バリュークリエーション(東京・中央、天井次夫社長)は、ベンチャー起業家などを組織化した日本ベンチャー協議会を運営し、その会員企業から得られる情報をもとに投資している。バリュー社にとっては「協議会の会員企業がキャピタリストの役割を果たしている」(天井社長)わけだ。
協議会の名簿には、天井社長が「勝ち組企業」と称する上場企業や2年以内に公開予定の優良ベンチャーが名を連ね、相互の交流を通じて事業拡大を目指している。バリュー社はこれらの会員企業から投資先の紹介を受けるなど有望ベンチャーの情報を収集する一方、自らは経営コンサルティングなどのサービスに注力している。
協議会の前身は、天井社長が日商インターライフ会長時代に手掛けていた異業種交流会の「SK21」。2000年4月に名称を「日本ベンチャー協議会」に変更した。このネットワークを投資に活用するため、2000年1月にバリュー社を設立し、以来、協議会と表裏一体となって活動している。
協議会では会員企業への情報提供とともに、交流の場を設けることで会員同士の提携を促している。東証で毎月定例会を開くほか、本社に近接するサロンや親ぼく会など起業家らが気軽に足を運べる環境を整えた。「勝ち組企業」が事業拡大に向け提携先を模索する一方、投資を期待するベンチャー側は自社技術をアピールする機会となる。
ドン・キホーテと、支払業務管理・代行を手掛けるフィデックコーポレーション(同・千代田、深田剛社長)の提携も、会員同士が結びついたケースで、現在ドン・キホーテはフィデック社に経理システムの構築を委託している。こうした提携が頻繁になされることで、バリュー社と協議会の評判は外部にも広まり、会員数の増加につながっている。
9月時点の会員数は130社で、前年末に比べ40社増加した。130社のうち25%が上場企業で、2年以内に株式上場する予定というベンチャーが40%を占める。
バリュー社はこれまで累計45社に投資し、このうち5社が株式新規公開(IPO)を果たした。今年6月には、ホテルなどで食器洗浄業務を手掛けるセントラルサービスシステム(同・千代田、野口卓社長)が上場。天井社長は「今後1、2年で投資先の半分は上場するだろう」と強気の予想をする。
ただ、株式市場が低迷する中でキャピタルゲイン(株式売却益)に過大な期待はできないため、収益構造の見直しにも着手した。無料だった会員向け情報提供などの営業支援を今年6月からは有料制に変更。昨年秋に始めたM&A(企業の買収・合併)アドバイザリー事業とともに収益の柱として育てる計画だ。会員企業に投資先を紹介した場合、投資額の3%を紹介費として受け取るなど、手数料収入の確保による収益安定を目指している。
各種イベントの開催を通じて会員企業の事業拡大を支援することにも注力する。7月には協議会と人民日報の主催で「日中ベンチャービジネス・フォーラム」を北京で開いた。会員ベンチャーなど約120社が訪中し、中国市場での事業展開の足がかりを模索。4月には立命館アジア太平洋大学で起業家教育講座を開設し、協議会から講師を派遣するなど草の根レベルでの交流にも力を入れている。
来春までには日韓共催によるベンチャーフォーラムを開催するなど、会員や投資先に事業拡大の機会を数多く提供し、ベンチャーの成長を後押しする方針だ。
(ネット編集部 山本優)
[10月2日]