続・あなたは100万円損してる!国からもらえる7つの手当金【Part 2】


 【パート2】あなたは100万円損してる!国からもらえる5つの手当金

 

先日ご紹介した「国からもらえる7つの手当金」が大変ご好評をいただきました。

 

→あなたは100万円損してる!国からもらえる7つの手当金

 

また、記事を読んでいただいた方から「他にもこういう制度がありますよ!」「こういう場合の手当金はないのでしょうか?」といった様々なご意見もいただきました。

 

そこで今回はご要望いただいた障害年金や高額療養費の裏ワザ「世帯合算」に加えて、前回の記事では書ききれなかった失業保険や出産手当てなど、新しく4つの手当金と節税制度をご紹介します。

 

今すぐに必要ではなくても、知っておいて損はない制度ばかりです。

 

1.高額療養費制度/世帯合算

 

『高額療養費制度』とは、1ヶ月の窓口負担額が一定金額を超えた場合、その金額が高額療養費として支給されるという制度です。

 

負担額の上限は年齢や所得によって異なりますが、70歳未満で一般的な所得の方では、[80,100円+(医療費-267,000円)×1%]が上限額となります。

 

お一人の窓口負担額では上限額を超えなくても、同じ世帯の医療費を合算することが可能です。その合計額が一定金額を超えた場合には、その金額が高額療養費として支給されます。これを『世帯合算』といいます。

 

ここで注意して頂きたいのが、同じ世帯の方とは同じ健康保険に加入している家族を指すということです。子どもが親と別居している場合でも、被扶養者として親の健康保険に加入している場合は合算できます。

 

一方で同居している夫婦であっても、共働きでそれぞれの会社の健康保険に加入している場合は合算できません。

 

○高額療養費/世帯合算の計算例

<夫:6万円、その被扶養者である妻:5万4千円の窓口負担額を支払った場合>

1ヶ月の負担の上限額 80,100円+(380,000円※-267,000円)×1%=81,230円
※380,000円は、夫と妻の医療費合計114,000円(3割)の医療費(10割)
支給される高額療養費 114,000円-81,230円=32,770円

※70歳未満、所得区分が一般の場合

 

尚、合算するにはいくつか条件があります。まず暦の1日から末日分であること。上記のような負担額であっても、夫が7月20日、妻が8月3日に支払ったときは、月をまたがっているので合算できません。

 

また、1回の窓口負担額が2万1千円以上でなければなりません。同じ世帯の家族5人が2万円ずつ支払っても、合算はできないのです。

 

一方で、同じ人でも別の医療機関で支払った負担額が、それぞれ2万1千円以上である場合には合算することができます。

 

■参考:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf

 

2.失業中の社会保険

 

会社を退職し無職の状態になると、ほとんどの人は国民健康保険や国民年金に加入するでしょう。しかし、他に選択肢がないわけではありません。

 

≪健康保険≫

家族に健康保険の被保険者(健康保険に加入している人)がいる方は、その被扶養者となれる可能性があります。保険料はそのままで被扶養者も保険が適用されますので、国民健康保険に加入するよりお得です。

 

被扶養者になるにあたって、ポイントとなるのは次の2点です。
・同一世帯である
・生計を維持されている

 

被保険者が配偶者や親、子どもなどの場合は別居していても構いません。

 

生計維持の具体的な条件は以下の通りです。

・被扶養者の年収が130万円未満であること

・被保険者と同一世帯の場合:被扶養者の年収が被保険者の年収の半分未満であること

・別世帯の場合:被扶養者の年収が被保険者からの仕送り額より少ないこと

 

もうひとつの選択肢として、会社の健康保険を2年間継続することができます。これを『任意継続』といいます。給付内容が在職時とは異なり、また保険料を全額自分で支払う必要がありますが、高収入の方や病気がちな方にはお得な場合もあります。

 

≪年金保険≫

年金の加入者は、3種類に分かれています。

第1号被保険者 個人事業主、学生、フリーター、無職など
第2号被保険者 厚生年金や共済年金の被保険者
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている配偶者

