世界文化遺産:「産業革命遺産」推薦へ 政府「長崎教会群」先送り
毎日新聞 2013年09月14日 東京夕刊
政府は14日、2015年夏の世界文化遺産登録を目指し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」(福岡、長崎、鹿児島など8県)を推薦する方針を固めた。9月中にユネスコに推薦手続きが取られる。
世界文化遺産への各国の推薦枠は年1件で、内閣官房が推薦する「産業革命遺産」と、文化庁が推薦する「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本両県)のどちらにするか、菅義偉官房長官に一任されていた。「長崎の教会群」は16年以降の登録を目指す。
「産業革命遺産」は端島(はしま)(通称「軍艦島」、長崎市)や三池港(福岡県大牟田市)など、日本の工業化の歴史を刻む炭鉱、製鉄、造船などの関連資産28件で構成。稼働中の施設を含むため、文化財保護法だけでなく、港湾法や景観法などを駆使した保全管理計画が練られている。
一方、「長崎の教会群」は、日本へのキリスト教の伝来から信仰が深まる経緯、さらに禁教から復活までの流れを示す資産で、大浦天主堂(長崎市)などの教会、「島原の乱」の舞台となった原城跡、平戸島や天草の崎津集落など13件で構成される。両案件を抱える長崎県と長崎市は、教会群の推薦を優先するよう求めていた。
世界文化遺産候補の国内選考を巡っては、これまで文化庁の推薦が事実上の政府推薦とされてきた。しかし、昨年5月の閣議決定で規制を緩和。実際に使われている稼働中の資産を世界遺産に登録するための基本方針が定められ、門戸が拡大した。【福田隆】