阪神先発・能見篤史 =甲子園球場(中川春佳撮影)【拡大】
ここぞの場面で、ことごとく打たれた。能見がまた踏ん張れなかった。試合後、クラブハウスへと続く通路に現れた中西投手コーチは、ゆっくりと歩きながら、エースを一刀両断した。
「ちょっと簡単にやられすぎたな。調子自体もあまりよくなかった。真っすぐに本来のキレがなかった。制球に苦しんでいた…」
ひとしきり語った。数メートル後ろには、勝てなかったエースがうつむきながら、足早に引き揚げようとしていた。一旦、通路の奥へ消えた中西投手コーチだったが、言い足りなかったのか。能見とすれ違うか否かのタイミングで取材エリアにもう一度姿を現すと、キツい一言を見舞った。
「攻める気持ちを忘れているな」
うやむやにし、見過ごしたまま、球場を後にすることはできなかった。
それほどふがいなかった。点を取った直後に、不注意な失点を重ねた。二回二死二塁から高橋周に右中間に運ばれ、先制を許した。同点になった直後の三回には一死一、三塁から森野の投ゴロで併殺を取ろうと焦り、二塁へ悪送球。自身の失策で勝ち越しを許した。
「全部の球種が悪かった。ストライクが入らんかったから」
五回には自らの右前適時打で一時は2-2の同点としたが、六回一死二塁では谷繁にあっさりと決勝の中前打を許した。7回6安打3失点。3年連続の2けた勝利に王手をかけていたエースがまた背信ピッチ。7敗目(9勝)でチームも引き分けをはさんで4連敗となり、5カード連続負け越しが決定した。