【ヤクルト】ママ初観戦もバレ、５６号お預け！

母・アストリットさんと肩を組んで引き揚げるバレンティン

　◆ヤクルト６―１２広島（１２日・神宮）　バレンティンは球場全体から湧き起こる大声援を背に打席に向かった。

　８回１死一塁の最終打席。初球から２球続けてスライダーを強振、空振りすると満員のスタンドからどよめきが。直後の３球目。高めの直球を中前にはじき返して出塁すると、代走・三輪を送られ交代した。３打数１安打１四球。プロ野球新記録のシーズン最多５６本は持ち越しとなり、「力みはあった。長いシーズンともなれば、打ち損じも起きてくる。機械ではないので、毎日打てる訳ではない」と自分を納得させた。

　母の前での一発とはならなかった。この日、アストリットさん（６４）がオランダ・アムステルダムから来日、バックネット裏で観戦した。前日（１１日）もナイターだったが、息子は午前７時に起きて成田空港まで出迎えにいった。１９６４年の王貞治（巨人）らに並ぶプロ野球記録のシーズン５５号を放った前夜は「興奮して寝付きが良くなかった」という。複数の祝福メールが届き、それに返信をして、寝たのは午前３時半。いつもは１０時間は眠る助っ人にとっては大忙しの１日だったが、「疲れはあったけど、言い訳にはしたくない」と言い切った。

　母とは昨年１２月以来の再会。「空港で会った時に叱られた。『何で（タイ記録の達成を）待たなかったんだ』と言われた」とちゃめっ気たっぷりに話した。最愛の母はシーズン終了まで滞在する。慌てることはない。５６号へ向けて、「半世紀、破られていない特別な記録を破るというのは、プロ野球の新しい扉を開くということ。特別な一本になると思う」と、気持ちを切り替えた。