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 福島第1原発事故が起きたとき、1号機にいた元作業員の木下聡さん(65)が亡くなった。「余命8カ月」と宣告されていた。「地震の影響と向き合わない東京電力は、何も変わっていない。私の経験をもっと伝えなくては」。そう語っていたが、帰らぬ人になった。

 地震直後、1号機の冷却装置「非常用復水器」は作動せず、メルトダウンの主因の一つとされる。木下さんは「現場にいた私たちに明確な指示があれば動かせた」と指摘。東電などの調査で、当直の社員が使い方を知らなかったことが判明しており「情けない。結局、すべてがメーカー任せだった」と憤った。

 稼働40年になる1号機の老朽化にも言及した。「重要器具は定期検査で交換するが、周辺の装置はそのまま。どんどん配管を増やし、防火剤を塗りつけるから、設備の重量は設計基準を大幅に超えていた」「建屋のコンクリートはずぶずぶでドライバーを当てると白い粉になった。鉄筋をモルタルで塗り固めるときも竹の棒で突っつくだけ。施工はひどいものだった」

 福島第1原発の全電源喪失と地震の関係について、事故後に設置された政府、東京電力の両事故調査委員会は「無関係」と否定する。しかし、木下さんは「内部はすさまじい破壊ぶりだった」と証言した。「解析が必要」と結論づけた民間事故調で委員長を務めた北沢宏一・前科学技術振興機構理事長は「地震の影響があり得るという前提で調査を継続しないと、国民の信頼は得られない」と指摘する。

 木下さんは原発事故の1カ月後、避難先の青森県から呼び戻され、1~4号機の電源車のケーブル敷設作業に従事した。

 木下さんの積算被ばく線量は40年間で96ミリシーベルト。このうち38ミリシーベルトは事故後の復旧作業で被ばくしていた。

 がんとの因果関係について「私はたばこを吸うし、100ミリシーベルト以下なら問題はない」と否定。肺線維症は、電気配線に粉末状のタルクを塗る作業でアスベストを吸引したのではないかと疑っていた。

 ただ、木下さんを支援していた福島県の労働関係者は「実際は長年、被ばく線量を低くごまかすため若い作業員の線量計を借りて現場に入った、と本人は言っていた。放射能と発がんの関係は否定できないのではないか」と話す。

(木村信行)

 〈原発作業員の放射線被ばく〉労働安全衛生法の規則は、被ばく線量の上限を通常時で1年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルト、緊急時の作業では100ミリシーベルトと規定。労災認定基準は白血病が1年当たり5ミリシーベルト、胃がんは積算で100ミリシーベルトなど。肺がんの認定例はない。

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