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週刊・上杉隆
【第96回】 2009年10月8日
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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

五輪招致落選で改めて感じた石原都知事の環境問題への“本気”

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落選したら責任を取ると
明言した2年前の会見

 さて、質疑応答が始まり、いよいよ石原知事に用意していた質問をぶつける時がきた。筆者は記者会見で質問する時にいつも決まってそうするように、今回も一番前の席を陣取っていた。

 「2007年3月、知事は並々ならぬ意欲を示して、東京オリンピック招致を公約に掲げながら三選を果たしました。その当選会見で、私は次のような質問をさせていただきました。

 『仮に、2年後のIOC総会で落選したら、知事はどのように政治的責任をお取りになるつもりですか』と。その際、知事からは次のようなお答えをいただきました。

 『そりゃ、責任は取りますよ』。

 そして、今日、残念ながら東京は招致に失敗しました。果たして、具体的な責任とはどのようなものなのか、お聞かせください」

 正式な記者会見で政治家が発言したことは「公約」になる。これは日本の記者クラブ主催の記者会見を装う「懇談会見」を除いて、世界で共通のルールだ。

 その点からも、2年前の全メディアにオープンにした石原知事の会見、また自らの選挙で掲げたオリンピックの東京招致という発言は、最大の「公約」だったともいえる。

 そして結果として、「公約」は達成できなかった。石原知事にはその責任に向き合う責任があるはずだ。

 一方で、質問をした記者にも責任が及ぶはずだ。誰かが質問をしてくれればいいのだが、なにしろ2年半以上も前のことだ。誰一人覚えていないかもしれない。よって、自らが行った質問の責任を回収しに行くしかない。ということで筆者はコペンハーゲンまで行ったのだ。

 「嫌な質問をしないでくれよ」

 いつものように、少し微笑みながらこう口を開くと石原知事は続けた。

 「今回のIOC総会では、自分の人生の中で非常にいい経験をさせてもらいましたな。ある意味でそのことを、どういう形かわからないが、都民、国民に伝えることが自分の責任だと思うね。そりゃ、辞めるという責任のことを言っているだろうけど、任期途中で知事を辞めるという責任の取り方は絶対にない。そうした誤解がないように、君からも言っておいてくれよ」

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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