東日本大震災から2年半。一刻も早い復旧・復興を目指そうと国が定めた「集中復興期間=5年」の折り返し点に当たる。住まいや道路、農業、漁業、がれき処理……。被災3県では、復旧の進み具合に格差が生まれている。福島県内の除染作業も遅々として進んでいない。
壁に当たる放射能除去■分野・地域で核再歴然
【蝶名林薫】国の復旧・復興の工程表と進捗(しんちょく)状況を比べると、とりわけ遅れが目立つのが防潮堤だ。
「2015年度中の完成」を掲げて、3県で最も進んでいる岩手も8月に工程を見直し、一部が16年度にずれ込むとした。宮城では、入札段階にとどまる所が多い。設計が遅れ、堤防のかさ上げに必要な用地の買収も進んでいない。
住宅(災害公営住宅)の工事完了はごくわずかだが、宮城、福島が15年度、岩手が16年度中の整備完了を目指す。
除塩などを今年度中に済ませ、来年度からの営農再開を目標にする農地。福島では5460ヘクタールのうち、2120ヘクタールが原発事故の旧警戒区域内にあり、復旧作業に着手できていない。区域外でも復旧は17%。県は「営農可能になっても、風評被害のため耕作していない所もある」という。
漁港は、3県いずれも完全復旧はまだ少数だ。ただ、陸揚げ岸壁が一部でも復旧した港を数えると岩手、宮城が85%超に。福島は4港が一部復旧したが、3港では原発事故の影響で操業を自粛している。
がれき(災害廃棄物と津波堆積(たいせき)物)の処理は、岩手、宮城で目標通り、「今年度中の全量処理」にめどが立ったが、福島では困難という。環境省によると、津波堆積物は処理したうえで防災林工事などに再利用する計画だが、福島では処理後の保管場所が足りない、という。
原則として3年での復旧を目標としている学校(公立)。3県で計263校が再建できていない。
■カキ養殖業、今が正念場
【前田大輔】岸壁の復旧工事で土砂を積み上げるショベルカーが見える。岩手県宮古市の宮古港。市中心部から約2キロ南にある神林地区の約600メートル沖合には、カキ養殖のいかだが長さ2キロにわたって広がる。
地元の養殖組合で組合長を務める飛鳥方(あすかた)克吉さん(50)は、毎朝5時に沖に出る。海中のカキを漁船に引き揚げて70度の湯に浸して海藻を取り除き、海中に再び戻す作業を夕方まで繰り返す。
あの日、組合が持っていた171台の養殖いかだはすべて、津波にのみ込まれた。浜にあった飛鳥方さんの自宅も、だ。プレハブの仮設住宅で暮らし、組合員14人と養殖施設の再建にあたり、昨年10月、震災後初の出荷にこぎ着けた。
今年7月、殻むきの作業小屋が完成。8月末には、組合員全員に漁船が行き渡った。2年目のシーズンが1カ月後に迫る。昨季の出荷量は震災前の8分の1以下(6・5トン)だったが、今季は5分の1の10トン以上が目標だ。
いまも仮設に暮らす。ブイやカゴなど、震災前、自宅に置いていた漁具は知人宅に置かせてもらっている。軽トラックで取りに行ってから、約2キロ離れた浜へ。不便になった。
仮設住宅も、いずれ退去しなければならない。元の自宅と同じ場所に自力で家を建て直すか、土地を売って別の場所に移り住むしかない。ただ、津波にのまれた土地に買い手が付くとは思えない。さらなる借金も難しい。
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