職場のオフィスは、同僚同士の交流を促す方向にシフトしている。お互いの仕事スペースの仕切りは低くなり、オフィスにドアはなくなる一方、カフェやスナックスペースがあちらこちらに登場している。
ただ、オープンなオフィスにも意図しなかったマイナス面が生じている。煩わしく、生産性を下げるような仕事の中断だ。
電子メールやインスタント・メッセージ(IM)のせいだと思われがちだが、最も多い仕事の中断は同僚たちが原因だ。面と向かって中断されるケースは、自由に先延ばししたり無視したりできる電子メールや電話で邪魔される場合よりも3分の1ほど多い。これは「Organization Studies」誌で2011年に発表された研究で明らかになった。
今年発表された他の調査でも、頻繁に中断が入ると疲労が高まったり、ストレスが原因の病気につながったり、ミスが倍増することが明らかにされている。
例えば、スプレッドシートの微調整の仕方やお薦めのランチ場所などについて、隣の席の同僚に聞くのは簡単だ。しかし、無視するのは失礼だと感じるようなこうした中断が、やり掛けの仕事を続ける能力を低下させている。
これに対処する方法はさまざまある。ヘッドフォーンを付ける人もいる。帽子をかぶったり腕章を着けたり、あるいは仕事スペースの周りに黄色いバリケードテープを巡らせたりといったように、「邪魔しないで」というサインを考え出している人々もいる。企業は、従業員に異なるコミュニケーションの仕方や、計画されていないミーティングを制限するよう教えている。
カリフォルニア大学の調査で、仕事スペースが間仕切りで仕切られた従業員は、個人のオフィスを持つ人々よりも仕事が中断されるケースが29%多いことが示されている。Organization Studies誌に発表された調査によると、ある通信会社では、間仕切りスペースを超えたやり取りは毎日午後2時半から4時の間にピークに達していた。その時間帯には従業員たちは音楽をかけたり、間仕切り越しに話をしたり、お互いのデスクの周りを歩き回ったりしていた。
こうしたパターンには大きな犠牲が伴いかねない。国際ストレスマネジメント学会の専門誌「International Journal of Stress Management」で最近発表された252人の就労者を対象とする調査によると、頻繁に中断された従業員の疲労の程度は9%高く、過大な仕事量が疲労を12%増すのと同じ程度だった。また、この調査では、仕事の中断によって片頭痛や腰痛といった肉体的な問題も4%増加したことが明らかになった。
さらに、中断後にミスも急増している。300人を対象とする最近の調査で、参加者たちは、キーの打ち方で、その文字がアルファベットの最初あるいは終わりのいずれにより近いかを見分けるといったコンピューター関連の一連の作業を要請された。学術誌「Journal of Experimental Psychology」で発表された研究によると、約2.8秒といったごく短い中断の後でさえ、2つの文字をタイプするよう要請された際、ミスは倍増した。
この研究結果の主執筆者で、ミシガン州立大学の心理学教授のエリック・アルトマン氏は「2秒あれば、話の筋が分からなくなるのに十分だ」と説明する。
さらに悪いことに、中断された後に仕事を再開するには平均で25分以上かかる。生産性についての書籍「Peopleware」の共同執筆者のトム・デマルコ氏は、800人の従業員を対象とする研究に基づき、設計やプログラミングといった複雑な仕事を再開した後、中断前と同程度の集中力を回復するまでにさらに15分かかると話す。
一部の職業では、集中の中断は深刻な結果につながり得る。カイザー・パーマネンテ総合病院の24病院の看護師たちは、薬を準備しているときに中断されないよう、色のついたたすきやベストを身に着けている。カイザーグループの一部の病院では、調剤場所の近くでは床に赤いテープや異なる色の床タイルを使って「邪魔禁止ゾーン」を表示しているという。
マインド・ツールズのジェームズ・マンクテロウ最高経営責任者(CEO)は、毎年、6500人を超える労働者が職業能力関連サイトのマインドツールズ・ドット・コムから無料の「Interrupters' Log Worksheet」(邪魔をする人の記録ワークシート)をダウンロードしていると話す。中断の原因を分析して時間を節約するために、こうした中断を取り除いたり対処方法を変えたりすることに役立てるためだ。
調査によると、人々が素早く仕事に戻り、ミスを減らす1つの方法は、それまでやっていた箇所に印を付け、次の段階に大きな目立つ印を付けることだ。
デンバーを本拠とする生産性関連の指導者で作家のローラ・スタック氏は、中断しに来た人に、今自分が考えていたことを付箋に書き留めるまで待ってくれるように頼み、どこまで作業をやっていたかを記すためにその付箋をページやスクリーンに貼るよう勧める。スタック氏は、視覚的な手掛かりによって、仕事を再開するのに必要な時間が最大80%削減されると話す。
スタック氏はまた、従業員チームに順序付けのトレーニングも行う。つまり、お互いの仕事を中断するのは、その問題が最優先課題の場合に限るようトレーニングする。重要性の低い問題については、ミーティングを要請するようにする。
オハイオ州トレドの保険会社の人事部マネジャー、シェリー・カルドウェルさんは、スタック氏が勧めるもう一つの戦略を使って時間を節約していると話す。中断しに来る人々に、数分後にオフィスで話すと伝えることだ。そうすることで、やり掛けの仕事を完了するとともに、ミーティングの長さも管理できる。カルドウェルさんは「自分のスケジュールに合わせてできるだけでなく、好きな時に仕事を離れることもできる」と述べる。
生産性について講演や訓練を行っているテキサス州オースティンのモーラ・トーマス氏は、質問があるたびに立ちあがって同僚に聞きに行く習慣を止めるよう提案する。同僚ごとに、個別の「話しかける」課題のリストを設け、いくつかの項目が出てきてミーティングを設定するまで待つよう助言する。
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