 

会社を辞めて無職になると、多くの方は第2号から第1号になります。しかし配偶者が働いていて第2号被保険者である場合は、第3号になることができます。

 

第3号の方は、保険料の納付が不要なので非常にお得です。もちろん夫が妻の扶養になることもできます。尚、失業手当受給中は第1号になりますが(受給額によっては3号のままの場合あり)、受給修了後に無職であれば第3号に戻ることができます。

 

3.出産でもらえる手当金

 

出産でもらえる手当金には、『出産育児一時金』と『出産手当金』があります。ただし『出産手当金』については、出産を機に退職する場合、そのタイミングによって受け取れないことがあるので注意しましょう。

 

出産育児一時金 出産手当金
対象 健康保険や国民健康保険等の被保険者で出産された方。または被扶養者が出産された方。
※被扶養者の出産の場合には「家族出産育児一時金」となります。
健康保険等の被保険者で出産のために会社を休んだ方。
※国民健康保険の被保険者、健康保険の被扶養者や任意継続被保険者は受け取ることができません。
金額 1児につき42万円
※妊娠週数が22週未満の出産、産科医療補償制度未加入施設での出産は39万円。
標準報酬日額の3分の2×98日
※98日とは、産前産後休業期間の日数(出産予定日前42日と出産後56日。多胎の場合は産前98日から)。
予定日よりも遅れて出産した場合は、その日数分が加算されます。
窓口 直接支払制度を利用する場合:利用する医療機関の窓口
直接支払制度以外の場合:市町村や健康保険組合等
会社の社会保険担当部署、健康保険組合または社会保険事務所
※会社の担当者に確認してください。

※妊娠85日以上の死産、流産等も対象となります。

○出産手当金の計算例

<標準報酬月額30万円、支給日数98日の場合>

標準報酬日額 30万円(標準報酬月額)×30分の1
1万円
1日あたりの支給額 1万円(標準報酬日額)×3分の2
6,667円
支給額 6,667円×98
653,366円
※給与が支給されている場合は、その分が差し引かれます。

 

出産手当金は、出産予定日前42日間と出産後56日間を対象に支給されます。ただし、この期間前に退職して被保険者でなくなると支給されません。一方この期間に入ってから退職する場合、保険の加入期間が1年以上あれば98日分を受け取ることができます。

 

母子の健康が最優先であることはもちろんですが、可能であればもらえる手当金はもらっておけると安心です。

 

4.障害年金

 

国民年金や厚生年金等に加入している方が、病気や怪我で障害が残った場合、『障害年金』を受けることができます。

 

対象 以下の全ての条件を満たしている方。

  1. 初診日に年金に加入している。
  2. 年金保険料を一定期間支払っている。
  3. 障害の状態が基準に該当する。
支給される年金額 障害基礎年金(平成24年度)
・1級:786,500円×1.25
・2級:786,500円※子の人数により加算あり。
・第1子、第2子:各226,300円
・第3子以降:75,400円※厚生年金や共済年金に加入されている方は、障害厚生年金や障害共済年金等が上乗せされます。また軽い障害の場合には、3級の障害厚生年金・障害共済年金、障害手当金(一時金)等を受けられます。
窓口 国民年金:市町村の国民年金課
厚生年金:社会保険事務所
共済年金:共済組合

 

どの制度の年金を受けられるかは、障害の原因となった病気や怪我の初診日に、どの年金制度に加入していたかで決まります。そして当然のことですが、加入していたからといって、保険料を納めていなければ年金はもらえません。

 

免除期間も納付期間にカウントされますので、年金の手続きはきちんと行っておくことをお勧めします。尚、初診日の時点で20歳未満だった方は保険料の納付が条件となりませんが、所得制限があります。

 

手続きは、まず窓口で書類を受け取ります。このとき受給資格があるか確認してください。次に医師に診断書等を書いてもらいます(文書料が2千円~1万円程度かかります)。そして病歴・就労状況等申立書等を作成し、必要書類を窓口に提出します。書類を提出してから受給決定までは、およそ3ヶ月かかります。

