社説
国家安保戦略 真の平和主義を前提に(9月14日)
安倍晋三首相が、外交・安全保障の総合的な指針となる「国家安全保障戦略」の策定に着手した。
官邸主導の外交・安保政策を進めるのを狙いに、首相が年内の設置を目指す日本版「国家安全保障会議(NSC)」の活動方針と位置づけられる。
年末に策定する新防衛大綱は国家安保戦略の下位文書として、同戦略を具体化する内容になる。
戦略と大綱について諮問を受けた有識者懇談会座長の北岡伸一国際大学長は、集団的自衛権行使をめぐる憲法解釈見直しに向けた別の有識者懇談会でも座長代理を務める。積極的な行使容認論者だ。
首相の意向を受け、戦略が集団的自衛権の行使を織り込んだ内容になるとの危惧を抱かざるを得ない。
憲法の平和主義を逸脱し、海外での武力行使を前提とするような戦略なら認められない。
有識者懇の初会合で首相は、中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発を踏まえ「わが国の安全保障をめぐる環境は一層厳しさを増している」と強調した。
その上で、日米同盟の強化を念頭に「国際協調に基づく積極的平和主義の立場から世界の平和と安定にこれまで以上に関与する」と述べた。
聞こえはいいが、中国などに対抗するため、従来より踏み込んで日本が米国の軍事力を補完する役割を担おうとする意図が透けて見える。そのために集団的自衛権の行使が必要ということだろう。
そうなれば、日本はいや応なく米国の戦争に巻き込まれることになる。東アジアの緊張を一層、高めることにもなる。「積極的平和主義」という言葉はまやかしにすぎない。
有識者懇初会合では、中東からの石油輸送のためのシーレーン(海上交通路)安全確保も議題となった。
北岡氏はシーレーンについて共同通信のインタビューで「日本の生命線」と強調し、それを防護する国が攻撃された場合の集団的自衛権行使の可能性にも言及した。
集団的自衛権を共に行使する対象国を米国以外にも拡大することを意味する。
戦略にこうした方向性が盛り込まれれば武力行使の歯止めがなくなり、周辺国だけでなく、広くアジアや中東諸国の日本に対する疑念や警戒感が強まる恐れがある。
中国や北朝鮮の動きに日本や米国が「力」だけで対抗すれば軍拡競争を招く。外交を駆使して問題解決を図るのが基本である。
憲法が掲げる真の平和主義を堅持してこそ、日本が世界の平和と安定に関与できることを首相はしっかりと認識すべきだ。
-
- 24時間
- 週間
- 月間
-
- 先住民族マオリ女性の入浴拒否 北海道・石狩管内の温泉、顔の入れ墨理由に
- 速度超過93キロ、停職 札幌市教委 懲戒処分3件発表
- 日航、北海道エアシステムを再子会社化 来年度にも 道と調整
- 「外国文化に敬意を」 先住民族マオリ女性の入浴拒否で官房長官
- 「口論になり殺した」 室蘭女性殺害 容疑者の男 営業で訪問と供述
- 先住民族マオリ女性の入浴拒否 北海道・石狩管内の温泉、顔の入れ墨理由に
- 強要拒み「マタハラ」被害 札幌の女性が医療法人提訴
- 中国国営TV「東京敗退」と誤報 国営通信新華社も誤報
- ミツバチ5千匹飛来 札幌で高校野球が中止に 選手「怖かった」
- JR北海道、新車両の導入検討 釧路―札幌間、釧路市長に説明