いまや優勝を確信しつつあるスタンドから、記念プレートを掲げた田中に拍手が降り注ぐ。開幕21連勝、昨季から25連勝。投げるたびに記録を重ねる男は、声を張り上げた。
「失点は悔しかったけど、僕が一人で投げれば中継ぎ陣は休める。きょうは休養日です!」
ネット裏にはヤンキース、レッドソックス、ダイヤモンドバックスなどメジャー8球団のスカウトが集結。立ち上がりから毎回のように走者を出したが、10安打を許しても、先頭打者の出塁は一度も許さなかった。
圧巻は五回だ。二死三塁のピンチで、安達にカウント2-1とボール先行。だが外角低めいっぱいへ149キロ、152キロ。気おされた安達はバットを動かすことさえできず、見逃し三振。気迫の投球で、直後の打線の援護を呼びこんだ。今季初めての無四死球完投で8三振を奪った。
球団は、田中が今季塗り替えた日米を合わせた「世界記録」をギネスブックに申請することを決めている。開幕21連勝に加え、昨年から25連勝とし、1936-37年にカール・ハッベルが記録し、ギネスブックに掲載されていた「24」を超えた。
仲間との別れがあった。9日に抑えのラズナーが右肘手術のため米国に帰国した。2009年から5年間で通算14勝40セーブを挙げた同僚が優勝目前、チームを離れる無念に、「本人が一番悔しいでしょう。5年間一緒にやってきて、人柄もよかったし、残念です」と惜しんだ。