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宇宙作家クラブのメンバーによる取材活動の様子をリアルタイムでお届けします。
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No.1710 :イプシロン成功記者会見第二部
投稿日 2013年9月14日(土)17時56分 投稿者 松浦晋也

9月14日イプシロン打ち上げ成功記者会見第二部です。。

出席者は、森田泰弘・イプシロンプロジェクトマネージャーと、澤井秀次郎・SPRINT-Aプロジェクト・マネージャー

森田
 終わってみれば最高だった。隊員全員よくがんばってくれました。本当にありがとうございます。
 今日の打ち上げの状況について。ものすごくお天気も良く好調だったように見えたが、追跡局の小笠原追跡局の風が強かったり、高層風があばれていたりして、ぎりぎりまで我々はどきどきしていた。これほどきれいな打ち上げはいままでなかったかなと思う。
 打ち上げはほぼ決められた時刻に決められたイベントが実行された、全く正常な打ち上げだった。PBSの噴射は3段目までに発生した軌道誤差に対応して行うので、時刻が予測値からずれているのはPBSが正常に動作した証拠。投入軌道は非常に高精度で投入できた。
 イプシロンは宇宙研と旧NASDAの文化の良いところを集めて作ったロケット。統合10年目の節目の年に、日本のロケット開発集大成としてきれいに飛んでいったのはうれしい。イプシロンは、宇宙ファンの皆さん、内之浦の皆さんと二人三脚で開発してきたが、今回ほどありがたかたことはない。イプシロンの成功は始まりである。自律点検やモバイル管制で宇宙開発の新しい時代をロケットスタートを切ることができた。

澤井
 非常にきれいに打ち上げられ、衛星も健全な状態にある。先ほどの上空通過で衛星状態を確認。太陽電池パドルを開き、太陽にきちんと向けている。ロケット側に感謝している。
 衛星の名前は「ひさき」(HISAKI)。地元内之浦にとっての新しい夜明けを象徴したいということでこの名前を選んだ。意味は2つ、ひさきは観測対象は惑星。惑星が太陽の影響をどのように受けるかを観測するので、ひ「太陽」の先だからひさき。
 メインの理由は、内之浦の地名。津代半島の先端の火崎から。内之浦で一番最初に夜明けの光があたる土地。毎年正月に漁の安全を祈願する場所。イプシロンもまた内之浦を旅立つ船であり、安全を祈願するという意味で火崎とした。

森田
 ちょっとおちゃめな話をします。性能計算書の表紙。皆さん宇宙開発で一番大切なのは、なんだと思いますか。柔軟な発想です。性能計算書の表紙は、新燃(しんねん)です。その理由を話しましょう。
 M-V廃止の時、自分は大変悔しい思いをした。そのとき恩師で日本の固体ロケット研究を引っ張ってきた秋葉先生が「宇宙開発に“たら”も“れば”もない、いいロケットを作って未来を拓け」といわれた。それ以来、私たちはM-Vより良いロケットを作るという信念でここまで来ました。だから今回の性能計算書の表紙は新燃なんです。
 もう一つ話したいことがあるのですが・・・すいません、気持ちが静まったら話します。

読売新聞 打ち上がった瞬間の気持ちを聞きたい。
森田 射場に来てからの数ヶ月は大変鍛えられる日々だった。チーム一丸となって苦しくともがんばって良かった。終わってみたら最高です。日頃私は自信満々で語っているわけですが、内心は、眠れない夜を何日も過ごしたということもあった。チームを奮い立たせるために強気の発言をしてきたわけだが、その自分からしてこれほどの成功になるとは思っていなかった。

澤井
 うれしい、と拍子抜けと両方。衛星は必ずしも理想的に運ばれるわけではないので、100以上の異常対応の手順を組んで訓練してきた。それがすべて無駄になったので、あれっと拍子抜けです。

NHK カウントダウンと衛星分離の時の気持ちを。固体ロケットの伝統を引き継ぐことについて感想を。

森田
 カウントダウンは何回も練習してきたので、無心で静かな気持ちでした。何回も苦難を乗り越えたというのはたくさん練習できたということで良かったのかなと思う。今回、各段のロケットがきちんと燃えるだけでも、格段の感慨があった。各段がきちんと燃えることがこんなにありがたいとは。だから衛星分離の時は、みんなに拍手を送りました。これが7年間のみんなの努力の成果なんだな、と。
 自分の能力を超えるような事態にもぶつかったが、開発チーム、内之浦の皆さん、全国の宇宙ファンに
 夢中に走った7年間でした。みんなと一緒に走った7年でした。イプシロンは始まったばかりで、これからおもしろいミッションを実現していきたいと思います。

産経新聞 今までイプシロンの命名の半分がエクセレンスやエデュケーションの頭文字だがそれは半分だとおっしゃっていました。イプシロンの命名の理由の残りの半分は成功会見でということだったので。この場で話してもらえればと思います。

森田
 とても良い質問です。まずイプシロンの記号の意味。小さいけれど存在感はある。これが1/4。残りの1/4は今回初めて話します。
 3年前に開発承認された時、宇宙研の先輩に相談したところ「Mロケットの精神を忘れるな」と言われた。Mロケットの精神は、「世界の先を行け。自分の力で未来を拓け」ということ。M-VIでもないなと的川先生とM組立室でギリシャ文字を並べて相談していたところ、的川先生が「Mを回して横にすればEだよね」と言ったのです。Mでありながら、全く別次元に変身したロケットということでイプシロンと命名した。これからかわいがってください。

不明 リフトオフの瞬間の感想は。モバイル管制は何人で行ったか。その意義について。
森田 飛んだところで喜んだ。飛んだと心の中で叫んだ。そんなところで喜んではいけないと、姿勢とか軌道のデータを見つめた。
 モバイル管制事態はパソコン2台で3人で運用した。パソコンの前に2人、2人の動作を監督する人1人。同じ部屋に自分の他に8人いました。この人数は今後習熟するにつれてもっと減らせると思います。

東京会場
フリーランス秋山 PBSの修正量について。どの程度少なくて済んだのか。
森田 今日の最終飛行経路、ノミナル軌道に対して、一回目PBS燃焼は計画では4分強、実測も4分でした。

読売新聞 打ち上げ時に出た黒い煙はサイドジェットの燃焼か。
森田 その通りだ。サイドジェットあまり高温ガスではバルブが溶けるので、温度を下げて黒い煙がでるように作ってある。

喜多 祝電が届いています。「成功を祝す、私を引き合いに出すのはそろそろやめてくれ、固体ロケットは君らのものだ 糸川英夫」、返答をお願いします。
森田 イプシロンはずいぶん革新的なことをやりましたが、糸川先生からみるとまだまだなのではないかと思っています。これからも糸川先生に気に入られるようなロケットを作っていきます

NVS 視察はどれぐらい来たでしょうか。
森田 自分ではわからないので・・・
広報 後ほど回答します。

南日本新聞 内之浦にひとことお願いします。
森田
 皆さんのご支援が我々がここまで来れた最大の要因です。一心同体二人三脚でやってきたので、よかったね、と言ってあげたいです。8/27の延期で町にずいぶん迷惑をかけたのではないかと思います。もともとオペレーションも長く宿のみなさんも疲労困憊だったので、そこにさらに迷惑をかけてしまいました。宿のおばさんに、力いっぱいがんばりましたと報告したいと思います。
 8/27の延期は疲労の頂点で起きたので、落ち込みもしました。その中で応援の色紙やお便りは思い切り励みになりました。この二週間、励ましの言葉がなければここまでがんばれなかったと思います。皆さんのたくさんの夢を乗せたイプシロンが、打ち上げ成功をつかむことができました。どうもありがとうございます。

以上です。


No.1709 :イプシロン初号機打ち上げ成功を受けた記者会見第一部
投稿日 2013年9月14日(土)16時49分 投稿者 松浦晋也

9月14日午後4時15分からの、イプシロン初号機打ち上げ成功を受けた記者会見の様子です。

第一部 出席者は奥村直樹JAXA理事長と福井照文部科学省副大臣

奥村より打ち上げ経過の報告。ロケットは正常に飛行、打ち上げ後約61分39秒後にSPRINT-Aを正常分離。

地元肝付町など関係各位に謝辞あり。

 非常に新しいロケットシステムであり、技術実証ができたことは意義深い。新宇宙基本計画の宇宙利用の拡大という大きな政策方針にも続いた第一歩として、大がかりな準備を要しないロケットの打ち上げに成功したことは意義深い。新基幹ロケットの開発にも着手する。新たな我が国のロケットがそろう最初の年となった。

 IHIエアロスペースなどメーカーに対する謝辞。

 JAXA発足から10年、イプシロンにはNASDAやNALの技術も取り入れてあり、三機関統合の成果でもある。今後とも研究開発に邁進したい。

福井
 下村文部科学大臣のコメントの要旨読み上げ。SPRINT-Aに期待している。7年振りの固体ロケット打ち上げを喜ばしく思う。
 今回は内之浦打ち上げ400回目。地元と応援してくれた国民に感謝する。2回の延期を乗り越えた奥村理事長のリーダーシップに謝辞。組織内に検証チームを作って競わせたことを評価する。

質疑応答

朝日新聞 打ち上げ成功の所感は。
奥村 直前に2回の困難があったこともあり、感動した。
朝日 イプシロンでどのような市場でどのように戦っていくのか。
奥村 より小型で安価な衛星を高頻度で打ち上げていくという市場を中心にイプシロンを適用していけたらと思う。H-IIA/Bと補完することでマーケット対応力が上がってくるのではないかと思う。

朝日新聞 大きな教訓の得たという中身はなにか。
奥村 予定通りの日時に打ち上げられなかったことの原因を、次回に繰り返さないということ。発生原因というか派生原因を社内で検証していくということ。

時事通信 27日、物事がうまくいかなかった時の心境を教えて欲しい。
奥村 事象が起こった直接原因と、直接原因が起こる背景を両方考えて対処しないとなと考えていた。そのために打ち上げ関係者以外から直接原因を探ろうとして特別点検チームを組んで、原因究明をしてもらった。

読売新聞 イプシロンは2段階開発となっているが、今回の成功で2段階目をどう考えるか。
奥村 開発の一方でマーケット調査が必要。今の能力で対応できる衛星のニーズを発掘しつつ、第2段階を検討するということになるだろう。

南日本新聞社 地元の応援をどのように感じたか。
奥村 私も現地に宿泊しているわけだが、これまで自分が経験したことのない熱意を感じた。延期にもかかわらず外から見物に来られる方の対応を、地域を挙げてしてもらっていると強く実感した。内之浦の皆さんの応援は、大変大きな力になった。

東京会場
読売新聞 今後の打ち上げのスケジュールについて。この先の打ち上げ計画を文科省はどう考えているか。
福井 2号機予算を来年概算要求に提出した。それ以降はこれから。
読売新聞 イプシロンの打ち上げは何年間隔が適正と考えるか、
福井 今答える段階ではない。

