練習
本日は“渡り鳥料理人”のディープな話を書きます。
最初に断っておきますが、話が複雑であり、誤解がないように細かく説明しますので、興味の無い方には“つまらない”内容です。ただ、知っておけば、2時間ドラマを見る時の楽しみが増えると思いますよ。
前回、「北へ向う渡り鳥料理人」の話を書きましたが、この“渡り鳥”は、西洋料理の方々なので、単独行動のケースが多く見受けられます。
しかし、和食の料理人となりますと、少し事情が違います(詳しくは後ほど)。
料理業界には、色々な“組合”があります。
単なる親睦団体もあれば、相互扶助を目的としたものもあります。
以前、「料理の鉄人」に“クラブミストラル”という団体が登場しました。これは、宮本雅彦さんを中心とした、関東の昭和30年代生まれのフレンチシェフの親睦会であり、同じ集まりであっても、関西の“神田川軍団”とは対極にありました。
この2つの団体は、西洋料理と日本料理の“組合”の特徴を如実に現していたと思います。
関西にある“組合”を一部紹介します。
・「京都料理組合」
http://www.kyo-ryori.com/
・「一日会」
http://tsuitachikai.jp/
・「大阪イタリア料理人友好協会」
http://www.food-culture.jp/tsudoi/annai16.html
・「神戸南京町中華料理店協会」
http://hasshin.livedoor.biz/archives/51643467.html
全国規模の“組合”を一部紹介します。
・「全日本司厨士協会」
http://www.ajca.jp/
・「全国芽生会連合組会」
http://www.gnavi.co.jp/mebaekai/
・「日本イタリア料理協会」(小規模ですが)
http://www.a-c-c-i.com/association.html
この中では、最も規模が大きいのが「全日本司厨士協会」です。
現在、約1万人の会員がいるそうですが、昔ほどの権威(影響力)は無くなったようにも感じます。
本題はここからです。上記の組合・団体とは別に、日本料理の世界には、ベールに包まれた“組合”があります。
念の為に言っておきますが、今から書く内容は、事実ではあるものの、全てに該当する事ではありませんので、その点、ご理解下さい。
2時間ドラマのタイトルで、視聴率が取れるワードとして、「温泉」「グルメ」「㊙(マル秘)」「京都」などが挙げられるそうです。
そのワードを集約させたようなシリーズが、森口瑤子さんが主役を務める「温泉㊙大作戦」です。
このドラマのストーリーは、旅館コンサルティングの社員が、傾いた旅館を立て直すというものです。
登場する旅館のほとんどは、女将(経営者)と料理長(板長)が対立しており、口論の際に板長が発する決めゼリフが・・・・・「女将さん、それなら、私達は今日限りで辞めさせて頂きます」です。
セリフに注目して頂きたいのですが、「私は・・・」ではなく「私達は・・・」なのです。
和食の世界では師弟関係(主従関係)の繋がりが強く(厳しく)、板長を“おやじ”と呼んだりもしますから、板長が辞めれば、それに従う料理人もいます。
しかし、そんな綺麗事では無い実態もあります。
皆さんは、「調理士紹介所」という名前を聞いた事はあるでしょうか(調理師ではなく、調理士と書きます)。
最近では、料理業界に特化した派遣会社もありますが、そういったものとは一線を画しています。
再度言いますが、今から書く内容は、事実ではあるものの、全てに該当する事ではありません。また、単に、「調理士紹介所」と名乗られている会社もあるかと思いますので、その点はご注意下さい。
この話は、私の知人の経験した事ではありますが、相談を受け、私も関わっていますので、詳細に把握しております。
大型レジャー施設
私の知人は、10数年前、ある不動産関連の会社(上場企業)に誘われ、レジャー施設の立ち上げにおける飲食部門の責任者に就任しました。
このレジャー施設は、大阪で言えば「スパワールド」、東京で言えば「大江戸温泉物語」の部類に属するものであり、1日平均来場者数は2000名、トップシーズンは5000名近くになります。
この施設は、関西ではありません(寒い所です)。当時、この施設の規模は、その県でもトップクラスでありました。
私の知人の仕事は、その施設内に5店舗の直営店を出店する事であり、その企画・業者選定・求人(採用)等も任されていました。
5店舗といいましても、西洋料理(カジュアルフレンチ&洋食)と和食(ミニ会席&大広間&居酒屋)であり、直営ですので、核となる数名を決めれば、さほど手間取る事ではありません。
西洋料理に関しましては、知り合いの司厨士協会の方に、地元の司厨士協会の人事部長を紹介して頂き(この肩書きが今もあるかどうかは知りませんが)、開業半年前から料理長の選定に入りました。
何故、半年前から選定に入ったかといえば、ある程度のクラスの方を採用するとなれば、その方の職場の“後釜”を探す必要があるからです。
司厨士協会は斡旋業者ではありません。
