ヘイトスピーチに思う:排外主義者を攻撃しても、かえって攻撃性が高まるだけ

2013/09/14


ヘイトスピーチについて思うことを書いておきます。


排外主義者を攻撃することの意味

ちょっと長いですが、ニュースを転載いたします、

 2020年五輪開催が決まった東京・新宿で8日、在日コリアンに対するヘイトスピーチ(憎悪表現)デモが行われ、対抗するグループが沿道で「オリンピックの邪魔をするな」と抗議した。

 デモが行われたのは、韓流ショップや韓国料理店が立ち並ぶ新宿・新大久保の商店街。在日特権を許さない市民の会(在特会)などの主催で、旭日旗を掲げた一団が「オリンピックおめでとう」「日韓断交」と声を上げながら練り歩いた。

 対抗するグループは五輪開催決定を報じる新聞の号外を手にし「ここは東京。オリンピックをやるところだぞ」「日本の恥」と訴えた。集団で車道に寝転び「帰れ」「デモ中止」と叫んで妨害し、警察に排除される場面もあった。

 買い物に来ていた東京都港区の中学2年の女子生徒(13)は「世界に対して良い印象にならないからこうしたデモはやめてほしい。日韓関係は悪くするべきじゃない」と話した。(共同)

ヘイトスピーチに抗議「五輪の邪魔するな」 – スポーツ – SANSPO.COM(サンスポ)

なんというか、たった4段落で美しい構図が浮かび上がってますね。中学2年の女子生徒(13)の意見が冴え渡る。


ヘイトスピーチが悪いものであることについては、異論はないでしょう。恐らく在特会の人々ですら、「韓国人は出て行け」「大虐殺を実行する」といった言葉を発することについては、「悪いこと」だという認識はあると思います。流石に彼らにも、最低限の倫理観はあるでしょう。

ヘイトスピーチを行う彼らの心理には「正当防衛として、我々は暴力的な言葉を振るっているんだ」というロジックが駆動しているように思えます。

「韓国人は日本を侵略しているから、我々は韓国人たちを排除しなければならない。暴力的な手段を使うことは我々も避けたいが、変化を起こすために、力を振るうのである」と。彼らは「仕方なく」言葉の暴力を振るっている、と見ることができるとぼくは感じます。


そういう彼らに対して、同じように暴力的なやり方で反対を表明するのは、彼らの攻撃性を高める結果に終わります。「こちらは丁重にデモをしているのに、我々に対して暴力を振るうとは何事だ。こちらは正当防衛として、暴力を行使する」。

また、彼らを完全にスルーしたり、嘲るような態度を取るのも、彼らの攻撃性を高めるでしょう。「我々がこれだけ言ってもわからないのなら、より暴力的な手段に訴える必要がある」。わかってもらえない子どもは、全力で泣き叫び、壁や床をドンドンと叩くのです。


結局、彼らの攻撃性を弱めるためには、彼らの言い分を聞き入れ、対話していくことしかないでしょう

彼らのやり方を頭ごなしに否定するのではなく、その「正当性」を認めるということです。「なぜ彼らが、ヘイトスピーチに頼らないといけなかったのか」、それを、対話によって聞き出すことから始めるのです。


無論、これは非常に難しい仕事です。対話のために歩み寄る行為自体が、彼らから攻撃を受ける理由にもなりかねません(「お前は我々を懐柔しようとするスパイだ!」とか)。対話の場を取り持つための、優秀なファシリテーターの存在が不可欠でしょう。


しかし、ヘイトスピーチを繰り出す人々と対話し、彼らの攻撃性を落していくことは、「困難」ですが「不可能」ではありません。前述の通り、彼らを攻撃したり、スルーしたりすることは、結局彼らの攻撃性を高めることになるので、やはりぼくらは歩み寄っていくしかないのです。

法律によってヘイトスピーチを規制するという方向もありえますが、それは彼らの攻撃性の矛先を、別の方向に向けるだけの結果と終わるでしょう。鬱屈した彼らは、別の手段で抗議を行うのみです。法規制は、根本的な解決策にはなりえないと考えます。


ヘイトスピーチを行う人たちは、ぼくら市民の成熟度を試しているとも言えます。

やさしい人に対してやさしくするのは、動物でもできます。攻撃的な人たちに対して、嫌みなく、慈しみの心で接するのは、卓越した人間性が必要です。

彼らの存在を破壊することなく、その行動に歯止めをかけることができるのは、そういう超人的な存在でしかありえないでしょう。ぼくら市民が成熟すれば、ぼくらは総合的に、そういう存在になりえるとぼくは思っています。


↓ヘイトスピーチを行う人々に対して、みなさんは何を思いますか?彼らとぼくらは、どのように関わっていけると考えますか?ぜひコメント欄でご意見をください。

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