蹴球探訪
5・15 J誕生20年 ラモス氏に聞く 満員の国立「幸せ感じた」(6月3日)
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【モータースポーツ】<今宮雅子のGPテラス>表彰台は歓声に包まれて2013年9月12日 14時27分 「ブーイングが大きければ大きいほど、僕らがいい仕事を行ったって意味だと思った。ゴールの後のインラップでは、チームにもそう伝えたよ」 優勝したベッテルは、笑いながらこう話しました。 モンツァ名物の表彰台では、真下のホームストレートにファンが集まります――他のサーキットではオーガナイザーにペナルティーが科せられるケースもあるこの現象、イタリアGPでは歴史的に許されていて、ゴールの後には観客席とコースの間のゲートが開放されます。ピットウォールの機材が無邪気なファンに持って行かれないよう、各チーム、とくにフェラーリのピット周りではたくさんの警備員や衛兵が警備にあたります。 08年にトロロッソで初勝利を飾ったときには、そんな表彰台でティフォシから祝福を受けて大感激したベッテル。 「モンツァに来るたび、あのときの気持ちが蘇(よみがえ)る」と言いながら、「2011年に優勝したときには、みんながあんまりハッピーじゃなくて驚いた。隣のジェンソンが“赤いスーツを着てないと、ここではこんなもんだよ”って教えてくれたけど…」 今年は盛大なブーイングを浴びましたが、ベッテルの成長は、そんなブーイングをポジティブに捉えられるようになったこと。ティフォシのブーイングは他の国のように批判的な辛辣(しんらつ)なものではなく、ただ単純に、強すぎるベッテルに対して、敬意を持って“この野郎”と叫んでいるようなものでしたから…沈黙よりずっと温かいブーイングでした。 そして今年のモンツァでは、ティフォシが“この野郎”と思っても仕方がないほど、最初から最後までアンタッチャブルなベッテルの速さでした。 レッドブルのマシンにとっては、その強みが希釈されてしまうはずだった低ダウンフォース仕様のコース。走り始めた瞬間から最速のラップタイムと、後ろのマシンに抜かれる心配のないストレート速度を両立させてきたファクトリーのエンジニアには脱帽。モンツァには全チームが特別な仕様を投入しますが、ダウンフォースを削減してマシンが滑りやすくなっても、ドライバーが違和感なく受け入れられる――ドライバーのフィーリングとして“嫌な滑り方をしない”、思い切って攻められるようファインチューンしてきたのが、勝因です。 地元モンツァで必勝を掲げたフェラーリも、得意のモンツァ仕様はけっして失敗ではなかったし、メルセデスやロータスに対しては優位に立ちました。ただ、夏休み前のドイツ〜ハンガリーでシミュレーターの誤算から足踏みしてしまった遅れを100%取り戻せてはおらず、順調に進化するレッドブルに対してはわずかな――しかし決定的な――ハンディを背負いました。 それでも、全力を尽くしたアロンソを、ティフォシは大歓声でたたえました。スマートフォンを使って、そんなティフォシと自分の記念撮影をしたアロンソは、フェラーリを率いながら、フェラーリの大ファン――本物の“ティフォソ”です。 イタリアGPの週末には、予選中のアロンソとピットの交信が必要以上に取り沙汰されました。マッサとアロンソがスリップストリームを使い合う作戦は去年からフェラーリが採り入れているものですが、これを成功させるのは本当に困難。前のマシンのスリップを利用するとストレート速度が伸びる分、コーナーでは不安定になります。マッサは予選でアロンソを引っ張る以上に前のウェーバーから牽引(けんいん)力を得ましたが、アロンソがそのマッサから牽引力を得る最後の瞬間に、ベルニュがパラボリカでオーバーラン。砂塵(さじん)の中で、アロンソはマッサに対して100分の1秒を失いました。 驚いたことに、予選直後には「マッサがアロンソを先行させなかったから、モンテゼモロ社長が激怒している」という噂(うわさ)さえ流れました――Q3最後、1アタックの勝負で3〜4秒後方のアロンソに譲ると、マッサは予選10番手になりますから、それはあり得ません。