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社説
9月15日付  イプシロン成功  信頼性高め国際競争力を  
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、新型ロケット「イプシロン」1号機の打ち上げに成功した。国産新型ロケットの打ち上げは、2001年の「H2A」1号機以来12年ぶりとなる。これを、裾野が広い宇宙産業の発展につなげたい。

 イプシロン(E)は「小さいが、存在感がある」との意味を持つ数学の記号にちなみ名付けられた。その名の通り、早く安く打ち上げられる実用的な小型ロケットとして、世界に存在感を見せつけたに違いない。

 液体燃料を使う日本の主力大型ロケットH2Aとは異なり、日本初のペンシルロケット(1955年)の流れをくむ固体燃料の3段式ロケットだ。全長はH2Aの半分以下の約24・4メートル。構造がシンプルで信頼性が高いのが特長である。

 先代の「M(ミュー)5」は世界最高性能の固体ロケットと呼ばれ、小惑星探査機「はやぶさ」などを打ち上げた。だが、1機約80億円とコストがかかり、2006年9月の7号機を最後に廃止された。

 「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる故糸川英夫博士が戦後すぐ、独力で開発した鉛筆サイズのロケットから営々と築き上げられた技術が、コスト削減努力と技術革新によって復活し、引き継がれた意味は大きい。

 イプシロンが積める人工衛星は1・2トンと、M5の1・8トンに及ばない。1号機の価格は約53億円かかったが、近い将来に30億円まで下がる見込みだ。国内の衛星打ち上げだけでなく、新興国を中心に需要拡大が見込まれる衛星打ち上げビジネスへの活用も期待できる。

 H2Aは10トンの打ち上げ能力があるが、85~100億円かかり、国際受注競争で苦戦している。イプシロンの打ち上げ実績を重ねて信頼性を高め、受注増につなげたい。

 コストを下げられた要因は、これまでの技術をうまく融合できたことだ。1段目にはH2Aの固体補助エンジンを、2、3段目にはM5の技術を採用して改良した。

 発射場への設置から打ち上げまでの期間も、M5の1カ月半から約1週間に短縮された。それを可能にしたのは、これまでの常識では考えられなかったロケットへの人工知能搭載というアイデアだ。手作業で行われていた打ち上げ前の点検の一部を自らが点検できるようになり、時間と人手が大幅に削減された。

 打ち上げ時の管制もノートパソコンで運用可能な「モバイル管制」を開発した。これらの技術はH2Aなどのロケットにも活用したい。

 先月27日に予定された打ち上げはコンピューターの設定で管制室と機体のデータ通信に時間のずれが生じ、中止された。そのミスは今後に生かさなければならない。
 1号機の成功を喜んでばかりはいられない。世界的にみると、ロシアやヨーロッパなどがロケットによる国外衛星打ち上げビジネスを活発に展開している。日本はようやくコスト面で太刀打ちできるレベルに達したに過ぎない。

 今後どうやって競争力を高めるかが課題だ。国産衛星もセットにして売り込んだり、衛星を政府開発援助の対象にしたりするなど、さまざまな工夫が必要だろう。

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