東京新聞 宇宙ビジネスにどうつなげていくか、政府の考えを聞きたい。
福井 「2020年を契機として日本人を変えるのだ」という、下村大臣のオリンピック決定に関するコメントの中に、ロケットも入っている。オリンピックを4本目の矢と形容したけれども、ロケットもまた矢だろう。ロケットは超弩級の矢ですよね。

筑波会場
NVS 固体と液体のロケットがそろったわけだが、この2つのロケットをどう生かしていくのか。
内村 縦割りやメーカーの違いをどうやって乗り越えるかという質問と理解した。奥村理事長を評価するのはまさに今回乗り越えたから。
奥村 今後世界の宇宙ビジネスに打って出るなら、競合相手との相対的な力関係が重要になる。議論としてはそういう方向が出てくるだろう。

以上です。


No.1708 :宮原一般見学場から見るプレススタンドとイプシロン
投稿日 2013年9月14日(土)12時46分 投稿者 松浦晋也

 一般見学席からはイプシロンがプレススタンド越しに見える。


No.1707 :イプシロン、姿を現す
投稿日 2013年9月14日(土)11時30分 投稿者 松浦晋也

 午前10時45分過ぎ、イプシロンが姿を表しました。現地は風が強いです。平均で8m/s、最大10m/sぐらい。台風の影響でしょう。この程度なら打ち上げ可能ですが気になります。


No.1705 :9月13日午後1時からのイプシロン打ち上げY-1ブリーフィング(内之浦)
投稿日 2013年9月13日(金)14時03分 投稿者 松浦晋也

9月13日午後1時からのY-1ブリーフィングの様子です。

出席者は、森田泰弘・イプシロンプロジェクトマネージャーと、澤井秀次郎・SPRINT-Aプロジェクト・マネージャー

森田 ご心配をおかけしたイプシロンの打ち上げも明日。王手がかかった。直前の延期でご迷惑をおかけしたが、皆さんの応援で明日打ち上げを迎えることができる。

 8月27日以降の対応の説明。直接原因の究明だけではなく、水平展開による全体の見直しを実施。9/5に整備棟内で打ち上げシーケンスを走らすシーケンス試験実施。9/8に射点にロケットを出してリハーサル相当のシーケンス点検を実施。9/11に最終確認審査を実施して、最終準備が整っていることを確認。
 以下配布資料の説明。

澤井 衛星側は前回と同じ内容。
 以下配布資料解説。
 打ち上げ15分前に内部電源に切り替えてタイマーをスタートさせると、打ち上げ後4日までのシーケンスが動き出す。衛星側としてはこの15分前のタイマースタートが大きなイベントとなる。

森田 明日の天気。午前は雲が残るが午後は晴れ間も見えて、絶好の打ち上げ日和。その後はあまり天気が良くないので、チャンスは明日と考えてしっかり準備を進めていく。

質疑応答
NHK 前回の中止から二週間が経ったが、現在の心境は。
森田 かなり複雑なものがある。直前の中止で全国の宇宙ファンや内之浦にいらっしゃった皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。緊張が頂点に達したタイミングの出来事だったので、我々の精神的にも大変な出来事だった。多くの人々から激励の言葉をいただき、我々の励みになった。色紙やお守りまでもらった。厳しい思いも経験してきたが、いろいろな人に応援されてここまで来たと感じる二週間でもあった。
 頂いたメッセージの中には入院しているご老人や施設の子供たちからのものもあって、それぞれイプシロンに自分の気持ちを託して応援してくれていると思うと涙が出た。いろいろな人々の思いを託されてイプシロンは飛んでいくのだから、しっかり準備しようと思っている。

朝日新聞 澤井さんに。8/27でもT-15分のシーケンススタートをしたわけだが、それは止めたのか。
澤井 放っておくと太陽電池パドルが打ち上げ3700秒後に開く。ロケットと分離しない限り開かないという安全機構がついているが、誤動作もあり得るので非常時は3700秒までにシーケンスを止めることになっている。前回はトラブル発生から10分以内に非常時の手順に従って止めた。

朝日新聞 レイトアクセスについて。衛星センサーを真空ポンプで引いていると聞くが、アンビリカルで引いているのか。

澤井 アンビリカルでは引いていない。打ち上げ4時間前までレイトアクセスを生かして引いている。真空引きを停止してから10時間は、センサーに影響が事実上出ない。打ち上げ中止時は、真空引き停止後10時間以内に、真空引きを再開することになっている。8/27はロケットを整備棟に戻してからすぐに真空引きを再開した。

鹿児島テレビ 打ち上げがうまくいった場合、何秒前にロケットから煙がでるのか。
森田 発射の10秒前に、ロケットの姿勢制御を行う固体ロケットモーターに火がつく。」

読売新聞 イプシロンとしては、総点検で信頼度は増したのか。
森田 大変難しい質問だ。より広範囲な目でしっかり見てもらったので、我々としては外部の目から見ても大丈夫という確信が得られた。

読売新聞 前回は「打ち上げ成功間違いなし」という言葉があったが、今回は?
森田 人間が思い至らないことを機械が気づいて止めるというのがイプシロンのコンセプト。それが誤検知を引き出してしまった。前回は肩に力に入っていた。イプシロンは我々だけではなく多くの人々の思いを乗せて飛んでいく。絶対成功間違いなしの確信は変わらないが、二週間前に比べると平常心である。

毎日新聞 この二週間の延期でかかった金額は。
森田 計算中です。追って後日ということで。
毎日 体調はいかがですか。
森田 なにかふわふわした感覚で、食欲もなかったが、激励メッセージが届くようになって今は元気な状態に戻った。体重は確かに減ったが今は誤差の範囲内です。
毎日 宇宙ビジネスに展開するにあたって
森田 イプシロンと澤井さんが開発する小型衛星バスを組み合わせて市場に出て行きたい。よりコストを下げつつ性能を上げていきたい。打ち上げを重ねるたびに市場をリードする形でコスト低下と性能向上を進めていきたい。

東京会場に回る
東京新聞 カウントダウンシーケンスでの監視項目はH-IIAとどう違うのか。
森田 今すぐ違いが出てきません。監視の内容はイプシロンのほうが進化している。

NHK 衛星分離の映像がJAXA放送で流れるのは何秒後か。
広報 ダウンリンクから十数秒遅れで流したい。
NHK 分離映像が流れたら打ち上げ成功といっていいのか。
森田 ほぼそのタイミングで衛星が正しい軌道に投入できたかどうかが分かるはずだ。

筑波会場
日本放送 打ち上げ準備終了の確認はしたのか。その時の心境は。
森田 監視項目だけでも2000点近いデータを何十人の人が徹夜に近い努力ですべて点検した。そういった点検をやることでより安全になったことは間違いない。

NVS 天候が優れない場合は、ウインドウ内で粘るのか、
森田 なるべく打ち上げは粘りたい。あらためていつ打つのが良いかはそこから考えるものなので、

内之浦会場にマイク戻る
時事通信:この延期で今後の開発に得られた教訓はあるか。
森田 教訓はたくさんある。新しいものを作った場合の検証範囲を広げる必要を感じた。いつ不具合を発見するかは、効率の許す限り、打ち上げの

共同通信 森田プロマネは士気を高めるためにどんな話をしたのか。
時事通信 自分が暗い顔をしちゃいけないと思って仕事をした。最大限明るく振る舞った。

共同通信 今日の点検はどこまで進んでいるのか。
森田 ここにきちゃったので火工品確認作業終了は確認していません。

鹿児島テレビ 
森田 固体ロケットは町と二人三脚。内之浦の皆さんの協力なくしては成立しない。打ち上げ時の自宅からの待避など大変な負担をおかけしている。

鹿児島テレビ これまで天候で延期ということが多かったが、本当に明日の天気は大丈夫か。
森田 意気込みで悪い天気予報をここまでもってきた(笑)。台風も昨日みんなで進路が曲がるようにみんなで念力をかけました。

毎日新聞 澤井さんに。小型衛星の動向をどう考えるか。
澤井 私は未来は明るいと考えている。技術の進歩でより小さな衛星で同じことができるようになりつつある。光学系のようにサイズが大きくなると性能が上がるので大きな衛星で勝負せざるを得ない。大型と小型ではっきりと分かれるのではないか。
毎日新聞 衛星が撮影した画像はいつ頃公開されるのか。
澤井 11月です。しかし科学観測に特化しているで、あまりきれいな星の画像が出てくるというわけではありません。

森田 天気について、先ほどちょっと精神論を述べたが、打ち上げ隊としては慎重に構えて天候判断していきたい。

以上です。


No.1704 :イプシロンロケット試験機打ち上げ中止原因究明・対策結果および特別点検状況についての記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月12日(木)01時48分 投稿者 柴田孔明

2013年9月11日午後、イプシロンロケット試験機打ち上げ中止原因究明・対策結果および特別点検状況についての記者説明会が内之浦宇宙観測所で開催されました。

・説明者
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 森田泰弘
宇宙航空研究開発機構 信頼性統括/技術参与 (イプシロンロケット試験機特別点検チーム チーム長) 武内信雄

・原因究明対策の結果及び特別点検の状況について
 (※JAXA配付資料より、主に特別点検関連を抜粋)

 ・対策と水平展開
  1.本事象への対策として、LSCでの姿勢監視をOBCの姿勢計算値の受け取り後に開始するよう変更した。(※LCS:地上装置、OBC:ロケットの搭載計算機)
  2.今回の事象を踏まえ、通常の点検では実施しない詳細なレベルの活動を、注意深く徹底的に実施することとした。具体的には、機体が正常であることが適切に監視でき、かつ誤検知による打ち上げ中止が生じないよう、監視項目選定の妥当性、正常判定範囲および監視時間について、これまでに延期時及びシーケンス試験・点検で得られた最も詳細なデータに基づき、全ての監視項目について再確認した。
  3.さらに、打ち上げに向けて万全を期すために、信頼性統括を長とする特別点検チームを設置し、打上管制隊とは独立的に打ち上げ準備状況の再点検を行った。
  4.再点検期間に実施したロケットの外観点検において、フェアリング断熱材の一部接着不足を確認したため、補修作業を実施した。
 
 ・対策と再点検の妥当性確認
  本事象への対策と水平展開、及び特別点検チームによる再点検の妥当性を確認するために、シーケンス試験を9月5日に、シーケンス点検を9月8日に実施した。
  結果は以下の通りであり、イプシロンロケット試験機の打ち上げに向けて、対策及び再点検の妥当性が確認できた。またフェアリング断熱材の一部接着不足についても処置が完了したため、打ち上げ準備作業を再開する。