 

決定内容に納得がいかない場合は、不服申し立てをすることができます。しかし、決定を覆すことは難しいとされています。そのため、予め社会保険労務士など専門家に相談の上で申請すると良いでしょう。

 

■参考:日本年金機構「障害年金」
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3225

 

5.相続税/生前贈与で節税する方法

 

「相続税?うちの親には財産なんてないから関係ない!」そう思っている方は少なくないでしょう。しかし、平成27年1月1日から相続税の課税が強化されます。基礎控除額が現行の6割に引き下げられますので、もしかすると他人事ではないかもしれません。

 

一方で、贈与税は減税の方向で動いています。特例などをうまく使って生前贈与を行うと、節税につながることがあります。

 

≪非課税枠をつかっての贈与≫

年間110万円までの贈与は、贈与税がかかりません。毎年100万円ずつ20年間贈与すると、贈与税を払わずに2,000万円の相続財産を減らすことができます。

 

ただし相続税には、相続発生からさかのぼって3年以内の相続人への贈与が相続財産に加算されるという決まりがあります。そのため贈与の途中で相続が発生した場合には、あまり節税にならない可能性もあります。

 

また、上記のような定期的な贈与の場合、当初から2,000万円の贈与の意図があったとみなされる場合もあります。そのため贈与の都度、贈与契約書を作成するなどの対策をとる必要があるのです。

 

≪教育資金の一括贈与≫

祖父母や親から教育資金を贈与されたとき、1,500万円まで贈与税がかかりません。

対象 平成25年4月1日~平成27年12月31日
祖父母や親から30歳未満の子や孫に贈与された教育資金
非課税限度額 1,500万円
※学習塾など学校等以外は500万円
窓口 金融機関

 

贈与する人は金融機関と契約し、開設した教育資金口座に資金を預け入れます。贈与を受けた人は、その口座から教育資金を支払います。贈与を受けた人が30歳になった時点で資金が残っていれば、その残額に贈与税がかかります。

 

一方、30歳になるまでに全額使ってしまえば、贈与税はかかりません。しかも贈与した人が契約期間中に亡くなって相続が発生した場合も、課税対象とはならないので相続税の減額につながります。

 

■参考:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku-zoyo/201304/pdf/01.pdf

≪住宅取得等資金の贈与≫

祖父母や親から住宅を取得するための資金を贈与されたとき、一定額まで贈与税がかかりません。

対象 平成24年1月1日~平成26年12月31日
祖父母や親などから20歳以上の子や孫に贈与された住宅取得等のための資金
※贈与を受ける方に所得制限等、諸要件あり。
非課税限度額
平成24年 平成25年 平成26年
省エネ等住宅 1,500万円 1,200万円 1,000万円
上記以外の住宅 1,000万円 700万円 500万円
窓口 納税地の所轄税務署
※贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日に申告

 

この制度を利用してから3年以内に相続が発生しても、贈与された資金は相続財産に加算されません。つまり、相続税の減額につながるというわけです。

 

■参考:「住宅取得等資金の贈与税の非課税」のあらまし
http://www.nta.go.jp//shiraberu/ippanjoho/pamph/sozoku/pdf/jutaku_leaflet24-26.pdf

 

 

以上、知っておいて損はない公的制度を追加で5つご紹介しました。

 

高額療養費制度や、障害年金、失業中の社会保険などは、出来ればお世話になりたくないものですが、いざ、自分の身に降りかかってみると少しの助けでも大きな力になります。頭の片隅にでも記憶しておくと良いでしょう。

 

出産は社会にとっても、未来を支える大切な出来事です。『出産育児一時金』と『出産手当金』の対象となる方は、忘れずにもらってくださいね。

 

また、今回は手当金だけでなく相続税についてもご紹介しました。

 

切り出しにくい話題ではありますが、先々のことを考えておく為にも、生前贈与や教育資金、住宅資金贈与なども相談してみてはいかがでしょうか。

 

より良い社会の為に、ご友人やお知り合いの方にも、ぜひ教えて頂ければ幸いです。