阪神は13日のヤクルト戦(神宮)に3―2で勝利し、連敗を4で止めた。注目の“55発男”ウラディミール・バレンティン外野手(29)にも虎投手陣は真っ向勝負を挑み4打数無安打と封じ込んでの白星だ。とにかく虎はバレから逃げない。作戦面以外での敬遠はしない方針だが、これには1985年の、あの“事件”が関係していた。
6回2失点で今季8勝目をマークした先発のスタンリッジはバレンティンを中飛、三振、右飛に封じ「今日の目標は1つだけ。バレンティンに56本目を打たれないことだった。(四球に)逃げようと思わなかったし、歩かせようとは考えなかった」と力強く振り返った。後を受けた久保田もバレンティンに真っ向勝負を挑み、投ゴロ。「(投手陣には)逃げないで思い切っていけ!と言ってある」と中西投手コーチ。完勝だった。
とにかく虎はバレから逃げない方針だが、この裏にあるのは85年に起きた“ランディ・バース敬遠事件”だ。
当時、バースは54本塁打で巨人とのシーズン残り2試合に臨んだが、真っ向勝負したのは最初の試合(10月22日、甲子園)に先発した江川だけで後の投手は逃げまくり。10月24日の後楽園球場での最終戦ではストレートの四球が4度もあるなど、まともに勝負してもらえなかった。
ある球団関係者は当時を振り返りつつ、こう話す。「アレがなければバースは55号を打っていただろう。阪神の関係者や選手は全員同じ思いだ。だから、同じことが起きたらウチは絶対に逃げてはいけない。アレを認めることになるからね」
もしも、ここで虎投手陣がバレンティンから逃げれば、巨人がバース氏から逃げた行為を阪神が認めることになる。それは虎戦士全員が心に秘めている思いだ。あの時のライバルと同じことをしては、レジェンドであるバース氏に顔向けができないと――。
同じ助っ人の立場のスタンリッジはなおさら、その思いが強かったのだろう。14日に先発する藤浪晋太郎(19)について話が及ぶや「攻めてくれると思います。そう(藤浪に)言います」ときっぱり。
バレンティンに真っ向勝負を挑み、そしてしっかりと抑える。それこそが虎の誇りだ。
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