  1.シーケンス試験(2013年9月5日)
  整備塔内に機体を置いた状態で、テスト用の機体搭載ソフトウェアで自動カウントダウンからフライト以降のシーケンス(X−70秒〜X+5290秒)を実施。熱電池駆動と固体モータサイドジェット(SMSJ)点火を除く自動停止項目の検証を実施し、監視項目の見直し結果が妥当であることを確認した。併せて、機体の電気的作動・ノズル駆動の健全性確認を行った。
  ※試験後の評価において、判定の余裕を確保するために正常判定範囲の修正が必要と識別された2項目については、シーケンス点検前に修正を行った。
  (※テスト用の機体搭載ソフトウェア:実際の飛行と違い、試験中はロケットの姿勢等が変わらないため、ノズルの駆動などを抑制している)

  2.シーケンス点検(2013年9月8日)
  ランチャを旋回させて機体を射点に置いた状態で、フライト用の機体搭載ソフトウェアで自動カウントダウンシーケンス(X−70秒〜X−5秒)を実施。熱電池を駆動して計画通り打ち上げ5秒前に自動停止した。SMSJ点火を除く自動カウントダウンシーケンスについて、姿勢誤差異常検知を含み正常に動作することを確認すると共に、打ち上げに向け手順書の確認、各系の連携及び習熟度の向上を図った。
  ※シーケンス点検後に、監視項目データを評価した結果、監視設定が監視項目要求に対応していない2項目の修正を行うこととした。

・特別点検チームによる再点検
(1)特別点検チームの設置目的
 イプシロンロケット試験機の不具合による2度の打ち上げ延期を受け、プロジェクト外の知識・経験を結集して徹底的な点検を行い、イプシロンロケット試験機打ち上げ成功に向け万全の対策をとる。
 ※平成25年8月30日:イプシロンロケット特別点検チームを設置

(2)点検の基本的な進め方
 独自の視点で打ち上げ準備状況を点検し、懸念事項を洗い出し、打上管制隊と共同で検討の上、対策が必要な場合、その対策結果を確認し、妥当性を評価する。

(3)特別点検チームの視点及び点検・提言事項
 【視点1】ロケットと地上設備を含む全系確認の拡充
  1.自動停止監視項目設定の見直し
   ロケットの自動停止に関する監視項目について、地上設備での正常判定範囲および監視時間を見直すこと。この効果はシーケンス試験、シーケンス点検で確認した。
   シーケンス点検のデータは確認中。

  2.打上イベントに関する確認範囲の拡充
   ロケットの打ち上げイベントを自動カウントダウンシーケンススタート以降、可能な限り実施して確認範囲を拡充すること。このためシーケンス点検をX−18秒から、熱電池起動を伴うX−5秒まで拡充してロケットの健全性確認がより進んだ。
   自動停止監視項目に関しては17点ほど変更している。これはノイズなどで正常なものを止めることが無いようにしたもの。

 【視点2】打上管制隊各部門間の連携・習熟度の向上
  1.打上管制隊各部門が参加するドライランの実施
  このドライランはシーケンス点検に先駆けて実施され、全系の連携・習熟度向上に寄与した。
 【視点3】その他、チーム長が必要と判断する事項
  1.フェアリング断熱材一部接着不足の是正策
   今回の打ち上げに支障がない適切な対策になっていることを確認した。
  2.衛星健全性確認の前倒し
   打ち上げシステム全系の健全性確認を最終確認審査前までに行うため、衛星の健全性確認を前倒しすること。この確認は9月9日に実施され、結果は良好であった。


・質疑応答/内之浦会場
南日本放送・9月14日打ち上げに向けての総合評価はどうか。
武内・まだ打ち上げ日が決定した訳ではない。提言に対しての対応については問題がないが、点検中のデータの確認が残っている。念には念を入れている部分がある。

鹿児島テレビ・前回の中止の原因である「百分の7秒の見落とし」は、これはあり得るものなのか。再発防止策は行ったか。
武内・実際に見落としたのは現実であるが、気がつくべきタイミングはあった。見落とし対策は、自動停止監視項目設定の見直しで点検チームが確認した。点検チームの経験を反映している。

NHK鹿児島・フェアリングの断熱材で見つかった接着不足が放置され、このまま打ち上げていた場合はどうなるか。これは見落としなのか。
武内・実際に気がつかないまま飛んでしまった場合の解析はしていない。直す方が重要であると考えた。

読売新聞・フェアリングの接着不足の原因は何か。
武内・施工でつけ方が難しい場所。製造工程と要件でうまくいかなかった。

読売新聞・百分の7秒のずれ対策について。
森田・受け側・送り側の両方で対策した。地上のコンピュータがデータの時刻を見るようにした。また、200msの余裕をもって監視を開始するようにした。

毎日新聞・自動停止監視項目の見直しだが、17項目か。
武内・17項目が19項目になった。

毎日新聞・どういったタイミングなどを直したかの例。
森田・ロール角はデータが来てから監視するようにした。監視の設定値については、たとえば電流のモニタで、ノイズが入った場合に誤判定をしないように多めにとるような変更をした。

毎日新聞・フェアリングの接着不具合はどこか。
森田・イプシロンのフェアリングはコーン部とシリンダー部が結合されていて、半割りになっているが、結合部分の細い部分で見つかった。シリンダー部で1カ所、コーン部で数カ所。

時事通信・17項目の変更だが、数値を増やしたことで作業への影響は無いのか。対応していない2項目については、リハーサルで出てきたものなのか。
森田・監視を緩くしたが、これはノイズの影響を考慮したもので、不具合を検出しなくなるものではない。2項目は点検範囲を広げた結果見つかっている。
武内・データの点検の中でみつけた。点検チームが入ったことで、深みに行ける効果があった。

・東京会場
NHK・フェアリングの問題について、これは失敗に繋がりかねないものだと思うが、早めに見つける事が必要があったのではないか。
武内・ちゃんと直して飛ばすことである。早く見つけるのは必要だったと思う。

NHK・総点検で見つかった事に対してどう思われるか。
森田・イプシロンは旧宇宙研と旧NASDAの二つの文化を融合させて進めてきた。7年の研究開発で力を発揮してきた。更に延期になり特別点検を行い深く広く点検したことで、自信が更に深まったと感じている。

時事通信・修正した項目は、タイムスタンプを見て確認するということか。
森田・タイムスタンプの確認に加え、チェックの開始時間を変更した。

時事通信・もし200msを超えた場合はまた止まるのか。
森田・OBCのタイムスタンプを見て監視が始まるため、そういった事は無い。

時事通信・思いが至らなかった点について、旧宇宙研の造り方と違ったことなどがあるのか。
森田・それは違う。我々は世界初の革新的なことをやっている。自動監視の項目は1500件、70秒前からの自動シーケンスでも300件あり、これはISASにもNASDAにも無い、新しいイプシロンだからこそやっている事である。人間がやったらパソコンが30台、人が60人は必要。イプシロンはパソコン2台と3人でやっている。人力で300件を確認すると2〜3時間かかる。イプシロンは70秒でできる。不具合を乗り越えないと新しいものができない。これまでの文化は関係ない。新しい文化の、産みの苦しみである。

共同通信・フェアリングの断熱材の接着不足だが、部品の簡略化との因果関係はあるか。
森田・組み立て工程や部品を簡単にした事とは関係ない。ウレタンを外に貼っている工程。しかも細部の寸法調整で起こったもので、弱いところがあるという程度。直ちに脱落するようなものではない。事前に直して飛ばすことになる項目。

共同通信・監視項目要求に対応していない2項目の内容。
森田・あまり詳しく言えないが、監視開始時刻の設定で遅れ時間に不適切なものがあった。もうひとつは監視項目であったが、監視を行っていなかったもの。これは電流のモニタで、他の部分でやっているので監視できているが、念のため。

共同通信・フェアリングの断熱材だが、作る際に接着剤などの基準は。
森田・いろいろなものがあり、実際に真空で確認するものがあるが、今回のように小さくて試験が難しく、工程で確認するものもある。工程保証が難しいものではない。

共同通信・見つかったのは新たな調査でみつかったのか。
森田・通常の現場ではやらない特別な調査で見つかった。注射器のようなもので補修した。

共同通信・すぐ脱落しないものだが、もし気づかずに飛んでも支障はなかったのか。
森田・非常に小さい断熱材で、脱落して機体に影響するケースを事前に解析しにくい。事前の対策を行うことになる。

日経BP・シーケンス点検とシーケンス試験で見つかった問題は同じか。
森田・それは違う。

日経BP・自動監視が19項目になったということはどういうことか。
森田・これはシーケンス点検で見つかった。シーケンス点検前に17項目の変更が既にあり、点検後に2つ追加になった。

日経BP・監視時刻だが、タイムスタンプつきのデータは地上(LCS)と搭載(OBC)との時間差が最大200msあるということか。
森田・そうではない。搭載機器のデータの時刻を見て判定する。また監視をX−19秒と200ms後に開始する。

日経BP・点検のチェック項目があったのか。
武内・点検項目は決まっているので、いまのもので大丈夫であるかを確認した。チェックの結果、疑義があるものは確認して調整した。

産経新聞・00.7秒のずれに対する考慮が無かったのは、プロフェッショナルでもわからなかったものか。
森田・私の感覚では物凄く新しいものを作っている中で、極めて単純なところで問題が出た。この点についてはしっかり気づいていればと個人的に思っている。しかし、こういったものを乗り越えないと新しいものはできない。新しいものは簡単にはできないという、自分達の戒めにしたい。

産経新聞・今回、1回しか使えない熱電池を駆動した。以前はこれの事前のテストは行わないとしていたが認識を変えたのか。
武内・Hシリーズで使っており自信のある部分だが、この期に及んで念には念を入れて確認したところである。

NHK・姿勢監視の開始時刻を変更したことについて、固定値で簡単に説明できないか。
森田・厳密には、70msは固定値ではなく演算の処理時間で変動する値である。搭載機器から時刻を送って確認する。

NHK・交換用の熱電池は準備していたのか。
森田・熱電池起動後に緊急停止する可能性は常にあるため、いつも用意している。ミューロケットの頃も同様。

NHK・19項目の修正だが、これは70秒前からの300項目の中のものか。
武内・X−70秒〜0秒の範囲外のものもある。
森田・自動点検開始前、約1350の監視項目うちの19項目である。

不明・特別点検チームの人数と、総計何日かけて点検したか。
武内・総勢25人。30日から開始している。

不明・25人はイプシロンチームに対してどれくらいになるか。
森田・イプシロンは専任が20人、併任が50人くらい。

不明・特別点検チームの構成は。
武内・ミューロケットやH-IIA/Bの経験者、ソフトウェア、電気系、射場などの現役関係者。部署が変わった等の理由でOBとなっていた人等も含む。

フリー大塚・ロール角2度について、何故2度なのか。絶対的な向きはどうなっているのか。
森田・ロール角2度の説明は難しいが、ロケットが発射台の位置に行く際、旋回の課程でロール角が変わる。発射台にセットされた時のランチャ方位角は110度。一方、飛行計画では初期のピッチ角・ヨー角、ロール角について、最初に定義・設定して打ち上げる。本来の初期ロール角の値は誤差ゼロになるが、整備塔の改修と飛行計画が同時期だったため一致していなかった。そのため112度に設定していた。なお、飛行には影響が無い。

