プロ野球タイ記録となるシーズン55本塁打をマークし、新記録に挑んでいるヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)の周囲がうるさくなってきた。一部報道で批判的な発言を放ったヤンキース・イチロー外野手を、評論家の田尾安志氏がテレビ解説で痛烈に批判したかと思えば、イチローとバレンティンの“過去の確執”を指摘する声まで浮上。球界内で大きな波紋が広がっている。
本塁打のプロ野球新記録56号にリーチをかけているヤクルト・バレンティンが飛んだ騒動に巻き込まれた。
13日の阪神戦(神宮)はスタンリッジ、久保田の前に4タコ。惜しい当たりはあったが、中飛、空振り三振、右飛、投ゴロに終わった。試合後はフェンス手前で失速した1打席目の中飛を「捉え切れなかった」と振り返り「外角ばかりで本塁打できるような球はなかった」と残念そうな表情。観戦した母のアストリットさん、フォレンホーベン駐日オランダ大使にメモリアル弾を見せることはできなかった。
そんなバレンティンについて、マリナーズ時代の同僚だったイチローの発言が波紋を広げている。イチローは12日付の一部スポーツ紙で「同じチームメートだった選手が活躍するのはすごくうれしいです。ただ、アメリカであのクラスの選手が日本でそれだけ活躍するということは、少し難しいというか、複雑な部分もありますね」とコメント。この発言を12日のヤクルト―広島戦をテレビ解説した評論家の田尾氏が「バレンティンは日本に来てすごく成長したんですよ。逆に日本で成長してMLBに戻った選手も向こうで評価されている。だからイチローの発言はちょっと悲しいですし、どうしてもこれを言いたかった」と取り上げた。
イチロー発言は“レベルの低い日本球界の記録なんて”と解釈されかねないだけに、田尾氏も黙ってはいられなかったのだろう。
一夜明けた13日は、さらに波紋が広がった。ヤクルト・伊勢孝夫ヒッティングコーディネーターは「イチローらしいんじゃないか」と一笑に付したが、在京球団の関係者は「クールなイチローには似合わないコメント。社交辞令を言っておけばいいのに、よっぽど腹に据えかねたのでは」と語った。
では、イチローはバレンティンの何が「腹に据えかねた」というのか。メジャーに詳しい関係者によると「バレンティンはマリナーズに07~09年まで在籍していたが、そのころのイチローは他の選手たちと対立していた。08年9月25日には選手たちのイチロー襲撃計画が地元紙シアトル・タイムズで報じられたほど」と指摘した。
当時、同紙が報じた内部告発記事によると、個人記録中心のイチローのプレースタイルを見かねた選手たちが、実際にイチローに対して暴行を加えようと計画。
「knock him out(ぶっ飛ばしてやる)」という選手のコメントも掲載した。計画は未遂に終わったものの、これにより「多くの選手がイチローのことを嫌っていた」ことが明るみに出た。バレンティンが「襲撃計画」に加わっていたかは定かではないが、イチロー側からはそう見えていたのかもしれない。
いずれにせよ、そんな過去の因縁まで話題になるほど、バレ砲が注目を集めているということか。しばらくこの騒ぎは続きそうだ。
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