知りたい!:偏差値≠難易度の怪 推薦・AO入試で一般枠減り 大学側が倍率操作?
毎日新聞 2013年02月16日 東京夕刊
偏差値を頼りに大学を選んだ共通一次世代の子供たちが大学入試の季節を迎えている。親はつい偏差値が気になるが、最近は偏差値が大学の入学難易度とかけ離れている場合もあるという。今どきの偏差値、どうなってるの?【小国綾子】
首都圏の私立大の文系学部で偏差値が最も高いのはどこだろう。早大政経学部か、あるいは慶大経済学部か。いえいえ。今年の大手予備校の偏差値を見れば、答えは慶大法学部。えっ、いつの間に?
受験情報会社、大学通信の安田賢治・常務取締役によると「慶大法学部は90年代に指定校推薦・AO(アドミッション・オフィス)入試の枠を広げた。一般入試枠が狭まったため合格ラインが上がり、偏差値も上昇したのです」。
偏差値は一般入試だけが対象で、推薦・AO入試は対象外。「偏差値の高い学部でも推薦・AO入試枠が広ければ、コツコツ型で普段の成績がいい子や一芸に秀でた子は入りやすい。偏差値だけで入学難易度を測れない時代です」と説明する。
大学通信によると、私立大進学者のうち推薦・AO入試は50・5%を占めるようになった。「受験生を多角的に評価するため導入された制度が、少子化による『全入時代』到来で、学生獲得手段になった。特に不人気校が一般入試枠を狭めて競争倍率を上げ、イメージアップを図る一方、AO・推薦枠を広げて学生を青田買いし始めた」と安田さん。
18歳人口は減っているのに、大学や学部の数は増えている。全国に約800校の大学があるが、私立大一般入試の志願者数上位約20校に約5割の受験生が集中している。
人気校でも一般入試枠を狭め偏差値を上げる「操作」がささやかれる。「偏差値が上がれば優秀な学生が来る可能性が高まる」(安田さん)からだ。逆に数年前、中央大理工学部情報工学科はホームページに「『偏差値操作』をすることなく、競争入試による入学枠7割を堅持します」と明記し話題になった。
同科の鈴木寿教授は「偏差値が他学部や他大学より低い理由を調べると一般入試枠の広さが原因だった。それでも7割を維持した結果、学力検査に裏付けされた学力のある学生を集められている」。
推薦・AO入試で将来有望な人材を集める大学もあれば、学力低下を招く大学も。事情は大学のレベルや人気度によりさまざまだ。だが、親世代は我が子に少しでも偏差値の高い大学を勧めがちだ。