「100年に一度」の大不況を引き起こした米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)から15日で5年がたった。震源地の米国経済は徐々に回復してきたが、一方で新興国の経[記事全文]
すしネタで人気の「太平洋クロマグロ」が減り続けている。このため、各国は来年の未成魚の漁獲量を02〜04年平均に比べ15%以上減らすことにした。日本[記事全文]
「100年に一度」の大不況を引き起こした米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)から15日で5年がたった。
震源地の米国経済は徐々に回復してきたが、一方で新興国の経済は変調をきたしている。
なによりマネー資本主義の矛盾があらわになり、低成長と雇用喪失が世界中に格差と貧困を拡散させた。この難題を克服する手立てはあるのか。世界は、なお手探りのままだ。
振り返れば、リーマン危機にとどめを刺される形で住宅バブルがはじけた米国と、対米投資の多い欧州で金融危機と経済収縮の連鎖が起きた。さらに、欧州では銀行救済にギリシャの財政粉飾が重なり、財政と金融の複合危機に発展する。
ここを支えたのが新興国の内需拡大、とくに4兆元(約60兆円)の景気対策を打った中国だった。
ところが、それが不動産バブルや過剰な投資を加速させ、中国内の金融システムを揺さぶる懸念が生じている。米中間でバブルがリレーされていたと見ることもできる。
中国の金融安定には銀行への資本注入なども必要になろう。バブルの調整が急激で深刻になれば世界が動揺する。国際社会との協力が求められる。
先進国が頼った金融緩和の後始末も難しい。米国の量的緩和で新興国へあふれ出たマネーは逆流しつつある。米連邦準備制度理事会(FRB)は、緩和縮小でバブル防止に筋道をつけたいようだが、世界全体への目配りも欠かせない。
世界経済はいびつさの度合いを深めている。とりわけ企業収益や株価の回復と、雇用の低迷とのギャップが際だつ。
グローバル競争の激化が、人件費を減らして収益をあげる流れを加速させている。ことに先進国では、産業界が雇用を創出し、生活水準を底上げする機能は衰えるばかりだ。
格差や貧困を是正するのは、所得の再分配を担う政府の仕事だが、どの国も財政に余裕はない。これで本当の経済再生は可能なのか。
前向きな動きとして注目されるのは、ユーロ加盟の有志国が導入を決めた金融取引税だ。危機の処理コストを金融界に負担させ、同時に過剰な投機も抑える狙いがある。
グローバル企業の国境をまたいだ税逃れ対策で、各国が結束する機運も生まれている。
マネーの流れに網をかけ、地に足のついた経済構造をつくるために、世界は足並みをそろえなければならない。
すしネタで人気の「太平洋クロマグロ」が減り続けている。
このため、各国は来年の未成魚の漁獲量を02〜04年平均に比べ15%以上減らすことにした。
日本や韓国、米国などが加盟する中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の「北小委員会」が今月、合意した。年末の総会で正式に決める。
日本海なども含む広義の中西部太平洋で、数値つきの漁獲規制が国際的に実施されるのは、初めてのことだ。
乱獲による海洋資源の枯渇は深刻であり、科学的管理が一段と重要になっている。
クロマグロは本マグロとも呼ばれる。水産庁によると、10年の太平洋クロマグロの資源量は約2万2千トンで、過去15年間で3分の1以下に減った。
ここ3年間の平均漁獲量は02〜04年平均を約17%下回っており、合意した15%減は追認に過ぎないともいえる。消費者への影響はほとんどなさそうだ。
それでも、数値規制に踏み出したことには意義がある。
WCPFCは従来、未成魚の漁獲を02〜04年水準より減らすなどの規制をしてきたが、資源回復は思わしくなかった。
北太平洋のマグロ資源を評価する国際科学機関は「親マグロが過去最低になりそうだ」として、特に未成魚の漁獲削減を強化するよう助言した。
マグロ類の漁獲規制は、世界のほかの4海域では総漁獲量の割り当てなど先を行っている。
大西洋クロマグロは99年に漁獲管理が始まった。一時は「絶滅の恐れがありワシントン条約で禁輸対象にしよう」と提案されたほどだったが、管理の強化で回復が確認され、今年は10年ぶりに漁獲枠が拡大された。
漁業資源に関しては、資源量を注視しながら漁獲制限を適切に調整するのが妥当だ。
遅まきながら、太平洋でも資源保護が本格化してきたことは喜ばしい。対象海域での漁獲量が日本に次ぐ2位なのに、まだ規制を受け入れていない韓国も足並みをそろえるべきである。
天然の漁獲量が減ると注目される養殖も、万能ではない。養殖用に幼魚を取ると、それも天然資源を細らせる。マグロを1キロ太らせるには、15〜16キロものエサの小魚が必要でもある。
世界では、アフリカなどの人口増が依然著しい。将来、深刻な食糧難を予想する見方も根強い。公海の漁業資源は、内陸国を含む人類の共有財産だ。
広い視野で長期を見通して、漁業資源の使い方を考えることは「海の幸」の恩恵を受けてきた海洋国の責任である。