◇広島12−6ヤクルト
ヤクルト−広島 6回裏1死、見逃し三振に倒れたバレンティン(久野功撮影)=神宮球場で
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広島が今季初の同一カード3連勝。1回にキラの2ランなどで3点を先制し、2回は犠飛、3回は野村の3ランで加点。4回は松山の適時二塁打などで3点を加えた。野村は自身初の2桁勝利。ヤクルトは徳山が7失点と精彩を欠いた。
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神宮の杜は異様な熱気に包まれていた。最下位チームの本拠地で、4−12の劣勢で迎えた8回。普段なら空席だらけになっていそうな展開なのに、2万5617人のファンが誰も席を立たない。外野は両翼とも試合開始1時間8分で札止め。もちろん、バレンティンが49年ぶりに大記録が塗り替える瞬間を目撃するためだ。
広島ファンまでが大歓声で迎えた第4打席。ライナー性の打球が中堅手の右に落ちると、安打にも関わらず場内にため息が漏れた。4試合連発での新記録達成はお預け。「疲れはあるけど、それを言い訳にはしたくない。機械じゃないから、毎試合打てるわけじゃないよ」と小休止だ。
前日、王貞治(巨人)らの持つ年間55本塁打の日本記録に並んだばかり。興奮して午前3時半頃まで寝付けなかった上、最愛の母・アストリットさん(64)が、オランダ・アムステルダムから駆けつけたため、朝7時に起きて成田空港まで迎えに行っていた。
試合前にスタンドの母の姿を目に収めると「試合中は目の前に集中」とバレンティン。試合後、クラブハウスで再会すると、母の肩を抱いてタクシーに乗り込んだ。
褐色の右腕には、ダイヤモンドの図にウラディミールの名を重ねたタトゥーを刻んでおり「心優しく、何でも話をしてくれる。私にとってダイヤモンドのような子。毎日見に来るし、(56号は)明日打ってくれるわ」とアストリットさん。
残り21試合。よほどのことがない限り、新記録達成は確実。母もシーズン終了まで滞在するが、歓喜の瞬間は早いに越したことはない。気持ちを切り替えたバレンティンが13日こそ、歴史的アーチを架ける。 (竹村和佳子)
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