(2013年9月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ノルウェーは9日の議会選挙で中道左派の連立政権をお払い箱にした。北欧に根付いた国家統制主義の社会経済モデルを放り出す周辺各国の流れに続いたようにも見える。しかし実際は、ノルウェーの右寄りの政権交代は隣国で起きた状況との連続性よりもむしろ好対照をなすものだ。
中道右派陣営の4党は連立協議に入るが、次期政権の陣容を決めるには数週間かかる。だが勝者は明白だ。第1党保守党のエルナ・ソルベルグ党首が、労働党のストルテンベルグ首相の後任に就くことはほぼ間違いない。
8年間政権を担ってきた中道左派連合から新顔への交代を求める国民の率直な願いがあったとはいえ、「北欧モデル」への有権者の態度の変化を誇張すべきではない。この点では、与党が今回の選挙に敗れたことより、欧州全体で中道左派が苦戦していた2009年に再選されたことのほうが驚きだ。
■洗練された国にする政策を目指す見通し
さらに、ノルウェーでは過去20年間に中道左派と中道右派との政権交代が数回起きているが、政策が大きく転換することはなかった。スウェーデンのように福祉国家の根本的改革に乗り出すことは考えられない。ただ、財政を幾分スリムにし、巨額の石油収入をより洗練された仕方で生かす国家になると期待してよいだろう。2011年7月に多数の犠牲を出したテロ事件の後、安全対策が機能しなかったのは、政治決定された政策を実行に移す能力がないためだと指摘された。ソルベルグ氏の最大の仕事は、これまで経済に悪いところがないため自動操縦に任せていた国家装置を立て直すことだ。
国際的に見ても、ノルウェーの各政党の理念の違いは小さい。唯一の例外は進歩党だ。今回の選挙では票を減らしたが、シーブ・イェンセン党首が新政権で閣僚ポストを獲得すれば、逆説的に最大の勝者ともなり得る。ポピュリストの右翼政党がこれまで政権入りできなかったのは、他の政党がその立場に適さないとみていたからだ。
進歩党は、移民排斥に熱心で経済運営に難があるという評判の払拭に努めてきた。その結果、欧州はもちろん、スウェーデンよりも、ノルウェーの右翼は国民に許容されやすくなった。ただ、連立政権に加わることには多くの有権者が依然不安を抱いている。何よりの望みは、責任の重みによって同党が適応力を増すことだ。中道政党2党が参加することでなお効果は大きくなる。ソルベルグ氏はこうした幅広い勢力を結集した政権を目指すべきだ。
(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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