フリー大塚・イプシロン2号機で、このずれは解消されるか。
森田・2号機は本来の110度になると思っている。

大塚・今回、また初期値を使うことは無いのか。
森田・閾値は決められたもの。1度から3度の間としてチェックしている。
(※この解答については後日となっている。なお、OBCは演算開始前もデータを送信しており、それがゼロ度となっている)


・内之浦会場
KYT・14日の打ち上げ予定に向けて、現在の可能性としてどうなっているか。また、2度の延期後だが自信など。
森田・最終点検が今日か明日には終わる。明日には点検結果が出る。天候の問題もあり、今は確率が言いにくい。
自信だが、多少の問題はあったが十分に力を出し切ってきている。さらに特別点検チームの力もあって数値では表せないような割り増しがあった。しっかり作業を進めて、成功をつかみ取りたい。
武内・経験者を集めてやるべきことをやってきた。

毎日新聞・前回はX−70秒からX−19秒まで監視が順調だったが、新たな2項目の追加項目はどこになるか。電流の監視が行われていなかったとのことだが、これはどこのタイミングになるか。
森田・自動シーケンス開始前の監視項目である。


なお、森田プロマネは2kgほど痩せたそうです。イプシロンチームの皆さん、お体には気をつけてください。
以上です。

No.1703 :イプシロンロケットのシーケンス点検 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年9月8日(日)15時02分 投稿者 柴田孔明

 先月27日に打ち上げが中止されたイプシロンロケットですが、新たな打ち上げ日設定に向けてシーケンス点検が9月8日に行われました。ランチャ旋回が10時35分頃で、X時刻は13時45分に設定されていました。
 今回は打ち上げ5秒前までを模擬した点検ですが、熱電池の起動を行わずに停止させています。
 (※打ち上げ後までを含むシーケンスを模擬した点検も、ロケットを出さない状態で既に実施されています)

No.1702 :記者説明時の様子 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月31日(土)05時38分 投稿者 柴田孔明

森田プロマネ(左)と、長田打上管制隊企画主任(右)

No.1701 :イプシロン試験機 打ち上げ中止の原因究明記者説明会
投稿日 2013年8月31日(土)05時35分 投稿者 柴田孔明

2013年8月30日16時より、「イプシロン試験機打ち上げ中止の原因究明状況記者説明会」が内之浦宇宙空間観測所で開催されました。

・[説明者]
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 森田泰弘
・[説明補助者]
宇宙航空研究開発機構 宇宙輸送ミッション本部 鹿児島宇宙センター 射場技術開発室長(打上管制隊企画主任) 長田弘幸

・森田プロジェクトマネージャより
 待望のイプシロンロケット打ち上げが発射直前で緊急停止したことで、全国の宇宙ファンのみなさん、内之浦の皆さん、現地に応援に来てくださった皆さん、JAXA放送等で全国から応援してくださった皆さん、報道陣の皆さん、いろいろな方にご迷惑をおかけして申し訳ないと思っています。MVロケットから7年が経過し、いろいろな方の応援でようやくここまでこられた。確実に成功するように今後もしっかり作業していきますので、今後も応援をお願いいたします。

・打ち上げ中止の経緯
 1.13時45分00秒の打ち上げに向け、打ち上げ時刻の70秒前に自動カウントダウンシーケンスを開始した。
 2.打ち上げ20秒前に地上装置(LCS)からの信号でロケットの搭載計算機(OBC)を起動。1秒後にOBCがロケットの姿勢計算を開始した。
  ※LCS:イプシロンロケットの点検・打上げを遠隔で操作するための地上設備であり、ロケットの発射点であるM(ミュー)台地から約2km離れた宮原地区のイプシロン管制センター内にある。いわゆるモバイル管制装置。
  ※OBC:イプシロン搭載のオンボードコンピュータ。
 3.LCSでは打ち上げ19秒前から姿勢データの監視を開始したが、ロール姿勢異常を検知して自動停止した。

・現時点で判明している原因は以下のとおりである。今後、さらに詳細な原因究明を行う。また、他の原因がないかを時間をかけて検証する。

 1.地上装置(LCS)による監視が、搭載計算機(OBC)の姿勢計算開始より約0.07秒早かったため、(地上装置が正しいデータを受け取る前に)姿勢異常と判定し、自動停止した。
 2.異常データが示された場合に即座に自動停止がかけられるように監視時間を厳しく設定していたことに加え、搭載計算機と地上装置の時間のずれに配慮できていなかったことが原因で、深く反省しているところである。
 3.8月20日と21日に実施したリハーサルでは、打上げ18秒前までのカウントダウンシーケンスを流してシステム全体の確認を実施したが、本件については以下の理由により検出することが出来なかった。
  ・8月20日のリハーサルでは、初めてロケットを搭載した状態でランチャ旋回を実施して、姿勢データを取得した。その結果、地上装置の監視設定値が適切ではないことが判明したため、自動停止項目から除外した。
  ・8月21日のリハーサルでは、監視設定値を適切に変更したが、天候不良によりランチャ旋回を行わず、カウントダウンシーケンスを模擬した。
 4.リハーサル終了後に、 取得データの評価により監視設定値の妥当性を確認したが、約0.07秒の微小な時刻ずれまでには思いが至らなかった。

・対応状況
 本事象への対策として、これが今回の原因と確定すれば、搭載計算機と地上装置の時間のずれを考慮した監視時間に変更する方向で検討を行う。
 併せて今回の事象を踏まえ、他の監視項目で似た事例がないかなど、徹底的に再点検を行い、次回の打上げに向けて万全を期す予定である。
 既に2回目の延期のため、単に直接原因の対策では済まされず、JAXAの総力をあげて総点検を行い、より成功確率をあげていく。総点検の結果をふまえて、あらためて対策を行い、打ち上げ作業の再開を行うため、今日の所は打ち上げ時期は決められない。


・質疑応答
KTS・打ち上げ時期は決められないとのことだが、ウインドウ(9月30日まで)のどこになりそうか。文部科学大臣は9月の早い時期に打ち上げたいと言っていたが。
森田・物凄く難しい。総点検の方法や実施、結果の反映のため、どのくらいになるかが読めない。大事な初号機なので、絶対成功が目的であり、時期を足枷にしない。

読売新聞・0.07秒のずれとは、どういった原因なのか。管制室までの距離が長くなったためなのか。
森田・地上のコンピュータから搭載コンピュータに起動の命令を出すが、そこに伝達するまでに時間がかかったと考えている。距離も原因としてあり得るが、演算処理の遅れもあるため、原因は一つではない。

共同通信・20日のリハーサルでは適切ではなかったというが、その時点で0.07秒の問題が出ていなかったのか。
森田・その時点で識別できていなかったが、その後の解析でずれが起こっていたのは確認している。はっきり言うと、見落としていたことになる。27日の夜、発射の自動シーケンス停止後の解析で気づいた。

共同通信・打ち上げ時期は、ウインドウ(9月30日)を超える可能性はあるか。超えた場合はどうなるか。
森田・再点検の結果による。ウインドウ内に上げる努力をしたい。期限を過ぎた場合、新たなウインドウの設定をすることになる。

産経新聞・0.07秒のずれだが、これに許された時間はどれくらいか。これまでの例はどうだったか。
森田・もともと監視を厳しくして、時間差が無いものとしていた。半分でもいいというものではなく、十分に小さいものでなくてはならなかった。この判定は初めてなので前例は無い。

共同通信・地上の機器は最新だったと聞いているが、搭載機器も最新も最新のものだったのか。
森田・ジャイロやコンピュータなどは、H-IIA用の機器をイプシロン用にマイナーチェンジしたもので新しいものである。また、この転用が問題の原因ではない。

産経新聞・再リハーサルは行うか。
森田・それも含めて検討中です。

南日本放送・20日の段階で、既にずれが生じていたのか。
森田・その通りでずれが起こっていた。必ず起こる、再現性がある。

南日本新聞・総点検のプロジェクトチームのメンバーはどうなるか。
長田・我々打ち上げ隊も関係者なので、打ち上げに関係していないJAXAの各部門から集めて、違う視点でやってもらう。既に有識者のレビューを始めているが、それ以外の方でこれからJAXA内部の他の部署で行うことになる。

南日本新聞・現時点で他の問題・不具合があるか。
森田・現時点では無い。

KYT・0.07秒のずれだが、19秒前に行うのは、地上側(LSC)が早かったのか。
森田・そうである。機体側のデータがまだ来ていない状態である。

KYT・20日の監視項目は緩かったのか。
森田・整備塔からランチャを旋回させたが、角度の初期値が、搭載のものと2度ずれていた。そのため閾値を変更した。

KYT・考慮した時間にするのは、監視を緩めるということか。
森田・緩めるのではなく、監視の開始タイミングを変える。

南日本新聞・20日と21日のリハーサルが想定通りに行われていたなら気づいていたか。
森田・大変悔いが残るが、雨が降らずにやれていれば検出できた。

南日本新聞・21日のあとにもう一回リハーサルをやることは考えなかったのか。
森田・それをやると打ち上げ日が遅れる。このチェック項目は単純なので、あとでデータを人がチェックすれば良しとしていた。

毎日新聞・0.07秒のずれが生じた理由は。
森田・主要なファクターとして、搭載機器の伝送経路にあるコンピュータの処理時間である。LCSからOBCに命令が届くのが0.07秒遅れた。

鹿児島テレビ・この0.07秒の遅延は必ず生じるのか。
森田・その通り。

鹿児島テレビ・この0.07秒だが、伝送時間を考慮していなかったということか。
森田・打ち上げ20秒前にLCSから起動信号を送り、19秒前にOBCからLCSに姿勢データを送るのだが、OBCが打ち上げ19秒前としていた時刻は、LCSより0.07秒遅かったことになる。
これはランチャを旋回しないと判明しなかった。

鹿児島テレビ・資料の「思い至らなかった」という表現について、どういう意味か。
森田・気づける人がいれば気づいたという意味である。

西日本・20日に自動停止の項目から除外していなければ気づけたのか。
森田・適切でない値のため、正しく監視できないとして外していた。この時点で正しい項目であったなら、気づいていた。

読売新聞・これは伝送ロスか、それとも演算処理の問題か。
森田・物理的には両方ゼロではないが、今回の0.07秒は伝送ロスではなく、主要なファクターとして伝送路にあるコンピュータの演算遅れと考える。

・東京会場
時事通信・0.07秒の遅れでは、仕様で盛り込んでいないのか。他の部分では起こらないのか。
森田・仕様として抜けていたのが正直なところ。設計には誤りが無いが、監視のタイミングの設定について遅れがある点が抜けていた。