ベルニュがフェラーリ2台の間に入ったことから「フェリペとの間隔が空きすぎたから、このままじゃ(作戦を)使えない」というアロンソの言葉も、マッサ批判のように捉えられました。 「テレビでは一部の無線だけが切り取られる。今日の場合は本当にゼロ以下だね。ベルニュがフェリペを追いかけたから僕はベルニュとの間隔を置いてそう言ったまでで、その後フェリペが僕を待ってくれて、僕らは予定どおりの間隔で走った。アタックの後には“引っ張ってくれてありがとう”って、チームとフェリペに伝えたのに、その部分は流れてなかったわけでしょ? 毎回、無線の一部を取り沙汰して“なぜ”“どうして”って聞かれるのはもうたくさん!」 テレビで流れるチームラジオは、緊迫した戦いの一部をファンに伝える点で意味があります。でも、全容を知らないプレスが一部を捕まえてドライバーを問い詰めるのは、フェアではありません。ドライバーもチームも、立派なスピーチとして話しているわけではなく、あくまでチーム内での連絡に無線を活用しているのですから…。 こんなことを話題にするのも、今回のモンツァではフェラーリを巡ってレース以外の噂が多すぎたから。これまでドライバーに関する人事はイタリアGP前に発表してきたスクーデリアも、ライコネンの可能性を否定することはできなかったし、忠誠を尽くしてきたマッサに対して離別を言い渡すこともできなかった。その結果、シーズンを懸けて戦うイタリアGPで、アロンソまでもがさまざまな噂に巻き込まれた――もっとも重要な一戦の最中に、最低でも会見では、レースに直接関係のない質問にも答えなければならなかった。それは自分の範囲で処理するとしても、チーム上層部がイタリアGP以外のこと=2014年のラインアップに思考を取られること自体が、アロンソのフラストレーションにもつながったと思います。誰がチームメートでも僕はかまわないから、一丸となってイタリアGPに集中しようよ、というふうに。 表彰台でジョン・サーティースさんと一緒にインタビュアーを務めたジャン・アレジさんが「フェルナンド、フェラーリはきみを愛しているんだよ」と言ったのも、スクーデリアで走った経験から、こんな背景のなかで頑張ったアロンソを理解していたから…。 でも、ベッテルとのポイント差が開いてしまったとはいえ、力を出し切ったイタリアGPでした。もしも、ベッテルの直後にタイヤ交換を行ったとしても、硬いハードタイヤではレッドブルに迫ることはかなわなかったと思います。たとえ、ベッテルの“ギアボックス・トラブル”が本当であったとしても。 1周目の1コーナーでペレスに追突したライコネンは、緊急ストップの後、ペースを抑えた首位ベッテルより速いタイムで走り続けました。スローパンクチャ―によって2ストップに切り替えざるを得なかったハミルトンと一緒に、レース終盤には見事なオーバーテークを披露し、レースを活気づけました。モンツァは長いストレートの真ん中にピットがあるため、タイヤ交換によるロスは他より大きく、硬いタイヤがもつことも手伝って1ストップが定石になっていますが、ふたりの追い上げを見ると、もしもハンディのない位置からスタートし、最初から2ストップの予定でどんどん攻めていけば――もっと面白いレースになったかもしれません。土曜の予選での、ふたりの不振が残念。 その一方で、予選で活躍したヒュルケンベルグとリチャルドは、好グリッドを生かして5位、7位という結果につなげました。一様に低ダウンフォース仕様といっても、滑りやすい仕様でドライバーが“マシンを信頼できる”セットアップの幅はとても狭く、その幅のなかにうまくマシンを入れれば総合力で勝るチームにも対抗できる――コーナ数が少なく、ラップタイムの差が広がらないモンツァの特徴が、ふたりの健闘に表れたグランプリでもありました。 PR情報
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