採択が次の焦点となった。米英仏の3外相が16日にパリで安保理での対応を協議する予定で、外交も活発化。シリア問題で「無機能」ぶりがあらわとなった安保理だが、決議案の「迅速な採択」(米露合意文書)を実現できるかが、汚名返上の第一歩となる。
ファビウス仏外相は14日、「16日の米英との外相会議で(合意の)詳細や実施方法などを協議する」と述べた。また、ヘイグ英外相も「重要なのは合意を完全に迅速に実行することだ」と語った。
ファビウス外相は15日に中国を訪れ、王毅外相と会談。ロシアと共にシリア政府へ圧力をかける決議案採決で拒否権を行使している中国に協力を訴えた。
米露合意によると、両国は数日中に、シリアの化学兵器の廃棄と検証の手続き案を化学兵器禁止機関(OPCW)に提出。OPCWが案を正式に決定し、これに強制力を持たせるのが安保理決議だ。シリア政府が違反した場合はOPCWからの通知を受け、国連憲章7章(平和への脅威)に基づく強制措置を課すと明記される予定だ。
決議案の作成は米英仏が主導するが、ラブロフ露外相は14日の記者会見で「(合意で)武力行使や自動的な制裁には触れていない」と強調。欧米が望むような具体的措置は盛り込まれないとみられる。「欧米からすれば、中露が嫌がっていた7章への言及があるだけで大成功。決議案採択を最優先するなら無理はしないはず」(国連外交筋)だ。
また、16日には、ダマスカス郊外で先月、化学兵器攻撃があったことを確認する国連調査団の報告が安保理に提出される予定。使用主体を断定はしないが、政権側の関与を示唆する内容とみられる。
ファビウス外相は14日の声明で「調査団の報告書を考慮してフランスの立場を決める」としており、政権側による使用が裏付けられたと判断すれば、政権非難の決議を主張する可能性がある。英仏は化学兵器攻撃の国際刑事裁判所(ICC)への付託も重視している。