つむぐ:2013・9 あすと長町 復興住宅に集団入居へ 地域との融和を目指す /宮城
毎日新聞 2013年09月12日 地方版
◇隣接地区の創作劇に参加
仮設住宅でできたコミュニティーを維持したまま災害公営住宅(復興住宅)に移り住むことを目指す仙台市太白区の「あすと長町仮設住宅」の住民たち。独自に立案した復興住宅建設計画は市に採用されず実現できなかったが、市などが「あすと長町」地区に整備する復興住宅への集団入居を目指して活動する。14、15日には、隣接する長町地区の住民が主催する創作劇に仮設住民が参加するなど、地域との融和を目指す取り組みも始まっている。【金森崇之】
JR東北線長町駅東側に位置する「あすと長町」地区は計3棟(324戸)の復興住宅が建設される予定で、仮設住民らは5世帯以上がまとまって応募できる「コミュニティ枠」に応募する方針。
同地区は市が東日本大震災前から再開発を進め、居住人口1万2500人の街として生まれ変わる計画。一方、同駅西側の長町地区には昔ながらの商店街などが建ち並んでおり、新住民と旧住民の融和という震災前からの課題に、新たに復興住宅へ移り住む被災者も加わることになった。
そこで、新住民にも長町の歴史を知ってもらい愛着を持ってもらって融合につなげようと、地区住民らのまちづくり団体「長町まざらいん」などが震災前から企画していた創作劇「わがまち ながまち 愛のまち 【長町青物市場物語】」に、地域住民約60人に加えて、仮設住民2人も出演することになった。
劇は、50年前まであった「長町青物市場」が舞台で、高度成長期ににぎわいを見せる市場で働く主人公の女性が、さまざまな難題を地域住民と乗り越えていく物語。市場の仕組みや当時の遊びなどを地域のお年寄りから聞き取って制作し、今年1月ごろから週2回の稽古(けいこ)を積んできた。
あすと仮設には岩手や福島など県外の被災者も入居しており、長町の歴史に詳しくない住民も多い。「まざらいん」の谷政子さん(61)は「仮設の方も長町の住民。同じ住民という目線で一緒に劇を作り上げ、新住民と旧住民をつなぎたい」と意気込む。仮設と地域の住民らは、これまでも夏祭りや七夕などで交流を続けてきた。劇に出演する「あすと仮設」の飯塚正広自治会長(52)は「私たちも地域に溶け込めるよう努力したい」と話す。
地域に溶け込む活動を重視するのは、阪神大震災(1995年)で復興住宅に入居した住民がコミュニティーを形成できず、孤独死が相次いだためだ。