クローズアップ2013:秘密保護法案 「定義」、行政裁量で 外部チェックのすべなく
2013年09月14日
民主党政権当時の2010年、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で海上保安庁が撮影したビデオ映像が流出した問題を受け、秘密保護法案の検討が始まった。それに先立ち、民主党政権が11年4月に国会提出した情報公開法改正案には、情報隠しを裁判官がチェックできる仕組みがあった。国が不開示にした文書が、情報公開訴訟に持ち込まれた場合、裁判官だけで文書を閲覧して公開すべきか判断するのだ。しかし、法案は審議されぬまま廃案に。政権交代した第2次安倍政権では、改正案を再提出する動きはない。情報公開制度に詳しい「情報公開クリアリングハウス」理事長の三木由希子さんは「どのように秘密を解除するかや、秘密を必要以上に広げない仕組みが全く考えられていない」と批判する。
法案は、特定秘密を漏らした公務員だけでなく「そそのかしたり、あおる」などして秘密を得ようとした側にも最高懲役10年の処罰を明記したことが大きな特徴だ。
報道機関の取材にも制約が出かねない。記者から見れば正当な取材行為が、法案の規制する「欺き」や「脅迫」「教唆(そそのかし)」に当たると解釈されかねない。取材先が情報を出さない口実にされる恐れもある。
現行の国家公務員法の守秘義務違反は最高で懲役1年、自衛官らを対象にした自衛隊法の防衛秘密漏えいは最高で懲役5年で、現行法とのバランスの観点から慎重な検討を求める声もある。甲南大法科大学院の園田寿教授(刑事法)は「刑の上限は命や財産など被害の重さに応じて決められるものだが、秘密保護法では被害の重さを算定しにくい。漏らさぬように威嚇の効果を狙って10年にするのだろう。だが、現行の国家公務員法でも、重大な違反行為は過去ほとんどない」と指摘する。【臺宏士、日下部聡、青島顕】
◇「知る権利」与野党に懸念の声
政府は特定秘密保護法案を10月15日召集の臨時国会に提出する方針だ。だが、公明党は、政府が同党の了承なく国民から意見を聴くパブリックコメントを始めたことに不信感を深めており、法案作成の与党協議が遅れる可能性がある。野党には「知る権利」を侵害するとの懸念もあり、成立の見通しは立っていない。