時事通信・点検項目を20日のリハーサルでは外し、21日には悪天候で旋回しなかったということで、点検項目の漏れをチェックする仕組みはなかったのか。
森田・これは漏れではないと考える。ログの分析によりリハーサルを行った時と同様に確認ができると考えていた。確認の観点として不十分だった。

フリー大塚・0.07秒の遅れは片道か、往復のものか。
森田・片道のみで0.07秒である。OBCの起動以降はデータにタイムスタンプがつく。

フリー大塚・どんな機器が遅れたのか。
森田・主要な要因としてROSEを経由した際に遅れた。伝送経路の細かい要素の影響は小さい。

フリー大塚・20日のリハーサルで、監視設定値が適切でないのは、いつ気づいたのか。
森田・リハーサルの直前であった。もともとはゼロを中心としてプラスマイナス1度だが、正しくは2度を中心としてプラスマイナス1度、つまり2度から3度が正しい。

フリー大塚・27日にロール軸の閾値を超えたとあるが、0.07秒の遅れとの関係はどういったものか。ピッチとロールの値はゼロなので問題が出なかったということか。
森田・発射の瞬間の監視設定値は1度から3度に設定されていた。旋回後は2度になっていて、演算開始後にこれが範囲内だとして合格するのが正しいプロセスである。これが0.07遅れたため、演算前のゼロが来てファールとなった。ピッチとロールはもともとゼロで、遅れがあっても問題とならなかった。

日経BP・18秒前までしかリハーサルができない原因として熱電池の問題があるが、これのコストは。リハーサルでこれを使った場合は。
森田・コストは今データが無い。ただし熱電池の問題はコストではなく、準備期間である。火薬で電力を発生させるもので1回しか使えず、取り替えるのに最低でも2日かかる。これはMVロケットの頃から同じ。

日経BP・2日で交換できるならやった方がいいのではないか。
森田・熱電池は1回で使えなくなるため、実物での試験にはならない。

日経BP・熱電池を起動させれば、その他の部分の稼働は確認できるのではないか。
森田・例えばロール角の試験はランチャの旋回が必要だが、熱電池についてはランチャを出さなくてもできる。熱電池はロケットの組み立て工程でも試験ができる。いつ試験しても同じなので、なるべく早い時期に試験にするべきとの観点から工場で行っている。

NHK・リハーサルでトラブルがあったが、この遅れを見落とした原因は。他の問題の影響か。
森田・他のトラブルがあって見落としていたのではなく、監視項目で遅れを考慮していなかったため。

NHK・この数値を見る人はいなかったのか。
森田・人が見るよりも、自動監視のプロセスが通るか通らないかでやってきた。ロール角が0度でもOKという試験をしてしまったため、時間差が問題にならなかった。

NHK・0.07秒の遅れについて、通信の時間を想定していなかったのか、想像以上に時間がかかったのか。
森田・前者です。

東京新聞・自動停止の原因はROSEの遅延を考慮していなかったのか。
森田・ROSEだけでなく、OBCの中でも遅延があり、ROSEの有無にかかわらず今回の事象が起こったと思われる。

東京新聞・MVではどうだったのか。
森田・MVでは自動判定が無く、人がやっていた。

東京新聞・遅れがあったまま発射したらどうなっていたか。
森田・難しいが、仮に発射しても飛行自体には影響は無かったであろうと考えている。

東京新聞・延期に伴い費用の増加について。
長田・今正確な金額は出ないが、トラブルシュートの人員や、新たな打ち上げ日設定により陸上や海上が要因のお金がかかり、当初の27日の時よりも費用が増えることになる。

読売新聞・これから遅れを考慮した監視時間になる訳だが、ハードでは無理なのでソフトで対策するという意味なのか。
森田・これら監視設定値はもともとソフトで設定するものである。

読売新聞・イプシロンで新たに開発した機能に問題が生じたということか。
森田・人の思いつかない部分を指摘するという点で十分に機能した。こういった件を乗り越えていかないと、しっかりしたものができない。

読売新聞・今後、2号機以降への影響はあるか。
森田・コンピュータには問題は無い。監視システムのソフトの問題である。2号機のハード変更は必要ない。

朝日新聞・LCSにデータが戻るときの遅延はあるか。
森田・タイムスタンプがデータに付くのでそれは無い。

朝日新聞・打ち上げ中止により交換が必要なものはあるか。
森田・検討を進めているが、ただちに交換するものは無い。時間が経過すると再度点検が必要な物があり得るので洗い出しをしている。

朝日新聞・中止により衛星への影響はあったか。
森田・イプシロンは発射の直前まで清浄度の高い空気を送れるので問題は無い。

共同通信・0.07秒の問題だけに限定すると対策は難しくないのか。
森田・その通りで、多少の手直しで済む。対策と検証は1日か2日で済む。しかし2度目の延期なので、他の事象の確認を行う時間が必要。

共同通信・再点検では機体を分解して点検するのか。
森田・リハーサルで今回の事象以外を既に確認しているので、リハーサルで抜けている項目が無いか、Xマイナス18秒以降で問題が無いかを点検する。ロケットを分解するようなことは無い。

NHK・いくつかのコンピュータの遅れで0.07秒が送れたとのことだが、具体的にどこの部分で遅れたのか。
森田・大きな遅れはROSEの中の通過と、OBCの入り口で命令を受ける部分である。

NHK・ROSEに問題があったということか。
森田・そうではない。ROSEの通過とOBCの受けで遅れが発生するのはもともと避けられない。

NHK・当然ある遅延を事前にわからなかったのか。
森田・自動監視において、遅れを反映できていなかったのは事実である。

日本放送・打ち上げ前の会見で自信の大きさについて不安が小さいとおっしゃっていたが、小さい不安について、これはリハーサルでランチャ旋回ができなかったことか。
森田・今回のリハーサルで見過ごされた部分に対策を行い、さらに視野の広い特別点検をすることで、イプシロンに対する自信は揺るがない。

日本放送・打ち上げ中止後の見通しと、今の思いとの違い。
森田・打ち上げ中止後は、現象の特定もできるので、すぐ打てるだろうと思っていた。ただし、ここに事態が至ると不具合を直せばいいというものではなく、直接原因の対策だけでなく、隠れたものがないか第三者も含めて冷静にしっかりやっていかねばならない。

日本放送・見通しが甘かったことの認識はあるか。
森田・はやる気持ちを抑えきれなかったことはあるが、この事象に対策するだけでなく、しっかり仕切り直しをして、あらゆる事をやり尽くして打ち上げに臨むことがいちばんいい事となる。

フリー秋山・今後の対策として信号が届いてから監視するのか。
森田・その通り。届くタイミングで監視が開始するようにする。

フリー秋山・別の理由で問題が発生して全くデータが届かない場合、また停止するのか。
森田・監視開始の時刻を変えるだけなので、他の障害が発生するものではない。

ライター喜多・チームの皆さんは凹んでいないか。リーダーとしてモチベーションの維持はどうするか。
森田・8月27日に向けて緊張しつつ休み無くやってきたが、総点検で精神的には厳しい。しかしもともとの目標は、イプシロンの打ち上げ成功である。あと何日かかるか判らないが、7年間の苦労に比べれば頑張りきれるのではないかと考え、しっかりリードしていきたい。

・内之浦会場
産経新聞・慎重に行うとの趣旨だが、各方面の準備があるので、最速でどのくらいの期間がかかるかお聞きしたい。
森田・現時点では特別点検が始まる前であり難しい。しかし時間を無制限にかける訳ではない。

共同通信・ロケットでOBCの位置はどこか。
森田・イプシロンの計器部(3段目)だが、初号機はオプション形態で4段目があるので、その一部にある。姿勢センサと同じ位置である。

共同通信・有識者の数はどれくらいになるか。
長田・これからチームリーダーが人選して決めることになる。十数人規模になると考える。

以上です。

No.1700 :打ち上げの見通しについて ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月28日(水)16時44分 投稿者 柴田孔明

イプシロンロケットですが、記者会見で出ていた最短の(8月中)の打ち上げ日再設定は難しくなったとJAXAから発表されています。写真は27日13時45分の打ち上げ直前だったイプシロンロケット。

No.1699 :27日イプシロン初号機打ち上げ中止、森田プロマネ記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月27日(火)17時19分 投稿者 松浦晋也

記者会見第二部 森田プロマネ記者会見です。

森田
期待していた打ち上げが延期になってしまい、しかも絶好の打ち上げ日和。私たちも残念だったのですがご迷惑おかけしました。すこししっかり時間をかけて、原因究明と対策を行いたいと考えています。

朝日新聞 自動停止は人工知能が停止したのか。状況をもう少し具体的に知りたい。
森田 閾値との比較判定でROSEとは関係ない。ロケットポストブーストステージ(PBS)にはロケットの三軸の姿勢角を知るセンサー(ジャイロ)が搭載されている。自動点検を行う装置に事前に設定した値に対して、ロール軸周りの出力が閾値を超えたため自動停止した。
 正確にはジャイロの出力に基づいて搭載計算機が姿勢データを演算して、地上の計算機に伝える時に異常が起きた。

NHK 自律点検とは関係ないのか。
森田 発射直前は閾値に入っているかどうか。自律点検は機体組立のもっと上流で使うもの。今回は関係ない。

NHK 事前記者会見で話していた絶対確実の自信はどうなったか。
森田 変わらない。正しいところでしっかり止めたということなので、見つけるべき時に見つけたということだと考えている。

朝日新聞 今回のは想定の範囲内だったのか。
森田 なかなか難しいが、搭載計算機と地上の計算機の間のやりとりに想定外のことがあったのではないかと考えていない。機体側には全く異常がないと考えている。

不明 ロケットは傾いていなかったのか。センサーに異常はなかったのか。
森田 そのように考えている。

共同通信 ロケット全体の姿勢を制御するためのセンサーか。
森田 そうだ。

共同通信 次の打ち上げ時期は。
森田 念には念を入れて、対策をほどこし、対策を検証して万全の状態で打ち上げたい。少し時間をいただきたい。ウインドウ最後の9月30日までかかるとは考えていない。

時事通信 計算機のハードではなくソフトの異常・ミスか。
森田 現状では両方考えている。

毎日新聞 地上側の計算機が古くてイプシロンとの整合性がとれなかったということか。
森田 それは違う。

読売新聞 地上の計算機は何をするものか。やりとりに齟齬があるとはどういうことか。機体の姿勢が異常がなかったから、
森田 地上計算機は搭載計算機の出力は閾値と比較するだけということ。やりとりの齟齬は現在究明中。センサー出力は別途テレメーターで監視しており正常であることが確認できている。

NHK鹿児島 資料によるとX-22秒でフライド準備モードに入るが、それで異常が見つかったのか。
森田 そうではなく計算機が計算をX-20秒に計算を始める。その結果が出て-19秒で停止した。

