焼却灰からセシウム除去 福岡大など処理システム開発
福島県など東日本大震災の被災地で、福島第1原発事故で発生した放射性セシウムを含む一般廃棄物焼却灰の行き場がなくなっている中、焼却灰に含まれるセシウムを9割以上除去する一貫処理システムを、福岡大(福岡市)と独立行政法人・国立環境研究所(茨城県つくば市)などが全国で初めて開発した。セシウムを水に溶かして焼却灰を無害化し、残った汚染水から特殊な膜や吸着剤でセシウムを除去する。来年度までに実用化し被災市町村に導入を働き掛けるという。
システムは、原発事故復旧への環境省の研究委託を受け、福大資源循環・環境制御システム研究所の樋口壮太郎教授(衛生工学)らが、セシウムの水に溶けやすい性質を利用して開発した。
工程は(1)焼却灰を約1時間水に漬けた後、洗浄と脱水を繰り返し、セシウムを水中に移す(2)無害化した灰(脱水ケーキ)を取り出す(3)残された汚染水を特殊な膜でろ過し、水中のセシウムを吸着剤で吸い取る。処理後の焼却灰は埋め立てができ、水は焼却灰の洗浄水として再利用される。
この方式で9割以上のセシウムを除去でき、従来の方式より2割程度、除去能力が向上するという。使用後の吸着剤は、放射線が漏れないよう鉄製の容器に入れ、厚さ50センチのコンクリート壁で囲い保管する。吸着剤と容器を合わせた体積は、処理前の焼却灰の200分の1程度になる。既に実証用の設備で1日50~100キロの焼却灰の無害化に成功しており、実用化されれば1日5~10トンの処理が可能という。
環境省は、放射性セシウム濃度が1キログラム当たり8千ベクレルを超える災害廃棄物は「一時保管が適当」とし、被災地では約8万トンの焼却灰が埋め立て処分できず、焼却施設の敷地などに置かれたままだ。
樋口教授は「食器の漬け置き洗いや髪のリンスの仕組みをヒントにした。被災地では汚染焼却灰が飽和状態となっており、システムを使うことで安全に焼却灰を減らせる」と話している。
=2013/09/13付 西日本新聞朝刊=