社説:北朝鮮核施設 軌道修正の機会逃すな

毎日新聞 2013年09月16日 02時30分

 北朝鮮がかつて核兵器用のプルトニウムを生産するために使っていた寧辺(ニョンビョン)の旧式原子炉を、再稼働させた兆候が捕捉された。

 米国の研究所の衛星写真分析などから、原子炉再稼働の可能性は高いと見られ、確認されれば国連安全保障理事会の決議違反となろう。北朝鮮がまたしても国際社会のルールを踏みにじったという話になる。

 実のところ北朝鮮は、原子炉再稼働方針を4月時点で公言していた。「ウラン濃縮工場をはじめ寧辺のすべての核施設」と共に原子炉を再稼働させるとし、「経済建設と核武力建設を並進させる路線に伴うもの」などと主張したのである。

 これに近い時期、北朝鮮は事実上の長距離弾道ミサイル発射、核実験強行、日米韓への核攻撃示唆など常軌を逸した言動を重ねていた。

 それが中国の影響力行使もあって徐々に沈静化し、危険な挑発が懸念された朝鮮戦争休戦60周年の軍事パレードも比較的平穏だった。

 こうした経緯から北朝鮮が原子炉再稼働を控える選択肢もありうるという見方もあったが、現時点では期待しにくいものと見るしかない。

 しかし今後の朝鮮半島情勢を見通せば、北朝鮮は「核武力建設」など放棄するのが得策だろう。金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は北朝鮮の最高指導者になった後、まだ訪中していない。韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は国賓として訪中し、習近平国家主席と公式に会談した。これより先の米中首脳会談では、習主席はオバマ大統領と共に「北朝鮮を核保有国と認めない。非核化実現に向け北朝鮮への圧力を継続する」といった方針に合意した。

 こうした経緯は必ずしも中朝衝突を意味すまい。だが今や中国が無条件で北朝鮮の肩を持つわけではないのは明らかだろう。中朝友好最優先という状況ではなくなったのだ。

 北朝鮮は日米韓との摩擦と並行する形で、北朝鮮側の地域に韓国企業を誘致した開城(ケソン)工業団地を操業停止に追い込んだ。その結果、北朝鮮はあてにしていた外貨収入を獲得し損ね、韓国側には強い不信が残った。最近ようやく操業再開に向けた動きが始まったが、後遺症は深い。

 北朝鮮指導部はこの失敗を自覚して南北関係を安定させ、まともな国内改革を実行してみせるべきだ。そこから「原子炉再稼働の断念」など核放棄につながる姿勢を誠実に示せば、中断している6カ国協議の再開が視野に入ってくる。

 従来の北朝鮮の交渉戦術をみれば絵空事とも思えるが、朝鮮半島の力学は大きく動きつつあり、機会を逃せば軌道修正はより困難になる。それを北朝鮮に理解させる役割は、主として中国が果たすべきだろう。

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