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■『 愛する日本の孫たちへ 』 桜の花出版 2007年 p130〜

 語り手・蔡 徳本   聞き手・猪股るー

・日本人が知らない、日本人が去ったあとの暗黒の台湾

台湾には親日家が多いのは事実ですが、同時に反日の人も存在します。その理
由を理解するには、まず台湾に存在する「本省人」と「外省人」の二つの族群
について理解しておかなければなりません。
日本は単一民族の国家でしょう。でも台湾はそうじゃないんです。本省人と外
省人に分かれています。本省人とは戦前から台湾に住んでいた台湾人のことで、
全人口の約85%を占めます。この本省人はほとんど親日といっていいでしょ
う。
一方、外省人とは戦後、大陸、「外」からやって来た人たちで、彼らはほとん
ど反日です。中国人や韓国人とまったく同じで日本を恨んでいます。小林よし
のりさんの漫画を焼いたり、何かにつけて日本の国旗を焼いたりしているのは
この外省人たち。彼ら、実は台湾の中では少数派です。でも日本の人にはどち
らか区別がつかないから、あの一場面だけを見たら台湾の反日感情は強いと思
うでしょう。
反日感情の強いこれらの外省人は、台湾人口のうちたったの15%ほどしかい
ません。12%という人もいます。この数値の差は、本省人と外省人の間に生
まれた子供たちをどちらに数えるか、という点から出るものです。問題はマス
コミが反日感情の強い外省人に牛耳られていることです。そのせいで反日的な
報道は大きく取り上げられますが、親日的な報道はなかなか取り上げられませ
ん。
だから、テレビのニュース一場面から台湾を判断するのは危険です。たとえば
李登輝が推した連戦が選挙で落選した時。何万人もの人が集まって抗議してい
る場面が連日大きく報道されました。そんな場面を見ると、外国人のみならず
台湾人ですら「わあ、こんなに多くの台湾人が李登輝に抗議している」と思っ
てしまいます。でもあそこに集まっていたのは、ほとんどが外省人。テレビの
場面の中に台湾人の民意が表されているかというと、違うんです。もちろん、
本省人の中にも外省人の持つ権力に隷属したがる弱い心を持った人間もいます
けどね。

本省人は今言ったようにほとんど親日。でも世代別に3つに分けてみると微妙
に背景が違います。
まず一つ目は、私たちみたいに日本統治下に育った日本語世代。これはほぼ百
%親日です。孔子廟に行くと、お年寄りが集まっておしゃべりしているでしょ
う。旅行で来た日本人が道を聞いたり何かを頼んだりすると、喜んで日本人の
ために何かをしようとします。それで「日本語が上手ですね」とか褒められた
らそれだけで嬉しいんです。ただ、終戦からすでに60年以上経っていますか
ら、親日の日本語族たちも急激に少なくなっていっています。
二つ目は、日本語族の子どもの世代。彼らは日本統治下ではなく国民党統治下
育っていますから、学校で反日教育を受けています。しかし不思議なことに、
反日になる人は少ないのです。というのは、家に帰ってから親の話を聞きます
から。学校ではこう教えるけど、お父さんの言うことと違う。親が実際に体験
した話の方を子どもたちは信じています。私の子どもも親日です。反日教育を
受けて育っても親日。でもいずれは彼らが親の世代になります。そうすると、
その子どもたちはどうなるでしょうか。反日的な授業を学校で聞いて帰ってき
ても、家の中で日本の良い話を聞く機会は少なくなります。
三つ目は、李登輝総統の時代(1988[昭和63]〜)になってから教育を受けた世代。
この頃から徐々に反日教育が排除されていきました。この世代は日本のことは
よく分かっていないんですが、10代・20代の若者を中心に日本の歌やファ
ッションが大好きな人たちがいます。彼らは「哈日族」と呼ばれています。
ちなみに台湾では、学校で台湾の地理や歴史を充分に学ばずに育った子どもた
ちが多いんです。特にさっきの二つ目の「日本語族の子どもの世代」です。
ではどこの国のことを教えられるか。中国大陸のことです。当時はあくまでも
中華民国(台湾)は中国全土を統治しているというスタンスでしたから、それな
らば台湾という島は、広い中国大陸35省の内の1省にすぎません。こういう
教育を受けていると、中国大陸を自分の国と思うようになってしまいますよね。
李登輝総統の時代になって、やっと台湾の地理や歴史を教える教科書「認識台
湾」ができました。これによって台湾人が台湾のことをきちんと学べるように
なりました。成果は徐々に上がってきています。でもまだ始まったばかりなの
で完璧ではありません。
もちろん外省人の先生はこういう教育には反対しています。台湾の孤立化につ
ながると批判してみたりね。この教科書には外省人が好きな反日色も全然あり
ませんから、ますます気に食わないのです。
台湾統治の時代に育った私たち日本語族は、昔からこんなに親日感情が強かっ
たのか。
正直いうと、日本統治下で生活している時は、日本政府の政策の良さなどあま
り考えたことがありませんでした。ですから終戦直後は日本の台湾統治が終わ
ったことを喜び、祖国復帰に涙を流したものです。
しかし喜びもつかの間。日本時代には見たこともなかった腐敗と汚職にまみれ
た国民党のやり方に驚き、すぐに失望してしまいました。
1947(昭和22)年2月28日、国民党政府や外省人への本省人の怒りがつい
に爆発して起こったのが「2・28事件」です。これに対して蒋介石は武力に
よる鎮圧を始め、数万人もの台湾人を殺しました。その死者数はいまだにはっ
きりしていません。政府は2万3千人と発表していますが、10万人とみてい
る人もいますし、それより多いのではという人もいます。
2・28事件のの翌々年の1949(昭和24)年5月に戒厳令が施行され、いわ
ゆる「白色恐怖」が始まります。言論の自由は無くなり、本省人の知識層や共
産党嫌疑者が次々と逮捕されていきました。
牢獄に入れられたのは10万人以上。5千人とも7千人ともいわれる人々が死
刑になりました。生命の危機にさらされる異常な状態の中、私たち日本語族は
平和な法治国家だった日本時代良さを痛感し、ひたすら懐かしく思ったのです。
このような非人道的な外来政権との比較から生まれた親日感情の他に、実際に
人民の生活が改善されたことへの冷静な評価からの親日感情もあります。
たとえば教育面。私は一昨年インドに行きました。インドの公立学校はどこも
粗末でみすぼらしい。机も椅子も無いというところもあります。インドは約9
0年もの間イギリスの植民地でした。それに比べて日本は、台湾に来て最初の
5年間で50個の学校を建てたのです。私の故郷の朴子という小さな町にもそ
のうちのひとつが建てられました。
また、日本統治時代の台湾はすばらしい法治国家でした。裁判所はとても公正
で、日本人の裁判官は台湾人と日本人を同じように裁きました。公平じゃなか
ったことは一回も無いと断言してもいいですよ。これは人が安心して暮らすた
めの基本です。
他の国、たとえばイギリスなどの植民地統治下と比べても、日本はとても公正
でした。ところが中国大陸からやって来た国民党政府はまったく違いました。
裁判所は賄賂をどう巻き上げるか、それしか頭になかったのです。
もちろん日本の台湾統治は、日本のための政策でした。でも西欧諸国の植民地
政策と比べてみると、台湾にとって良い結果になったことが多いのです。