東京会場にマイク移る
共同通信 AIによる事前点検と今回のトラブルは関係ないということでいいのか。閾値の設定ミスという可能性はないか。-19秒までのやりとりはどうだったのか。
森田 今回は人工知能と関係ない。人為的ミスも含めて原因究明中。-20秒で計算機が稼働するところまでは異常がない。実は事前のリハーサルは、X-15秒で使い捨ての熱電池を起動する関係上、X-18秒までしか試験していなかった。まさにぎりぎりのところでトラブルが起きたわけだ。

日経新聞 スケジュール見通しについて。
森田 原因究明に半日、特定に半日、検証に1日。少なくとも二日間は時間をいただきたいと考える。現時点では最短3日後に打ち上げるということもありうる。

NVS 衛星のほうの健全性。熱電池起動までいったのか。
森田 衛星には問題なし。熱電池はいったん起動すると使えなくなる。稼働はX-15秒。今回は起動していない。

筑波会場から
読売新聞 どういうやりとりをしたかディティールを知りたい。
森田 判断はすべて機械がやっている。管制室の中の人間には、止まったという表示が出ることで、我々は停止を知るわけだ。そこから急遽検討を始めた。

共同通信 姿勢異常で自動停止ということだが、いつ頃わかったのか。
森田 すぐにわかった。姿勢角確認というディスプレイ項目に異常が出た。

東京新聞 管制システムを見直したこととトラブルの関係は。リハーサルは打ち上げ前何秒までやったのか。初号機ならではトラブルはあるか。
森田 今後の原因究明にによる。リハーサルはX-18秒までやっている。初号機は絶対確実安全に打ち上げるためにきびしめに監視項目を設定している。限りなく小さい懸念でも止めるという姿勢にならざるを得ない。

毎日新聞 今回は格段深刻なものではないと考えているのか。
森田 立場上そうはいえないが、すぐに対策を講じることができるのではないかと考える。

朝日新聞 具体的に角度でどれだけの異常が出たのか。
森田 閾値の設定はプラスマイナス1度。それがもう1度ほど余計に出力した。

朝日新聞 新規開発のシステムのトラブルといっていいか。
森田 そう考えていい。

以上です。

No.1698 :27日午後4時からのイプシロン打ち上げ中止を受けての記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月27日(火)17時08分 投稿者 松浦晋也

 27日午後4時からのイプシロン打ち上げ中止を受けての記者会見です。
です
出席者
奥村直樹JAXA理事長
山本一太 内閣府特命担当大臣(宇宙担当)
福井照 文部科学省副大臣
葛西敬之 宇宙政策委員会委員長

奥村理事長から
 JAXAの責任者として計画通り発射させるに至らなかったことについて、期待に添うことができず申し訳ありませんでした。今後原因究明を経て国民の期待に添えるように努力したい。

 発表リリース読み上げ
 打ち上げ19秒前に、姿勢異常を検知して

山本大臣
 JAXA設立以来内之浦に視察に来た大臣は初めてであり、安倍内閣の宇宙への思いを示すべく来たが残念である。宇宙基本計画にある自律性の確保にイプシロンロケットは必須である。なるべく早く打ち上げてもらいたい。

福井副大臣
 原因究明を確実に行うことが重要。あらためて十分な対策を講じた上で、一日も早いロケットの打ち上げに向けて努力していきたい。

葛西委員長
 宇宙政策の基本は自律性の確保と利用の拡大。その核の一つがイプシロン。きちんと原因を究明して打ち上げを成功させてほしい。

以後質疑応答

NHK 姿勢異常検知とは?
奥村 姿勢異常を示すセンサーが姿勢異常だという出力をした。設定値の問題なのか機器の異常なのかいくつか可能性が考えられる。

朝日新聞 近い将来にASNARO2を打ち上げる構想もある山本だ
山本 イプシロンを我が国の基幹ロケットと位置づけたいという政府の方針に変わりはない。できるだけ早く打ち上げを成功させてもらいたい。

東京新聞 次の打ち上げの次期はいつになるか。
奥村 原因究明の後に設定することになる。大臣ができるだけ早くとおっしゃっているとおり、早期の打ち上げに努めたい。

東京新聞 では2日後ということはないのか。
奥村 原因究明が第一である。


読売新聞 今の気持ちを聞きたい。
奥村 私も国民の一人として期待していたので、率直に厳しい気持ちである。原因がわからないということはなさそうなので、原因を究明して早期に打ち上げできると信じている。

読売新聞 体制の見直しは考えているか。
奥村 原因によっては出てくるかも。しかしなによりも原因究明が第一。

東京会場に質問が移る。
日経新聞 他ロケットに影響は出るか。
奥村 原因によってはあり得るが、まずは原因究明だ。、これに全力を挙げたい。

筑波会場、質問なし。

産経新聞 山本大臣はH-IIB打ち上げ時に日本のロケットは時刻に正確と言っていたが、コメントを。
山本 残念。これによって日本の宇宙政策が後退させることはない。日程が合えば再打ち上げにも来たい。

NVS ちゃんと止めたという考え方もあるが、どう評価するか
奥村 そうも考えられるがまずは原因究明である。
山本 奥村理事長が言うとおりである。

以上です。

No.1697 :イプシロン、姿を現す ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月27日(火)11時19分 投稿者 松浦晋也

 午前10時45分から、イプシロンロケットを機体組み立て棟から出す作業が20分ほどかけて実施されました。

No.1696 :性能計算書 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月27日(火)07時51分 投稿者 松浦晋也

 いつもの性能計算書が今朝出ました。

 今回の元ネタ
http://www.nobori-sake.com/shouhin/syoutyuu/kirishimayokokawa/shinmoe.html

 細かいところまで効いた小技をお楽しみあれ。

No.1695 :イプシロン打ち上げ 26日午後1時からの記者会見 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月26日(月)14時15分 投稿者 松浦晋也

明日のイプシロン打ち上げに向けての午後1時からの記者会見の様子です。


出席者は、森田泰弘イプシロンプロマネと、澤井秀次郎SPRINT-Aプロマネ

まず森田プロマネから。
 早朝からの雷で作業を一時中断したが、現在再開した。準備作業は問題なく進行中。5月末からの準備作業も大手がかかった。明日気持ちよく打てるように準備作業をしていきたい。
 イプシロンはM-Vに負けない後継機というコンセプト。昨日は電気系の試験を終えた。今日は火工品の試験を終える予定。
 モバイル管制、8人で行うが、これは人数を増強している。運用時は4名、最大5名で管制を実施する。

 明日の打ち上げ制約条件。イプシロンはM-Vより雨に強い。毎時8mmの雨には耐えられる。土砂降りでなければ大丈夫。明日は早朝6時にGO-NOGOの最終判断を行う。

 天気。どうやら打ち上げ時の天気は良さそう。せっかくの初号機の打ち上げなので好天を祈りつつ作業したい。7年間つらいこともあったが、我々は全力を出し切った。明日は堂々胸を張って打ち上げに臨みたい。

澤井 衛星準備は良好。打ち上げ後が本番である。2ヶ月前に搬入し、1ヶ月前にロケット側に衛星を引き渡し。

 打ち上げ前9時間15分、衛星電源オン、9時間前 衛星動作チェック、3時間前ランチャー旋回、2時間40分前から打ち上げモード設定。打ち上げ後数日間分の動作シーケンスを仕込む。打ち上げ前15分で電源を内部に切り替え。


ここから質疑応答です。

朝日新聞 森田プロマネに、イプシロンの誘導システムについてM-Vとの違いを教えてほしい。
森田 M-Vは電波誘導。地上レーダーで軌道を監視し、補正量を計算して送信。イプシロンは搭載機器による慣性誘導。

NHK イプシロンには前例にとらわれないイトカワ精神を引き継いでいるというが具体的にはどんなものか。
森田 ペンシルの精神は、世界に追いつくではなく、どんど世界の先に行けという精神。イプシロンはモバイル管制をはじめとした世界の先をいく仕組みを実現した。

NHK 明日打てなかった場合は何日空くのか。
森田 いろいろなケースがあるのですぐにはいえない。

鹿児島放送 明日への意気込みをもう一度。
森田 M-V廃止から7年。固体ロケット存亡の危機もあったが、開発チーム一丸でがんばってよかったなと思う。7年間の研究開発の成果が明日試される。全力は出し切ったと思うので、自信を持って打ち上げに臨みたい。

共同通信 7年間の苦労を具体的に知りたい。
森田 M-Vより良いロケットを作るのは大変なことだった。M-V廃止はとてもくやしかったが、秋葉先生に「過去にとらわれずいいロケットを作って未来を開け」といわれた。M-Vより良いロケットを作るというのはどういうことかで3年は暗中模索だった。「ロケットを打ち上げる仕組みを変えることが大切なんだ」と気がついて、後は青春一直線で進むことができた。考えるべきはロケットの性能ではなく打ち上げシステムの改革だと気がつくのが大変だった。

産経新聞 澤井プロマネに。イプシロンの特徴であるレイトアクセスはSPRINT-Aで、どう効いているか。
澤井 今回は4時間前まで衛星にアクセスする。搭載望遠鏡センサーは真空にしておかないと劣化するので真空ポンプをつないで引き続ける。レイトアクセスができない場合は、衛星に真空ポンプを積まなくてはいけない。その分衛星を簡素に軽く作ることができる。

産経新聞 強いて聞くが不安はあるか。
森田 初号機なので何重にもすべての作業をチェックしつつ進めているしM-Vでは1回だったリハーサルも2回やった。不安に比べると自信は非常に大きい。

朝日新聞 固体ロケットの性能を追求すICBMに近づく。そのような懸念についてコメントをほしい。
森田 宇宙科学の進歩と技術の進歩という方向で固体ロケットは進展してきた。これからの固体ロケットは宇宙科学だけではなく、宇宙利用全般のためのロケットだとして開発を進めてきた。


質問が東京会場に移る
NHK 試験機に衛星を載せる印象は。不安はないか。
澤井 これだけの人が集まってくれる晴れ舞台に我々も参加できるのはうれしい。絶対に成功させるべくロケットは慎重にチェックしつつ進めているが、我々も同様だ。注目が集まるということでは、プラチナチケットを手に入れた気分だ。

朝日新聞 メーカーの人々についてどう感じているか。
森田 もともと固体ロケットはメーカーと二人三脚で進めてきた。JAXAもメーカーも分け隔てなく、構造、推進、制御などの分野別で研究開発を推進してきた。苦楽を共にした仲間だ。
澤井 森田さんと同様で、メーカーと一心同体でやってきたつもりでいる。目標とするのはあくまでSPRINT-Aの成功。「契約上これを達成すれば私の責任ではありません」というやりかたもあるが、全員が「成功には何をすればいいか」と考えでやってきた。私がだめなことをやれば、私が罵倒されるという、そういう環境です。

