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【再び忍び寄るオウム・番外編(3)】上祐氏「私にはカリスマ性がある。だから私が引っ張り、オウムを超える」
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平成19年5月、上祐史浩氏らが「ひかりの輪」を設立したことを受け、団体規制法に基づき、警視庁などの協力を得ながら全国12都府県にある両団体の関連施設計15ヶ所を一斉に立ち入り検査する公安調査庁の調査官。上祐氏は今「麻原だって『日本が生んだバカ息子』という考え方もできる」などと語る 地下鉄サリン事件(平成7年)など凶悪テロ事件を引き起こしたオウム真理教の後継団体「ひかりの輪」代表でオウム真理教元最高幹部、上祐(じょうゆう)史浩(50)。インタビューでは、かつて帰依した教祖、麻原彰晃(しょうこう)(58)からの脱却を主張する一方で、一連の事件を知らない若者の獲得を進めているもう一つの後継団体「アレフ」の勧誘を「覆面」と強く批判し、事件への「反省」を強調した。しかし、オウム真理教の元最高幹部が再び、新たな宗教団体を率いることへの違和感をぶつけると-。
--今年1月、あなたの著書「オウム事件17年目の告白」(扶桑社)の出版を記念したトークイベントで、ひかりの輪を続けることが批判された
「私は宗教をやりたいから続けているのであって、やる以上は被害者に賠償し、社会的責任を果たしていく。宗教アレルギーが強い一般の人は『なぜ宗教で失敗したのに解散しないの?』と考えると思うが、私たちは『宗教は悪くない。麻原の中にも良い所はあった』という前提。オウムの悪い所をなくして、良い所は麻原から脱却、自立する形で生かしていきたいと思っています」
--矛盾していないか
「私たちは麻原を通じて、いろんな宗教の寄せ集めを勉強したような部分もある。それは、悪くなかっただろうと。麻原を神格化したのがまずかったのだという考え方です」
--あなたが宗教団体の代表として他の会員を率いる必要が、なぜあるのか
「過去の痛みから逃げることが、オウム真理教の本質的な解決とは思えない。逃げるのではなく、オウムを超える。21世紀の宗教を作ること、ひかりの輪としてモデルを提示していくことが、オウム的なるものを払拭することではないでしょうか」
--あなたがする必要はないのでは
「カリスマ性のある人間が、バランス感覚を持ち、神でないと自覚しながら上下関係を形成することが課題ですから」
--自身にカリスマ性があると認識している、と
「簡単に言うとまあ、そうですね」
--あなたが神格化される流れはできないか
「過去から今までの反省を、ホームページなどで積極的に公開しています。それを読めば、私が間違いを犯し、愚かな面があった人だったんだとみんなが知る。それと、教義から団体運営まで絶え間なく改善していくべきだという考え方を強調しています。科学の進化と同じように、宗教も安全管理を求めて努力し続けるしかない」
--被害者感情に立つと、あなたが宗教をすることへの反発はあると思うが
「これが私なりの償いですが、丁寧に説明しても、心情的に共感していただけないことは理解しています。ただ、オウムは社会が作ったところがある。社会を改善していく宗教側の取り組みがないと、カルト宗教をなくそうとしても、なくならないと思いますよ。社会が作る暗部ですから」
--社会に問題があるのはもちろんだが、被害者の方々から見れば、あなたを許せないのではないか
「申し上げないのがいいのかもしれないけれど、犯罪加害者は、社会が生んだ。その社会に被害者の方も住んでいた。麻原だって『日本が生んだバカ息子』という考え方もできる。バカ息子が改心するのを見守る気持ちにはなれないでしょ。死んでほしいでしょ。気持ちは受け止めますが、死にません。前に進みます。私たちは死なないし、消えない」
--悟りという仏教の境地に至ったことはあるか
「悟りって何なのか、分からない。悟りを死ぬまで求めるべきだという考え方です。ただ、仏教的な考えをすると、心が安定する。私は刑務所にいたとき『自己愛を和らげれば心が静まる』と体得しましたが、そうしないと生きていられなかったんでしょうね。私は最大の失敗者の一人だと自覚しています。自分よりはるかに大きな罪、十字架、批判、失敗、挫折を負った上祐が、どうして生きていられるのかと思って(私を)求めてくる人が、社会にはいる。そういう人たちを、私は面倒を見るつもりがあります」