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卓上四季

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平和の祭典

東京五輪決定のビッグニュースに沸いた1週間が過ぎた。スポーツ選手憧れの舞台というだけでなく、「アベノミクスの4本目の矢」とはやされ、実利的な夢が早くも膨らんでいる▼肝心なことが忘れられている。「平和」についてだ。オリンピック憲章には五輪の目標として「スポーツを人類の調和のとれた発達に役立てることであり、その目的は、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進することにある」と記されている▼日本にとって五輪は栄光の記憶だけではない。1940年(昭和15年)、札幌の冬季大会と東京の夏季大会はともに戦争のため中止された。平和なくして五輪開催はあり得ない。そう考えると、いつまでも浮ついてはいられない▼中国の新聞は靖国問題に絡めて「戦犯に礼を尽くす国が、平和を発揚する五輪開催にふさわしいか」と報じたという。表現が気に障る向きはあろうが、隣国との冷え切った関係の修復は急務だ▼49年前の東京五輪で、閉会式の光景は語り草になっている。整然と行われた開会式とは一変し、選手が国に関係なく、お祭り騒ぎで入場してきた。日本選手団の旗手は肩車されていた。東西冷戦のさなか、平和の尊さを世界に発信した▼7年後、紛争やテロの心配のない世の中になっているか。この国の平和主義は揺らいでいないか。おもてなしよりもはるかに重い課題だ。2013・9・15

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