・テレビの画面を見ていることで、
　特別にたくさん見ることになるのは、なんでしょうか？
　
　それは、人間の顔です。
　テレビはひっきりなしに、人間の顔のアップがあります。
　日常、ものごとをわきまえた人は、
　それほどぶしつけに他の人の顔を見たりはしません。
　失礼にあたるからです。
　しかし、テレビの画面のなかでは、
　これでもかというくらい顔のアップがあります。
　写されている本人でも気づかれないと思っているような
　ほんの少しの涙のにじみでもあろうものなら、
　逆に、それを逃すまいと、カメラはそこを狙います。
　
　これだけ、大量の「顔の情報」を受け取り続けていると、
　現実のほうが、もの足りなくなっているかもしれません。
　情報を受取る側としては、もっと顔に語ってほしい。
　情報を受取られる側としては、
　顔からの情報を管理して提供したい。
　女性のメイクアップは、さらに進化するでしょうし、
　無表情な男の人も、情報を秘匿するかのように
　いっそう頑なに無表情になるかもしれませんね。
　‥‥ま、そのへんは冗談として、
　これだけ「顔」に集中したテレビに対して、
　まったく逆のような世界も、実はたくさんあります。
　能や、歌舞伎だとか文楽、
　これは顔が、仮面や厚い化粧で覆われています。
　顔をアップで見られるような観客席はありません。
　また、生身の俳優たちが動く舞台でも、
　顔のアップは見られません。
　コンサートなど、超大型スクリーンも使いますが、
　基本的には全体を見るようにつくられています。
　さらに、忘れちゃいけないのが、
　スーパーヒーローや怪獣などの存在です。
　仮面ライダーだのウルトラマン、バットマン‥‥
　みんな「仮面劇」なんですよね。　
　世の中は、そっちのほうに向いてるようにも思えます。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
思えば、犬や猫なんかも「顔の情報」控えめの仮面劇だね。