東京高裁で審理中であったいわゆる「クロウ事件」が、先般、和解により終了したことは既にご承知のとおりである。 この和解により、宗門は訴えを取り下げ、創価学会はこれに同意したが、このことにより一審下田判決は効力を失った。 |
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民事訴訟法二六二条一項には、「訴訟は、訴えの取り下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす」と規定されているので、訴えの全部を取り下げると、訴訟そのものが初めからなかったことになり、一審判決も効力を失うのである。 | ||
法解釈も上も「控訴審において・・・・訴えを取り下げると、第一審判決も失効する」(新民事訴訟法304ページ)とされていて、異論を見ない。 | ||
それだけでなく、和解条項には、当事者双方が、今後、「(クロウ事件に関する)事実の摘示、意見ないし論評の表明をしない」ことが定められている。その趣旨は「追記」において確認されているとおり。「相互に名誉毀損にあたる行為をしないことを確約する趣旨のもの」であるから、「(宗門側が)事実の存在を単純に否認することは」構わないが、逆に創価学会側は、「クロウ事件」が存在したと「単純に肯定する」発言は許されないのである。 つまり、単純肯定であっても、それは直ちに事実の摘示になり、宗門側の名誉を毀損するからである。 |
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もとより、「クロウ事件」を]詳しく述べて、あたかも「事件」が存在したかのような報道をすることは、和解条項により、厳禁されているところである。 | ||
ところが、和解成立の翌日発行された、平成14年2月1日付聖教新聞は、早速、和解条項違反の記事を掲載した。 | ||
すなわち、同紙には創価学会の弁護団長である宮原守男弁護士の談話が掲載されたが、同弁護士はその中で、和解に至る経過報告との口実のもとに、クロウの証言内容について述べ、これを裏付けるものとして、スプリンクルの証言やメイリーの宣誓供述書を取り上げた。さらには御法主上人猊下の供述や手紙についても言及した上、「(クロウ事件報道)内容は十分に裏付けのある事実であ(る)」とか、 | ||
「第一審判決の内容は事実上いささかもゆるがないものであります」などと、世人を惑わす不当極まりない一方的な論評を加えたのである。 | ||
これはまさに和解条項によって禁じられた「事実の摘示、意見ないし論評の表明」であり、宗門に対する著しい名誉毀損そのものである。このような和解条項違反を、和解成立の翌日に、創価学会の弁護団長自らがやってのけたのである。 | ||
のみならず、宮原弁護士は同月八日付聖教新聞におけるインタビュー記事にも登場し、一審判決は有効に存続しているだけでなく、「事実上、確定し、宗門側がそれを覆す機会は永遠になくなってしまったわけです」などと「クロウ事件」の存在が確定したかのように述べて、再び和解条項に違反する発言をしている。 | ||
しかし、東京高裁は「(クロウ事件に関する)事実を確定するには・・・格段に多くの障害があり、・・・・これ以上事実の解明に努力すること」は適当ではないとして、和解勧告をしたのである。(和解条項第1の2)。 事実が確定したかのように言うのは、何の根拠もないばかりか、東京高裁の右の見解を明らかに反するものである。 |
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また、そもそも、このような発言をすること自体が、「クロウ事件」に関する事実摘示や意見・論評をしないとの和解条項に真っ向から違反するものである。しかも、一審判決が有効なものとして残っているとか、和解条項に報道の差止めを受けるのはむしろ宗門側であるなどとの、弁護士の発言とも思えない謬見を述べてもいる。 | ||
クロウ事件訴訟宗門弁護団は、このようにあからさまな創価学会弁護団長による和解条項違反を断じて許すことはできないとして、全員の連盟による平成14年2月26日付内容証明郵便をもって、宮原弁護士に対する厳重抗議をなした。 | ||
宗門弁護団としては、今後も創価学会の和解条項違反を十分に監視し、違反には厳正に対処していく方針である。 | ||
しかし、創価学会が側が違反をしたからといって、宗門側が同じように違反をして、あれこれ「クロウ事件」の中身に立ち入って発言すれば、結局、宗門自らを創価学会と同じレベルに貶めることになる。 | ||
創価学会側が違反をしようがしまいが、宗門としてはあくまでも和解条項に定められたことを遵守し、創価学会側の違反に対しては、宗門らしく正々堂々と合法的に対抗していただきたいと考える。 |