朝日新聞 今後国際協力はどんなものがありうるのか。
澤井 SPRINT-Aは極端紫外線で惑星を観測する。海外の観測装置と組み合わせて観測することで一層成果があがる。
森田 ロケットも衛星と同じ。小型低コスト高頻度が、今後の宇宙開発利用を活性化する鍵。小型衛星はこれからのインフラで、打ち上げロケットが未整備。今はピギーバックで窮屈な環境に耐えて打ち上げている。イプシロンと小型衛星を一体で提供することでより一層市場を広げていけるようにしたい。

日本放送 信号中継装置の配線に誤りがあって打ち上げが遅れたが、それはどの程度重大なトラブルだったのか。
森田 ロケットとモバイル管制装置をつなぐ配線の中に誤りがあった。製造図面に誤りがあった。こういったことは歴史的に見ても起こりうることであり、打ち上げ前に発見することが重要。そのために、エンドtoエンドの試験を実施して始めてそこで見つけることができた。他の試験では見つけることができない性質のトラブルであり、エンドtoエンドの試験を試験日程に組み込んでいたというところが重要である。

筑波会場
nvs 桜島噴火の影響はあるのか。
森田 桜島の灰程度なら打ち上げに問題はない。

内之浦に質問もどる。
不明 イプシロンの小型低コスト高頻度に思い至った理由は。
森田 M-Vが廃止になった時、頭をまっさらにして今後のロケットに必要なことは何かと考えた結果。世界中はアポロ時代と変わらぬやり方で打ち上げを行っている。これからの50年、こんな古くさいことをやっていてはさきにすすめないと気がついた。管制室の人数は一桁減らすことができる。
 「これから50年の宇宙開発をイプシロンから始めよう」 これが我々のスローガンだ。

 イプシロンは始まりに過ぎない。これからが我々の出発点だ。次は、ロケットの知能を増して地上が支援している安全システムをオンボードで載せる。そうすれば地上レーダーが不要になり、テレビ中継車一台ぐらいの装備で打ち上げを行うことができる。

東京新聞 ベトナムからNECが受注した地球観測衛星をイプシロンで打ち上げることはどの程度進んでいるのか。
森田 インタフェースなど検討しているが、まだ上がっていないので、検討作業は

読売新聞 日本のロケット戦略におけるイプシロンの意味は。需要はどうやって喚起していくのか。
森田 小型衛星にはより高頻度でタイミング良く打てることが重要。そのような未来への展望がイプシロンで開けた。イプシロンを低コスト化。2017年ぐらいにデビューさせたい。より高性能低コストのイプシロンを第二段階では実現したい。

朝日新聞 SPRINT-Aの名前はどうするのか。
澤井 宇宙研の伝統なので、愛称を打ち上げ後につける。開発チームの思いを反映

森田 最後に・固体ロケット伝統の性能計算書ですが、準備が追いついていません。明日の記者会見には出せるようにします。

以上です。

No.1694 :【宣伝】イプシロンロケット打ち上げ予定日前日のイベントのご案内 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月20日(火)22時01分 投稿者 ロケットまつり事務局・斉藤

■打ち上げ予定日前日のイベントのご案内

「ロケットまつり in 肝付町・内之浦〜ロケット打ち上げを支えてきた人たち〜」

肝付町・内之浦にロケット発射施設が建設されたのは1962年、今から50年以上昔のことになります。1970年の「おおすみ」打ち上げ以降、年1機の割合で科学衛星が内之浦から宇宙へと旅立っていましたが、M-Vロケットの廃止により、内之浦からの衛星打ち上げは7年もの間、途絶えました。
その衛星打ち上げが新型のイプシロンロケットと共に復活します。
最初期より内之浦を知る出演者たちが、糸川英夫氏と内之浦、初めて打ち上げられたロケット、ラムダロケットがおおすみを宇宙につれていった日、はやぶさが打ち上げられた日、などなど、さまざまな当地とロケットとの関わりを存分にパネルディスカッション・トークライブ形式で語る「ロケットと一緒の日々」。
ぜひご来場ください。

【出演】牧工(写真家/元南日本新聞通信員)、橋本雅子(元内之浦町婦人会長)、中部博雄(元宇宙科学研究所所員)、林紀幸(ロケット専門家・元宇宙科学研究所ロケット班長)
【聞き手】松浦晋也(ノンフィクション・ライター)、浅利義遠(漫画家)、今村勇輔(編集者)

日程:2013年8月26日(月)
時間:17:00受付開始(入場は受付後順次となります)/18:00開演〜20:00ごろ終演
場所:内之浦銀河アリーナ 小ホール(鹿児島県肝属郡肝付町南方289番地)
料金:無料

お問い合わせ rocketfes@gmail.com(ロケットまつり事務局)
WEB・Twitter http://rocketfes.com/ http://twitter.com/rocketfes

ロケットまつりとは:2003年、宇宙作家クラブメンバーを中心にスタートした宇宙開発やロケットに関するイベントです。ノンフィクションライターの松浦晋也、漫画家のあさりよしとお、作家の笹本祐一らが聞き手となり、宇宙や宇宙開発に関する人物をゲストにトークライブを都内などで不定期に開催。ペンシルロケットから開発を知る技術者、
はやぶさ運用チーム、民間開発者などをお招きして、2013年、60回そして10周年を迎えます(次回は東京都新宿区にて10/14ゲスト川口淳一郎氏)。
今回、トークライブをはじめる出発点となった、ロケット打ち上げの地、肝付町・内之浦で開催させていただきます。

※イプシロンロケットの打ち上げ日変更の際は開催を延期することがあります。最新情報はhttp://rocketfes.com/をご覧ください。
※イベント日変更にともなったスケジュールの都合上にて笹本祐一の出演が難しくなりましたことお詫びいたします(本人も大変残念がっております)。

No.1693 :イプシロン/SPRINT-A打ち上げ成功祈願の千羽鶴贈呈式 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月20日(火)21時55分 投稿者 柴田孔明

肝付町地域女性団体連絡協議会と旧内之浦町婦人会から成功を祈願して千羽鶴が贈呈されました。これは衛星搭載のロケット打ち上げ前や、小惑星探査機「はやぶさ」帰還の際などにも行われています。

No.1692 :内之浦宇宙空間観測所内から見たイプシロン ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月20日(火)21時45分 投稿者 柴田孔明

約500mの場所から見たイプシロン。この方向には大きな文字などはなく、白い機体に見えます。

No.1691 :宮原方面から見たイプシロンロケット ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月20日(火)21時42分 投稿者 柴田孔明

宮原の新報道席から。側面にEPSILONの文字が確認できます。
射点から約2.8kmで、一般席とほぼ同じ距離です。

No.1690 :イプシロンロケット試験機公開と記者説明会 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月20日(火)21時39分 投稿者 柴田孔明

2013年8月20日、内之浦宇宙空間観測所でイプシロンロケット試験機リハーサル時機体公開と、記者説明会が行われました。
(※敬称を一部略させていただきます)

・登壇者
JAXA宇宙輸送ミッション本部 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ
森田 泰弘

・ミッション
 惑星分光観測衛星(SPRINT−A)を所定の軌道に投入するとともに、イプシロンロケット(オプション形態)の飛行実証を行い、イプシロンロケット打上システムの開発の妥当性を検証する。

・打ち上げ予定日と打ち上げ時刻
 打ち上げ予定日:平成25年8月27日(火)
 打ち上げ予定時間帯:13時45分〜14時30分 (8月25日に発表予定)
 打ち上げ予備期間:平成25年8月28日〜平成25年9月30日
 (※打ち上げを13時45分と仮定した場合、ランチャ旋回は10時45分頃になる。)
 内之浦からの(衛星搭載)ロケットの打ち上げは7年ぶり。400回目の節目の打ち上げとなる。

・打ち上げが間近に迫り、本日はリハーサルで発射を模擬して試験を行い、ほぼ一通り終えたところ。打ち上げに向けて準備が整いつつある。本日は天候の問題もあってランチャの格納までできて、いいリハーサルだった。5月の始めから始まった長きにわたるオペレーションだが、ようやくここまで来た。

・質疑応答
・内之浦会場
鹿児島テレビ・一週間後の打ち上げだが、これまでを振り返って印象に残ったところや苦労したところ。また、モバイル管制について。打ち上げに向けた意気込みをお聞きしたい。
森田・苦労は忘れてしまった気がするが、MVを卒業していろいろあって、固体ロケットの存亡の危機ではあったが、一致団結してようやくここまで来られた。終わってみたら最高だったと言いたい。
 これからのロケットは性能だけでなく、仕組みをシンプルにして効率的にし、高頻度に打ち上げていくことが必要。自律点検はこれまでの常識を覆す革新技術。しかし次は世界の標準になる技術。さらにその次はもっとシンプルにしていきたい。例えばロケット基地のアンテナを減らして、テレビ中継車のようなもので打ち上げを可能にするなど。宇宙ロケットの世界で、世界をリードしていく姿勢を貫きたい。
 意気込みとしては、7年間の研究開発の成果を披露することができる。固体ロケットのつらい時期を乗り越えて来られたのは全国の宇宙ファンの応援、そして内之浦の人達の応援があった。関係者だけでなく、いろいろな人の夢をのせてイプシロンは飛んでいく。打ち上げが確実に成功するように、しっかり準備をしていきたい。

産経新聞・イプシロンの機体の自律点検だが、これは既に機能しているのか。既存のロケットの各段を使っているが、それによる点検や試験の省略はあるか。
森田・自律点検は人工知能を使っているが、まだ成人ではなく幼稚園や小学生レベルのものである。2号機、3号機で知能を増していくことになる。現在は成長過程であり最終的な姿ではない。
 点検は省略している訳ではなく、MVロケットのものは久しぶりであり、点検はしっかりやっている。

・東京会場
NHK・打ち上げ予定時刻の13時45分〜14時30分の間でいつでも打てるのか。
森田・最終的な時間は25日に発表予定。ウインドウとしては前の方がいい。この時間帯であれば、ほぼどこでも打てる。

東京新聞・イプシロン2号機は搭載衛星が決まっているが、3号機はどうなっているのか。経済産業省の衛星「ASNARO(あすなろ)」を上げる予定はあるか。
森田・3号機についてはこれからの選定になる。ASNARO−2はイプシロンで上げたいので調整をしているところ。もともと宇宙基本計画では5年で3機の予定である。我々の狙いとしては2段階の開発で、低コスト高性能化イプシロンの研究を進めており、近いうちに開発に移行して2017年頃にデビューさせたい。2号機が高性能低コストの一部を反映している。

・内之浦会場
NHK・今回、新型イプシロンが内之浦で上がる意義。
森田・情緒的に言うと内之浦の皆さんの協力があって、育てて打ってきた固体ロケットの聖地。イプシロンの目指す大きなビジョンは、打ち上げシステムの革新。簡単にシンプルに打っていきたい。少人数の短期間で上げられるようになる。