「俺のフレンチ」のように、ヘッドハンティング業者を使って料理人を集め、「後の事は知りません」という掟破りのようなまねはしません。
西洋料理の料理長・副料理長は、司厨士協会の紹介により決定し、その方々の“後釜”の段取りもして頂きました。
では、その労に対する対価ですが・・・・・ 全く無かったとは言いません。しかし、金品・接待という類のものではありません。
和食に関しましては、知人の知り合いの“つて”で、料理長は関西から連れていく予定にしておりました。
しかし、その不動産会社の上層部の知り合い(和食料理人)から横やりが入り、予定していた方を断り、ある調理士紹介所を利用する事になりました。
知人も、私も、和食の料理人との付き合いはありましたが、“調理士紹介所”という存在は知らず、この後、厄介な事態に巻き込まれる事となります。
調理士紹介所とは
調理士紹介所は、求職活動をしている一般の料理人も募集していますが、長年属している料理人もいます。
例えば、異業種の会社が、温泉地(観光地)に旅館を開業するとします。
和食の料理人を集めるのに、手っ取り早いのは求人広告ですが、ある程度の規模の旅館を任せられる料理長(板長)が、求人誌を見ているとは思えません。
また、仮に、求人誌で料理人が集まったとしても、それを束ね、味を統一化させる事は至難の業です。
そこで、重宝されるのが調理士紹介所です。
調理士紹介所に頼めば、板長を含み、4~5名程度の調理師を紹介してくれます。
この職人達は、以前より板長と共に仕事をしていますので、手間がかかりません。
紹介された方を採用した場合、調理士紹介所に対して手数料を払います。
現在の状況を調べますと、月給の10%前後の金額を、4カ月~6カ月分が相場のようです。
つまり、月給50万円の人を紹介してもらえば、MAX30万円程度が必要となります。
これが、5名となり、月給総額が200万円だとすれば、MAX120万円が必要です。
知人の経験したケースでは、もう少し高額でした。また、給与も、A氏がいくら、B氏がいくらという交渉ではなく、全員でいくらという交渉になりました。
話を戻します。
知人の施設でも、板長を含み、5名の調理師の紹介を受けて採用しました。その方々は、知人の施設が採用する直前まで、東海地方の旅館に勤めていたそうです(そんなに簡単に辞められるのでしょうか?)。
問題はここからです。
納入業者の指定
板長から、「珍味は、ここの会社から買いたい」と、東海地方の業者を薦められました。
しかし、商品や見積もりを見ましても、近くの業者と変らず、それを拒否すると、今度は、地元の魚屋を薦めてきました。
後で分かった事ですが、板長は、この魚屋からリベートを受け取っていました。
警察沙汰
開業後、数週間が過ぎたある夜、その施設に、警察から電話がかかってきました。
電話の内容は、調理士紹介所の紹介で採用した調理師の一人が、酔っぱらって喧嘩をしたというものでした。
この方は、50代後半で(板長は40代前半)、前科があったそうです。
通常、人を採用する場合、履歴書を提出してもらい、面接を経て、合否を決めますが、知人の施設の場合、調理士紹介所からは「○○という旅館で板長をしている人間と、その下の者4名」とだけとしか説明を受けておらず、板長と面会したのは、採用が決まってからだそうです。
何故、こんないい加減な採用になったかといえば、この調理士紹介所を紹介したのが、その不動産会社の上層部の知り合い(和食料理人)であり、異業種から見れば、料理人の世界は想像も出来ず、「面倒な事をするくらいなら、(調理士紹介所に)任せた方が良い」という、安易な考えがあったのだと思います。
不倫騒動
警察沙汰から1カ月も経たないうち、従業員の一人から報告がありました。「実は、板長と、○○さんが、ラブホテルに入って行くのを見ました」と。
この2人、共に結婚しています。つまり、不倫です。
板長に確認したところ、事実を認め、交際を止めるとの約束を取り付けました。
営業して分かったのですが、この板長、さして腕が良くはありませんでした。
今さらではありますが、知人が上層部を説得し、この板長達に“10倍返し”を行う事にしました。
調理士紹介所の存在を否定する気はありません。所属されている全ての調理師の方に問題があると言っているのでもありません。
ただ、安易に職場を放棄されるケースも少なくはなく、また、採用に関しましても、調理士紹介所に一任せざるを得ない現実があったのも事実です。
当時と今とでは事情も変っていると思いますので、あくまでも、10数年前の話です。
知人が、この板長達に“10倍返し”を行った件は、明日書きます。
興味のある方は、お読みください。
事実を元に記事にしておりますが、「それは違う」とか、「もっと知っている」などのご意見は、ページの最後にあります日付の横の“コメント”をクリックして、ご意見をお寄せ下さい。
初代のtwilogもご覧下さい
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