社説

消費税増税固める/やるべき対策をしっかりと

 安倍晋三首相が腹を固めたという。来年4月に消費税率を5%から8%へと、予定通り引き上げることについてだ。
 消費税の増税は、毎年1兆円規模で予算が増え財政を圧迫し続ける社会保障制度の持続可能性と充実を図るとともに、財政を立て直すのが目的だ。
 特に先進国で最悪の状況にある財政は世界経済のリスクとされ、国際社会から求められた財政健全化対応の核心が、消費税増税である。「国際公約」と言え、増税を見送れば日本の財政は信認を失い、国債の暴落(金利の暴騰)を招きかねない。
 そうなれば国債の利払いが膨れるだけでなく、住宅ローンにも連動する長期金利が跳ね上がり、悪影響は経済全体に及ぶ。そうした危険を回避するための判断であれば、やむを得まい。
 だが一方で、増税によって景気が腰折れする懸念は消えない。経済指標は足元の好調さは映し出すものの、デフレ脱却に向けた自律的な回復軌道に乗ったかどうかは疑わしい。首相が増税判断に慎重姿勢をとり続けてきたのも、そのためだ。
 政府は、5兆円規模の新たな経済対策をまとめるという。税率の上げ幅3%のうち2%分に相当する規模であり、これで首相は、増税直後の景気の落ち込みを最小限にとどめられるとの判断に傾いたようだ。
 ただ、経済対策を含め増税の対応策には注文がある。
 一つは賃上げの環境を整えることだ。円安などから光熱費や食料品が値上がりする中、賃金は上がらない。増税となれば家計の負担はいや増す。これでは消費は拡大せず、自律的回復によるデフレ脱却は望めまい。
 アベノミクスの成果について地方で実感に乏しいのも問題だ。首相が最近「成果を全国津々浦々に届ける」と語るのは、そのことを意識しているからだ。
 政府は、賃上げした企業に対する減税措置の拡大のほか、地方の所得向上にもつながる実効性ある施策を検討すべきだ。
 もう一つは財政規律を堅持することだ。経済対策の5兆円の財源をどこに求めるのか。国債を新規発行するのでは、増税の目的がないがしろにされる。
 問題は対策の規模ではなく中身だ。公共事業は厳選し、大企業偏重にならず、家計・中小企業の負担を最小限に抑える施策に知恵を絞る必要がある。
 最後に挙げねばならないのは低所得者対策だ。消費税は所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性が特徴だ。政府内では住民税の非課税者を対象に1人1万円を給付する案が出ている。
 生活再建途上にある大震災被災者にも配慮が要る。住宅購入時の現金給付支援策は決まっているが、それらで十分かどうか。そうした人々の声も聴き対策を練り上げてもらいたい。
 社会保障サービス維持のため老いも若きも各世代が公平に負担し、支え合おうというのが消費税増税の趣旨である。であれば増税による生活格差の拡大などあってはなるまい。低所得者らには十分な心配りが必要だ。

2013年09月13日金曜日

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