フリーいのうえ・MVから時間が経過したことにより、部品調達などで苦労したところなど。コストなど。
森田・MVロケットの開発は15年以上も前のため、代替部品の選定と試験があった。これは悪いことではなく、技術の進歩がめざましくてより高性能になった。
 打ち上げシステムの改革で、次に必要なのは製造プロセスの改革。ロケットの値段を下げるためには、新しい設計コンセプトの導入が必要であり、そういったものがイプシロンに仕込まれている。例えば構造物の一体成形がある。これまでボルトとナットで繋いでいると製造・組み立てが大変だったが、一体化でそれが簡単になりコストも下がる。例えばノーズフェアリングはもともと円錐と円筒が別に作っていたが、今回それを一体化した。今後もモジュール化、ユニット化を進めていく。

以上です。

No.1689 :種子島宇宙センター・打ち上げ成功記者会見第二部 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月4日(日)19時13分 投稿者 松浦晋也

記者会見第二部

出席者
三菱重工業 打ち上げ執行責任者 二村幸基
JAXA 田中哲夫 宇宙船技術センター長
JAXA 長田弘幸 射場技術開発室長

最初から質疑応答でした。

南日本新聞 予定通りの打ち上げの意義と感想を聞きたい。

二村 我々は予定した日の予定した時刻の打ち上げをオンタイムに打ち上げるというが、昨年の三回、今回はすべてオンタイム打ち上げだった。カスタマーからすれば予定通りの打ち上げは重要だし、延期に伴う余分な費用もかからないので、信頼に対する一つの指標である。売り込みに当たって強みとなるだろう。我々にとっては「成功した」ことがまず第一で非常に満足している。

読売新聞 予測値と実測値がかなり精度よく一致しているが、いつもこうなのか。

二村 最近の打ち上げはほぼこの精度で行っている。エンジンの性能の安定と固体ロケットブースターの製造時のばらつきが小さいため、これだけの精度を出せている。安定してきているということ。

日経新聞 二村さんに。JAXA打ち上げとMHI打ち上げで意識の上で変わることは。

二村 ロケットに大きくスリーダイヤマークが入ること。これは責任感を感じさせる。

毎日新聞 今回の打ち上げで大変だったこと、ひやりとしたことはなかったか。

二村 少なくとも今日の打ち上げは、燃料注入から打ち上げ終了までノントラブルでひやりとする瞬間はなかった、

田中 順調だった。こうのとり本体、管制を行う筑波、NASA側などが連携する必要があり、非常に複雑な準備をやりおおせたと思っている。

長田 自分は射場設備を担当している。種子島の射場設備は古く、老朽化している部分もけっこうある。長いものでは15年以上(建設から経過している)。いつも自分は胃がきりきりしている。今回ロケットの引き出しは整備棟2(VAB2)から、第2射点に移動する。途中で移動経路がS字カーブを描く。H-IIAロケットは整備棟1(VAB1)から第1射点まで一直線で運ぶので移動は簡単。いつも安心して見ておれる。ところがH-IIBはS字カーブをきちんと曲がれるかいつも心配している。実は初期の開発の段階で、そこで引っかかって止まった。そこでゆっくりとS字を曲がることにしてこれまでの打ち上げを成功させてきた。とにかく毎回自分はきりきりしています。今日は無事打ち上げが終わって本当にほっとしています。

筑波会場
 NVS 2段の制御落下はどういう位置づけか。落とし方は毎回変えているのか。データをとっているのか。
長田 落とし方は基本的に同じ。2号機以降制御落下を行っている。過去2回はデブリを少なくすることを目指した実験で、今回から実運用。

東京会場
日本放送 ミッション期間が1号機53日、2号機67日、3号機56日、対して4号機は35日を予定している。今回は短いようだが。
田中 ステーション滞在期間は運ぶ荷物の出し入れなどのステーションの運用スケジュールで決まる。運用上は60日程度は問題なく係留できると評価している。

毎日新聞 打ち上げからドッキングまで5日あるがどういうところに警戒して運用するのか。ランデブー手法を説明してほしい。

田中 計画に従って高度をステーションと違えて宇宙ステーションとの位相を調整していく。何回かマニューバー推進を行うがそれを正確に行うことがランデブーの第一関門だ。最終的なランデブーをしていくときの相対位置の調整などがこれから重要になっていく。

以上です。

No.1688 :種子島宇宙センター・打ち上げ成功記者会見第一部 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月4日(日)08時57分 投稿者 松浦晋也

記者会見第一部の様子です。
出席者(写真左より)
鯨井洋一 三菱重工業常務執行役員・航空宇宙事業本部長
山本一太 内閣府特命担当大臣(宇宙政策)
丹羽秀樹 文部科学省・大臣政務官
奥村直樹 JAXA理事長

 打ち上げ結果
鯨井、発表文読み上げ。こうのとり4号は所定の軌道に投入された。H-IIBの打ち上げ運用は弊社としては初めて。H-IIA/Bあわせて連続20回成功。弊社打ち上げ運用としては11回連続成功。打ち上げ成功率は96.2%となった。今回の打ち上げに際して、JAXAをはじめとして、パートナー企業、地元の皆様に心より御礼申し上げる。今後とも最善の努力を尽くして打ち上げ連続成功を伸ばしていく所存である。

奥村:打ち上げ主体はMHIであるがJAXAは安全管理の責務を負っており、仕事を果たすことができた。こうのとり4号は8/9にISSへドッキング予定。引き続き気を引き締めて業務に当たっていく。

山本:発表コメント読み上げ。今回初めての視察であったが、天気がよかったせいか6分以上見えた。ブースター、フェアリングの分離も見えた。おそらく1段目分離も見えたのではないかというぐらい詳細に打ち上げを見ることができた。打ち上げの時刻がきわめて正確だった。誤差0.3秒。JAXAに聞くと過去10回以上この状態とのことで、この正確性は日本の強みである。秒速8kmのISSにランデブーし、アームによる把持でドッキングするのは、技術力の高さを示す。安倍内閣の宇宙政策は、1月の宇宙基本計画で打ち出している通り、宇宙利用の拡大と自律性の確保にある。今回の成功は国際競争力確保にも大きな意味があると考える。

丹羽 今回のロケットは名古屋での製造段階から見ていた。今回の成功は我が国ロケット技術の着実な向上を示すものと確信する。今後ISSで国際的なイニシアティブをとっていける展開を望んでいる。

以下質疑応答
日経新聞 鯨井常務に。H-IIBもMHIを打ち上げる体制となったが、今後国際競争力を高め海外衛星打ち上げを受注するための戦略を聞きたい。

鯨井 H-IIAとBとで製品ラインナップが広がった。政府のインフラ輸出の動きと併せて、国と一体になっての受注活動をアジア・中東などで行っていきたいと考えている。

テレビ東京 山本大臣に。こうのとりには有人化構想が存在する。日本の有人飛行はあるのか。国としてやっていくのか。

山本 有人飛行については宇宙基本計画にあるように、一定程度の予算を確保していくということにつきる。ISSは国際協力として我が国のプレゼンスの発揮にも資する。宇宙教育の観点からも意義があると考えている。他方のきぼうの利用には、「宇宙基本計画」「戦略的予算配分の基本方針」の両方を踏まえて申し上げると、我が国の産業力強化につながるという線が現時点ではまだ明らかではない。ということで多額の費用を必要とするので、今後費用対効果の評価および不断の経費削減を各国と協力して行うべきであると考えている。

共同通信 鯨井常務に。信頼性は高まってきているが、コストはどうか。民営化の意義は。

鯨井 打ち上げコストは非公開。H-IIB民営化は、ものづくりから打ち上げまで一貫することで信頼性向上とコスト低減が狙える。また、H-IIA/Bセットでカスタマーに提案ができる。

朝日新聞 一定程度の予算とおっしゃるが、次期基幹ロケットの検討で有人対応については言及がない。国の姿勢が見えにくくなっている。

山本 新型基幹ロケットは「平成26年度宇宙開発利用に関する戦略的予算配分の基本方針」で、「輸送系の全体像を明らかにし、我が国の総合力を結集して、新型基幹ロケットの開発に着手する」としている。内閣府・宇宙政策委員会の宇宙輸送部会で現在、国際競争力を持つ実用システムとしてのロケットのありかた、官民の役割分担などを審議中。今後の議論を取りまとめていく。

読売新聞 コスト削減にも限りがあるという指摘もある。海外で低コストロケットが多数出てきている現状で、国として民間移管以外の宇宙産業振興の戦略はなにか考えているのか。

山本 新型ロケットについては「我が国の総合力を結集して開発を進める」につきる。コストの問題はあるが、これは国家戦略の一部なので、国もしっかり関与しつつ三菱の民間努力を促していくということになるだろう。宇宙産業の競争力強化の点では準天頂衛星も打ち上げるし、リモセン衛星をしっかりとマーケットに売り込んでいく必要もある。防災のためのリモセン衛星も内閣府が中心になってしっかり進めていかねばならない。特に衛星のビジネスについて競争力を高めるということを国家戦略として考えていく必要がある。

筑波に質問切り替え
NVS こうのとり発展型はISS継続が前提か。

奥村 現在一定規模で研究を進めている。これは要素技術であり、今後のシナリオ展開に有効な範囲内で進めている。

東京に質問切り替え。
読売新聞 鯨井常務に。H-IIBはすべてこうのとりの打ち上げで、静止衛星打ち上げの実績がない。それを解消する方策はあるか。
鯨井 H-IIA/Bの国際競争力には実績と価格の両面で問題がある。実績には打ち上げ回数の多さというファクターもあるので、実績を積み重ねて、次期基幹ロケットにつなげていく必要がある。

産経新聞 山本大臣に。こうのとりは7号機まで運用が決まっている8号機以降の運用の可能性についてどう考えているか。
山本 7号機までは国際的な約束として運用が決まっているが、その後は国際情勢を考え国益を考えて判断していくことになる。

NVS 奥村理事長に。初めての打ち上げの感想を聞きたい。

奥村 打ち上げ直前まで緊張していました。今は気持ちが楽になっている。ISSの物資輸送はこれからますます重要になっているし、こうのとりでしか運べないものもある。こうのとりの役割は大きくなっていくと考える。

東京会場から。
不明 今回夏休みということで見学者が多かったが、観光としての打ち上げについてなにか振興策を考えているか。

丹羽 年数回ではインフラ整備のコストパフォーマンスはきびしいのではないか。ISSへの飛行士滞在など宇宙のイベントを継続的に行って、若い人へ宇宙の魅力をアピールし、安全保障を含む宇宙開発につなげていければいいなと考えている。

以上

No.1687 :打ち上げ リモートカメラ ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月4日(日)08時09分 投稿者 柴田孔明

中型ロケット射点付近に設置したカメラで撮影

No.1686 :打ち上げ その2 ●添付画像ファイル
投稿日 2013年8月4日(日)07時58分 投稿者 柴田孔明

広角で30秒間隔で撮っていたもの(これは2回目の撮影分)