WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ(11日、大阪・ボディメーカーコロシアム)、王者の井岡一翔(24=井岡)は同級5位クワンタイ・シスモーゼン(29=タイ)に7R2分17秒でKO勝ち。圧巻のV2達成で「絶対王者」を証明したが、ファンの期待は同級日本王者の“怪物”井上尚弥(20=大橋)との夢対決が実現するかということ。大橋ジムの大橋秀行会長(48)は本紙に驚きの「来夏の統一戦構想」を明かした。
まるでボクシング漫画のワンシーンのような鮮やかなノックアウトだった。7R、左ボディーを受けたクワンタイのガードがガラ空きになると、間髪を入れずに左フックを叩き込んだ。尻からリングに崩れ落ちた挑戦者は10カウントでも立ち上がれなかった。
一翔は「お客さんもこれ(KO)を見に来ている。僕の代わりはいないことを示したかった」。この1か月半の間に国内だけで6試合が行われた空前の世界戦ラッシュ。世界王者10人が乱立する時代に「日本のエース」たることを証明した。
こうなるとファンの期待は一つしかない。先月25日に、史上最速タイの4試合目で日本王者となった、同じライトフライ級の“怪物”井上と拳を交えることだ。
井上戦実現について一翔の父で井岡ジムの井岡一法会長(46)は「井上選手がもう一つぐらい、いい試合をしてくれればぜひ」と話している。
井上は近く世界ランク入りが確実。日程的にはハードになるが、今秋に日本王座の防衛戦、または世界前哨戦をクリアすれば、井岡ジムが次の興行を予定する大みそかに、国内最速の6戦目での世界取りをかけ、記録保持者(7戦目)の一翔に挑戦…という意味だ。
実現すれば盛り上がること間違いなし。だが、大橋会長は「やるなら、世界王者同士で、ですよ」と本紙に注目発言。
井上サイドとしては“大みそかの挑戦ありき”で、この先わずか3か月半の間に2試合をこなすのはあまりにリスクが大きい。拳を痛めやすい井上が次戦で負傷し、万全とは言えない状態でリングに上がれば、せっかくのビッグマッチも消化不良になりかねない。ならば、年内に世界前哨戦をこなし、来春にWBA以外の団体で世界取り、そしてその次、来夏に団体間の「王座統一戦」で対戦しようというわけだ。
日本で行われた唯一の2団体王座統一戦は一翔と八重樫東(30=現WBCフライ級王者)のミニマム級戦。八重樫の所属は他ならぬ大橋ジムで「あの時の一法さんとの話し合いは5分で決まった」と大橋会長は振り返る。「私たちには信頼関係がある」とも言うだけに、一翔vs井上戦実現にも自信ありだ。一翔は今後、3階級制覇を目指してフライ級に転級の可能性もあるが「その場合は、臨機応変にやりますよ」(大橋会長)と井上が階級を上げることにも含みを持たせた。
一翔の目標は「絶対王者」と呼ばれること。ライトフライ級に転向後、3連続となるKO勝利で軽量級の第一人者としての貫禄を示した。井上との対戦は、プロ野球に例えれば楽天・田中将大VS日ハム・大谷翔平のようなものか。「ボクシング人気回復の切り札になるカード」(大橋会長)で、ともに世界のベルトをかけることになれば、ボクシング人気復活の起爆剤になることは間違いない。
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