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定義集 民訴法5/5
参考文献 上田徹一郎(第2版)伊藤眞(初版)有斐閣双書(補訂第2版)新堂幸司(初版)

<第九編 裁判に対する不服申立>

第一章 上訴

第一節 上訴総説

上訴 裁判の確定前に、上級裁判所に対し、原裁判の取消・変更を求める不服申立 上田551

審級の利益 判決効の生じる事項につき特定の当事者間での、三審級にわたって攻撃防御方法を展開しまた別個の裁判主体の審理を受けるべき手続上の地位の保障 上田552

上訴理由 上訴人の不服の申立すなわち原裁判の誤りについての主張にもとづく原裁判の取消・変更の要求、すなわち上訴理由の有無につき審判する →上訴棄却or原判決取消、自判または差戻し

上訴要件 上訴制度運営上要求される一定の適法要件 上田554

@上訴が法定の方式に従い、有効であること(訴訟能力の有無など)

A上訴期間徒過前であること

B原裁判が不服申立のできる性質の裁判であり、その裁判に適した上訴であること

C不上訴の合意、上訴権の放棄がないこと

D上訴人が原裁判によって不利益を受け「不服の利益」を有すること

不服の利益(上訴の利益) 上訴によって、原裁判に対する不服申立の当否について上訴審の裁判を受けられる当事者の権能 双書p584、法律学小事典p563、上田p557

形式的不服説 原審における当事者の申立とその申立に対して与えられた原裁判を比較して後者が前者に及ばない場合 双書p584  

実質的不服説 当事者が上級審で原裁判よりも実体法上さらに有利な判決を求め得る可能性がある場合

上訴提起の効果 上田p555

1確定遮断の効力 適法に上訴がなされると、原裁判は上訴期間が経過しても確定しない 

2移審の効力 上訴提起がなされるとその事件は原裁判所での係属を離れて上訴裁判所に係属する

3効力の及ぶ範囲−上訴不可分の原則 確定遮断・移審の効力の及ぶ対象の範囲は、上訴人の申立てた不服の範囲に限らず、原裁判全体に及ぶ

上訴制限 上級審ことに最高裁の負担軽減のため 上田556

1簡易裁判所の事物管轄の拡大(上告審は高裁)

2最高裁の上告理由を憲法違反中心、裁量上告制(318)、決定による上告棄却(317) ←新法

3制裁金納付命令(303)

第二節 控訴

一 控訴総説

控訴 控訴人の被控訴人を相手とする、第一審終局判決に対する、第二の事実審への上訴申立行為

上田556 中間判決(245、283)、訴訟費用の裁判(282)、仮執行宣言の裁判は独立して控訴し得ない

控訴権 第一審判決に対する不服の当否につき控訴審の判決を求める第一審当事者の異議権

控訴権の放棄 控訴提起前は第一審裁判所、その後は訴訟記録の存する裁判所に対する申述により放棄しうる(284、規則173) 上田557

不控訴の合意 両当事者につき上訴権全体(控訴権のみならず上告権)を発生させない旨の、一審の終局判決前の両当事者の合意 →言渡しとともに確定 上田p558

飛躍上告の合意 一審判決言渡後に、上告権を留保してする控訴権のみの放棄の合意(281T但) 上田p558

二、控訴提起 

付帯控訴 すでに開始せられた控訴審手続の口頭弁論終結までに、被控訴人が、控訴人の申立てた審判対象を拡張して、自己に有利な判決を求める不服申立(293T) 

→控訴ではないから控訴の利益は不要(通説・判例)、控訴権を放棄・喪失してもできる 上田p559

独立付帯控訴 同時に控訴の要件を具備する場合 

→控訴の取下げ・却下があっても独立した控訴とみなされるもの(293U)

三、控訴審の構造と審理

続審主義 第一審で収集された裁判資料を前提として、さらにそれに控訴審で新たに収集される資料を加えて、控訴審の口頭弁論終結時を基準時として、控訴の適否と第一審判決に対する控訴・付帯控訴による不服申立につきその当否を判断する(折衷的) 上田560

事後審主義 控訴裁判所が自ら事実認定をやり直さずに、一審の資料から原審の認定や法的判断の当否を判断する

覆審主義 一審とは無関係に自ら収集した資料のみに基いて一審判決の当否を判断する

弁論の更新 続審主義をとり一審の資料を控訴審で利用するについつては、当事者が「第一審の弁論の結果の陳述」をしなければならない(296U)

更新権 続審主義では将来に向かって新しく、当事者は、従来の主張を補充・訂正し、新しい事実・証拠を提出することができる

四 控訴審の終了

控訴の取下げ 控訴人による、原判決に対する不服申立(控訴)の撤回の意思表示行為(292)

