緊急道路1300超の橋が倒壊9月15日 18時10分
大規模な地震の際、救助活動や物資輸送のために重要な「緊急輸送道路」で、耐震補強が不十分なため、激しい揺れで大きく壊れるおそれのある橋が、全国で1300を超えることが、国の調査で分かりました。
このうちおよそ730の橋は、南海トラフの巨大地震で激しい揺れが想定されている府や県にあり、国は各自治体に対策を急ぐよう求めています。
「緊急輸送道路」は、大規模な地震の際、特に重要な道路として、国や各自治体が指定するもので、国土交通省は、この道路にある全国のおよそ5万6000の橋を対象に耐震補強が行われているか調べました。
その結果、昭和55年の改正以前の古い耐震基準で建設され、その後も補強が不十分で、激しい揺れで落ちたり、倒れたりするおそれのある橋が、今年3月の時点で、1356に上ることが分かりました。
このうち732の橋は、南海トラフの巨大地震で震度6弱以上の激しい揺れが想定されている地域がある、24の府と県の橋だということです。
また、首都圏では284に上ります。
平成7年の阪神・淡路大震災では、橋が落ちたり倒れたりする被害が相次ぎ、国が各自治体に、古い耐震基準の橋の補強を求めましたが、おととしの東日本大震災でも、緊急輸送道路に指定されている茨城県の国道の橋が落ち、車が転落して1人が死亡しています。
補強が不十分な橋の多くは自治体が管理しているため、国土交通省は、緊急輸送道路の橋の補強を優先的に進めるよう、各自治体に求めています。
耐震化進まない自治体
南海トラフの巨大地震で激しい揺れや、津波が想定されている地域のなかには、緊急輸送道路の橋の耐震化が進まない自治体もあります。
このうち三重県は、南海トラフの巨大地震で広い範囲で震度7の揺れが想定されていますが、県が管理する緊急輸送道路の合わせて88の橋で耐震化が十分に行われず、落ちたり壊れたりするおそれがあります。
昭和28年に建設された津市の香良洲橋は、老朽化が進んでいますが、架け替えのめどが立っておらず、耐震補強も行われていません。
この橋は、およそ5000人が住む津市内の三角州の住民が、川を渡ってほかの地域に避難するための緊急輸送道路にあります。
三角州のほぼ全域で、巨大地震の津波による浸水が想定されていて、橋が壊れると、住民の避難や救助が難しくなります。
毎日のようにこの橋を渡るという69歳の男性は「津波からの避難路として大事な橋なので怖いです。早く対策をしてほしい」と話していました。
三重県道路建設課の梅谷幸弘課長は「道路予算が減るなか、橋の耐震対策の予算は増額しているが、対象となる橋が多く、予算の見通しも不透明なので、いつ完了するか計画は立てられていない」と話しています。
年度超えた計画で補強完了の自治体も
南海トラフの巨大地震で激しい揺れや、津波が想定されている地域のなかには、各年度ごとではなく、8年先までの計画を立てて補強を進めたことで、来年度中にはすべての緊急輸送道路の橋の補強が終わる見通しの自治体もあります。
三重県の隣の愛知県は、10年前の平成15年に東南海・南海地震の被害想定を国が初めて示したのに合わせて、緊急輸送道路の橋の耐震補強を、住宅の耐震改修や高台整備などとともに地震対策の最重点項目に掲げました。
そして平成19年度から、1年におよそ20か所ずつ補強を行い、8年かけて、来年度・平成26年度までに、古い耐震基準で造られた、緊急輸送道路を含む167すべての橋の補強を完了させる計画を立てました。
このうち緊急輸送道路では、合わせて26か所のうち、2か所を除いて橋の補強が完了していて、来年度には計画どおりすべての橋の補強が終わる見通しです。
愛知県道路維持課の鈴木五月課長は「地震で橋が通れなくなると救助活動にも影響するため、最重点項目として計画的に集中的に工事を進めた結果だ」と話しています。
専門家「ほか止めても対策を」
橋の耐震化に詳しい東京都道路整備保全公社の高木千太郎さんは「橋が大きく壊れると人命が失われる可能性が高く、対策の優先度は非常に高い。自治体の予算が限られるなか、新しい道路を造るのをやめたり延期したりしてでも、緊急輸送道路にある橋の耐震化を進めることが重要だ」と指摘しています。
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