今年5月末、国立科学捜査研究院の遺伝子鑑識センター法生物実験室に、冷凍されたタイの寿司9カンが配達された。「材料として使用されているタイが本物のタイなのか確認してほしい」と警察に鑑識依頼されたのだ。1万ウォン(約900円)前後というお手ごろ価格ながらボリュームたっぷりの寿司セットということで人気を集めている有名チェーン店の寿司だった。しかし、検出されたデオキシリボ核酸(DNA)はタイのものとは全く違っていた。複数の魚種のDNAと比較してみると、9カンとも外国産の魚ティラピアのDNAと一致した。ティラピアはアフリカが原産地で、色や食感がタイに似ているがタイよりもかみごたえがあり、値段は10分の1程度。ソウルで50店以上、全国で250店以上チェーン店があるが、本社関係者は「一部チェーン店で無断でティラピアを買い付けたもので、本社とは関係ない」と主張した。
警察は性犯罪・校内暴力・家庭内暴力と並ぶ「4大悪」の一つとして食品不正の取り締まりを強化しているため、国立科学捜査研究所には食品の鑑識依頼が殺到している。2011年に45種、12年に26種だった鑑識依頼証拠物は、今年1月から8月までで577種に達した。
今年4月に水原市のテグタン(マダラの鍋物)店で押収された魚68切れをDNA鑑定したところ、マダラは48切れだけだった。安くて古い冷凍スケトウダラをマダラと混ぜて客に出していたのだ。この店の不正は、鍋の中に浮いていたうろこの形がマダラと違うことに客が気付いて通報して発覚した。釜山では市民が東南アジアの観光地で買ったコブラの胆のうに関して警察に通報した。スタミナが付くと聞いて買ったが、本物のコブラの胆のうかどうか疑問に思ったからだ。カラカラに乾いた茶色の胆のうは肉眼では何の動物のものなのか分からないし、そもそも本当に胆のうなのかどうかも確認しようがなかった。国立科学捜査研究所がDNA検査をした結果、これはニワトリの胆のうを乾燥したものだった。