→控訴は遡って効力を失い(292U262)控訴期間の徒過により一審判決確定。訴訟が係属しなかったことになる訴えの取下げと異なる。(訴えの取下げ、請求の放棄・認諾、訴訟上の和解によっても終了)

終局判決 控訴を不適法として却下する訴訟判決。控訴棄却・認容判決の本案判決

控訴却下(290)

控訴棄却(302)

控訴認容(305,306) 控訴の理由があり、一審判決の判断を不当とするとき、または一審判決の手続が法律に違背するとき

自判 事実審であるから、自ら事実認定して一審に代わって裁判するのが原則

差戻し 

必要的差戻し(307) 原判決が却下判決の場合は、事件につきさらに弁論をする必要がないとき以外は、必ず原裁判所へ差戻す

任意的差戻し(308) それ以外でもなお一審での審理を要すると認められる場合には、審級の利益を基準として、自判しないで裁量により差戻すことができる

⇒差戻し判決が確定すると一審手続が続行される。 原裁判所は控訴裁判所の判断に拘束される(裁4)

移送(309) 専属管轄違背として取り消す場合は、直接管轄裁判所に移送する

仮執行(310)

不利益(利益)変更禁止の原則(304) 上訴審において上訴人に不利益に現裁判を変更できないとする原則 双書P596、上田p563

第三節 上告

一、上告総説

上告 控訴審の終局判決に対する、法律審たる第三審への上訴申立行為 上田565

上告(申立)権 控訴審判決に対する不服の当否につき上告審の判断を求める当事者の異議権 上田565

1上告の利益 =不服の利益

2上告の理由の主張 これら二つの要件を欠くと上告は不適法として却下

上告理由 上告審が原判決を破棄すべき事由 →法律審であるから、法令違反に限られる

@法令違反の態様 (1)法令の解釈・適用の誤り、(2)判断の過誤と手続の過誤

A一般的上告理由と絶対的上告理由

(1)一般的上告理由

(A)高裁上告 判決に影響を及ぼすことが明らかな「法令違反」全般(312V)

(B)最高裁上告  ←上告理由を限定

 ・「憲法の解釈の誤り」「その他憲法の違反」があるとき(312T)

 ・上の憲法違反と絶対的上告理由以外の法令違反で、原判決に最高裁判例に反する判断がある事件、および法令解釈に関して重要事項を含む事件については、これを上告受理申立事由とし、上告提起とは別個の手続である「上告受理申立」に基き、最高裁が決定で、上告審として事件を受理できることとしている ←裁量上告制(318)

(2)絶対的上告理由(312U)

  イ)裁判所の構成の違法(1号) →249違反など

  ロ)判決に関与できない裁判官の判決関与(2号) →25Vなど

  ハ)専属管轄違背(3号) 

  ニ)代理権欠缺(4号) 代理権欠缺や代理されねばならぬのに適法に代理されなかった諸場合。本号は当事者権保障の規定であり、他に、攻撃防御方法の機会を不当に奪われた場合にも類推 伊藤631参

  ホ)公開原則違背(5号)

  ヘ)判決の理由不備・理由齟齬(6号)

   「理由不備」とは、主文との関係で理由が全部または一部欠けているか不明確で争点をめぐり主文に到達した過程が明らかでない場合。

   「理由齟齬」とは、判決理由自体に矛盾があるため判決主文の結論に至る筋道が不明であること

(3)結果的に上告理由となる場合(特別破棄)(325U)

Bその他上告理由

(1)審理不尽 法令の解釈・適用以前の問題として、事実認定を尽くさないなど、必要な審理を尽くして結審すべき手続規範に対する違背 ⇒明文を欠く上に、釈明権不行使より広い概念であり、学説の大勢は、審理不尽とされる場合は結局は法令の解釈適用の誤りか理由不備・理由齟齬もしくは釈明権不行使により違法な認定等に帰着する

(2)再審事由 再審は前訴訟中に、上訴による不服申立の機会がなかった場合に限り認められるのであり、また訴訟経済の視点からも、338条1項4号以下の再審事由も法令違反として上告理由となる

ニ、上告の提起と上告受理申立  上田570、伊藤634

 

【上告の受理申立手続】(318)

 

三 上告審の審理(319〜322)

上告状、上告理由書等から上告に理由なし ⇒口頭弁論を経ないで上告棄却の判決(319)

上告を認容する場合には、口頭弁論を開いて審理しなければならない(313)

四 上告審の終了 

上告が不適法      上告却下(317) ←決定

上告理由が認められない 上告棄却(319)

上告理由を認める場合  原判決破棄

さらに事実審理を要する場合 差戻しまたは移送(325T・U)

原判決の確定した事実だけで原判決に代わる裁判ができる場合 破棄自判(326)

五 差戻(移送)後の手続

従前の口頭弁論の続行(325V本文)