・日本統治時代の差別

本国と植民地間に差別があるのはそれ相当の理由もあり、いたし方ないことで
ある。主な差別は次の三つである。
給料 日本人の官吏・教員は台湾人と比べ、給料は6割高かった。
勉強しながらお金がもらえる師範学校生への支給額にまで差別が
あり、ひと月あたり日本人は6円、沖縄人5円、台湾人3円だった。
しかし戦争が激化し、徴兵制が敷かれ、皇民化が進むにつれて差別
は無くなり、台湾人も等しく6割高くなった。
 
優越感 日本人は台湾人に対して優越感があり、悪い行為はすべて「台湾人
根性」といって軽蔑した。そのような態度は特に警察官に顕著に見ら
れ、終戦の時に報復を受けたのは主に巡査だった。
しかし人民の側に立った巡査もいた。たとえば森川清治郎は、村の
守護神として今でも宮に祀られている。
 
学生の
 合格率
中等学校以上の学校は日本人学生に用意された席数は多く、台湾
人学生に用意された席数は少なかった。
 
・日本統治時代の成果
治安の改善 清朝時代は匪賊が多く治安が悪かった。それが日本統治下では、
夜に門を閉めなくても安心して眠れるようになった。
 
衛生の改善 上・下水道の整備、病院の建設、衛生教育などにより、「伝染病の
地」といわれた台湾が住みやすい美しい島になった。
 
司法の公正 日本人と台湾人の間にはいろいろな差別があった。しかし司法の
場においては民族的差別がまったく無く、公正だった。
 
交通の発達 鉄道・港湾はもちろん、村から村へ通じる道路が作られ、島内の交
通が便利になり、産業に大きく貢献した。
 
教育の普及 台湾統治の最初の5年間に50ヶ所の公学校を建てたのは、世界
植民地政策に類を見ないことである。以降、日本は公学校・中等
学校・師範学校・専科学校・大学を建て続けた。
台湾統治終息の時の識字率は95〜97%で世界水準を上回った。
ちなみにイギリスに統治されたインド・エジプトは30%未満。
 
産業の振興 1 . 製糖業が発達
2 . ダムおよび灌漑水路の建設
3 . 農業試験場、産業試験所の建設
4 . 樟脳・塩・茶・畜産業などの振興
 
                          
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