アドバイスを聞いてほしければ、尊敬される存在になって出直してきてください

2013/09/15


ツイッターで突然「アドバイス」してくるおっさんたちについて」という記事に、色々反響を頂いております。ここら辺、意外と伝わりにくいようなので改めて書いてみます。


内容の正しさよりも、まずは関係性

アドバイスの内容が正しければ、それがその受け手に理解してもらえる、だなんてのは立場に甘えた傲慢な態度です。

たとえば、まるで尊敬もしていない上司が、内容的には正しいアドバイスを、部下であるあなたに提供したとします。あなたはそういうアドバイスを素直に聞き入れることは難しく、場合によっては「あいつの言ってることだから、何か裏がある」と邪推し、「間違ったアドバイス」としてそれを受け入れる可能性もあります。

正しいアドバイスが、正しいアドバイスとして届くためには、事前の関係構築が重要になります。この場合、上司が尊敬に値する人間であれば、そのアドバイスは有効に機能するわけです。

自分の立場に甘んじる人、相手のことを考えない人は、この簡単なメカニズムを無視します。もしもアドバイスが聞き入れられないと、「オレの言うことを無視するなんて、どういうつもりだ!」と憤慨します。聞いてほしかったら、尊敬と評価を勝ち取ってから出直してください、というのが本当のところなんですけどねぇ。


アドバイスの内容は間違っていてもいい

ここら辺は内田樹先生がたびたび著書で書いていることですが、指導者のアドバイスが、必ずしも正しいものである必要はありません。

ぼくは高校時代、それなりに強い吹奏楽部に所属していたのですが、先生がかなり厳しい方だったんです。あえて厳しい表現を使えば、恐怖政治めいていました笑

振り返ってみると、先生が教えてくれることって、必ずしも正しいわけではなかったんでうしょね。でも、ぼくは当時、こわーい先生の言うことを信じて、ひたすらトレーニングを続けました。

すると、あら不思議、ぼくはその努力の過程で、自ら楽器について学び、考え、いつの間にか楽器が上達していました。アドバイスの「内容」は見当違いだったとしても、「上達」という果実は確かに勝ち取ることができていたのです。さすが千田先生!


この場合においては、先生とぼくの間に、一定の関係性が構築されていたから、上達という結果がもたらされたと考えられます。ぼくが先生を微塵も尊敬しておらず、言うことなんて聞いてやるか!と思っていたら、やっぱり部活なんてやめていたのでしょう。


というわけで、意外なことに、アドバイスというものはその内容の正しさよりも、相手に「この人の言うことだから、やってみよう」と思わせる、関係性のあり方こそ重要なのです。

繰り返しですが、「内容が正しければ、それが正しいまま伝わる」と考えるのは、指導者の傲慢です。関係性の構築の努力こそ、まず行う必要があります。


ついでにメカAGさんへレス

メカAGさんがもはや恒例の曲解をしてくださっておりますね。

ようするに、赤信号を渡ろとしている人間を見ても、本人がアドバイスを求めていないから、無視しろということらしい。

イケダハヤトの赤信号問題 : メカAG

違う違う。アドバイスの受け手に対して「無視しろ」と言っているのではなく、「アドバイスの提供側に対して「関係性について配慮せよ」と言っているのですよ。受け手ではなく、出し手の問題であると。

アドバイスを提供するという行為は本質的に傲慢であるがゆえ、それの提供者は人格者を目指す必要があります。出し手が人格錬磨の努力をせずに、受け手の怠慢を「不快な思いに耐えられないからアドバイスを無視するなんて未熟だ!」批判するのは、順序が「逆」なんです。この場合において、先行して未熟なのは、アドバイスの出し手です。


ついでに。

イケダハヤトの論法ってのはいつもこんな感じなんだよね。

  ・赤信号を渡ろうとするイケダハヤト。
  ・「おい、赤信号だから渡っちゃダメだ」と誰かが声をかける。
  ・僕はあなたにアドバイスなんて求めていません。
  ・いきなり信頼関係もない人からのアドバイスなんて受け入れられるはずないですよ。
  ・そもそも強盗に追われていて命の危険があるときなどは、赤信号を無視せざるを得ないこともあるでしょう。
  ・どんな場合でも赤信号を無視しちゃいけないというあなたの考えは傲慢です。

こんな感じ(笑)。やっぱ論法が中学生レベルだと思うけどね。仮に赤信号を無視する正当性を主張するにしても、もう少し工夫しないと。

この種の印象批判については、コメントするのもうんざりしますね。「こんな感じ(笑)」じゃないですよ。


まず第一に、何をもって「赤信号か」をどのように判断しているのか。ぼくは自分の渡っている道は、青信号だと「思っている」。あなたは赤信号だと「思っている」。さて、どちらが「正しい」のでしょう。何をもって「危険性」は判断されうるのでしょう。

…そんなものは、主観同士の不毛な戦いに終わります。強いていえば、倫理的に正しい方はどちらか(「悪くない方/善い方はどちらか」)、という基準が有効だとぼくは考えていますけどね。ただし、それすらもすり合わせは困難でしょう。


第二に「僕はあなたにアドバイスなんて求めていません」ではなく、「あなたのやり方では、せっかくのアドバイスが受け入れられませんよ(ぼくは寛容なので、一応聞くだけ聞きますが)」ですかね。ぼく個人の「好み」の話ではなく、「アドバイスはいかなるときに有効に機能するか(アドバイスをする人には、どのような態度が求められるか)」という「作法」の話です。


というわけで、アドバイス問題について考えてみました。みなさんも思うところがあればぜひコメントをください。


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