破棄差戻判決の拘束力(325V但書)

第四節 抗告

一、意義

抗告 判決以外の裁判である決定・命令に対する独立の上訴方法

ニ、抗告の種類

通常抗告 抗告を提起すべき期間が限定されず原裁判の取消を求める利益がある限りいつでもできるもの

即時抗告 裁判が告知された日から一週間以内に提起することとして法が個別に認めるもの(332,334T、例21,25X、69V、86など)

三、抗告のできる裁判

終局判決に対する控訴・上告の中で不服を申立てる決定・命令(283本) 上田577

本案審理との間に密接な関係があり、その誤りが終局判決に直接影響する事項に関する決定・命令(証拠申立却下決定、引受決定、訴え変更申立却下決定など)

抗告によるべき決定・命令(283但)

・本案との関係が密接でなく付随的・派生的な手続上の事項(期日指定申立却下決定、管轄指定申立却下決定、忌避申立却下決定など)

・終局判決に対する上訴の中ではそもそも争う機会のない場合(決定命令で事件が終了−訴状却下命令、終局判決後に決定命令−訴訟費用額確定決定、判決の名宛人以外になされる場合−第三者に対する文書提出命令等)

不服を申立てることができない決定・命令(283但) (10V、25W、214V、274Uなど)

四、抗告審手続

抗告状を原裁判所に提出(331本、286,287)

   ↓

再度の考案 適法な抗告が原裁判所になされると、原裁判所は自ら抗告の当否を審査し理由あるときは原裁判を取消変更しうる(333)

   ↓

更正しないときは事件を抗告裁判所に送付(規則206)

   ↓

任意的口頭弁論(87T但)

五、再抗告

再抗告 抗告審の終局決定に対する法律審への再度の抗告であり、抗告審の決定に憲法解釈の誤りなど憲法違反または決定に影響をおよぼすこと明らかな法令違反あることを理由とする場合に限り認められる(330)

第五節 特別上訴

特別上告 高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限り、最高裁判所にさらに上告をすることができる(327)

特別抗告 地方裁判所および簡易裁判所の決定・命令で不服を申立てることができないもの、ならびに高等裁判所の決定・命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる(336)

第二章 再審 上田582〜

一、総説

ニ、再審事由と再審の補充性(338T但)

1、判決内容への影響の有無を問わないもの(338T@〜B)

2、判決主文に影響を及ぼす場合に限る場合

 イ)裁判の資料につき可罰行為があった(同C〜F)

ロ)判決の基礎たる裁判や行政処分の変更(同G)

ハ)重要な事由についての判断遺脱(同H)

ニ)確定判決との抵触(同I)

三、再審の訴えの要件

四、再審訴訟の手続と裁判

<第十編 略式訴訟手続>

第一節 督促手続

督促手続 金銭その他の代替物または有価証券の一定の数量の給付請求に限って、債権者の一方的申立に基きその主張の真否については実質的な審理をしないで、管轄裁判所の裁判所書記官が支払督促を発する手続(382)

 

 

第ニ節 手形・小切手訴訟

一、意義と制度目的

手形・小切手訴訟 手形・小切手による金銭支払請求とこれに付帯する法定利率による損害賠償請求を対象とする簡易迅速な略式手続(350)

ニ、手形訴訟の提起 350、特別裁判籍5A、

三、手形訴訟の審理 証拠調べが書証に制限(351T)

四、手形判決 規則216

五、通常訴訟への移行

1手形判決前の移行(353T)

2手形本案判決に対する異議(357)

六、移行後の訴訟における判決(新判決)

1通常訴訟における判断結果が手形判決と合致するとき  ⇒終局判決で手形判決を認可(361T本)

2手形判決の手続が法律に違背したとき    ⇒手形判決を取り消して判決をしなおす(362T但)

3判断結果が手形判決と合致しないとき    ⇒手形判決を取り消してその判断を示す(362U)

第三節 小額訴訟の手続

一、異議と制度目的

ニ 小額訴訟の要件(368)

@訴訟の目的の価額が30万円以下、

A金銭支払請求を目的とする訴えに限る、

B同一簡裁で同一年に10回を超えて訴えできない(規則223)

三、審理手続

手続の教示(規則222)

一期日審理(370)

証拠調べの制限(371)

証人等の尋問(372)

四、通常手続への移行

被告の申述(373T・U)

裁判所の決定(373V)

五、裁判

直ちに言渡(374T)

判決による支払いの猶予(375)

認容判決では仮執行宣言(376)

六、小額訴訟判決に対する異議と異議後の審理・裁判

控訴の禁止(377)

判決裁判所に対する異議(378)

異議後の審理裁判(379)

異議却下判決や、異議後の手続による終局判決に対しても控訴禁止(380)

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