余録:「良いニュースと悪いニュース、どっちから聞く?…
「良いニュースと悪いニュース、どっちから聞く?」はブラックジョークの定番である。入院中の画家が美術店主に「良いニュースから」と答えると、店主は「客に君の絵を画家の死後に値の上がる絵だと勧めたら一度に10点も売れた」という▲喜んだ画家が「悪いニュースは?」と聞くと、「いやその客は君の主治医だったんだ」。−−さて、こと企業や役所で組織人の心構えとされるのは「バッドニュース・ファースト」、つまり「まず悪いニュースを」である▲自分らに都合の悪いニュースほど早く報告され、迅速(じんそく)な対策がとられるのが健全な組織である。だが悪いことの伝え手が疎(うと)まれ、不吉な情報は過小評価され、対策遅れが破局的事態を招くことも世に多い。組織の自滅は仕方ないが、その被害を受ける方はたまらない▲ではカネボウ化粧品の美白化粧品を使った人の肌に白斑(はくはん)が生じる被害が広がっている問題はどうか。外部弁護士による第三者調査報告は、自主回収のすでに10カ月前には医師から因果関係のある疑いが指摘されていたことを明らかにし、会社の対応の遅れを批判した▲こと白斑症状の苦情や情報は約2年前から繰り返し寄せられていた。だがそのたびに化粧品とは関係ない病気と見なされ、対策はとられなかった。調査報告は意図的な隠蔽(いんぺい)を否定したが、都合の悪いことから目をそむける「事なかれ主義」が被害を拡大させたとみる▲同社は親会社の花王の消費者対応情報システムを導入していたが、被害情報の評価や共有には役立たなかった。どんなニュースをまず聞くか。肝心なのはシステムより企業の文化や風土らしい。 続きを読む