タカ2軍誘致合戦、過熱気味 九州29自治体が名乗り [福岡県]
プロ野球福岡ソフトバンクホークスのファーム(2、3軍)新本拠地をめぐる誘致合戦が過熱している。球団が公募を始めて1カ月余りとなる10日時点で、名乗りを上げたのは5県の29市町。球団が示した「9月中旬」の締め切りまでに、さらに増えるとみられる。各自治体とも、人気球団を呼び込んで地域活性化につなげたい考えだが、別の事情も垣間見える。
炭鉱閉山から約50年未利用のぼた山(福岡県須恵町)、活用策未定の埋め立て地(佐賀県唐津市)、土地売却が進まないアイランドシティ(福岡市)、閉鎖した競馬場跡(熊本県荒尾市)…。候補地には利活用が進まない「塩漬け状態」の土地が目立つ。誘致できれば不良資産が一気に観光の目玉となるだけに、各自治体の期待は高まる。
福岡県那珂川町は少し事情が違う。町は人口5万人以上が条件の市制移行を目指しているが、現状は4万9900人台で伸び悩み。「ホークス誘致で人口増と市移行実現を」と意気込む。
同県苅田町は、国内線が羽田便しかない北九州空港そばの埋め立て地が候補だ。「ホークスの2軍が所属するウエスタン・リーグは関西の球団もある。関西便を誘致できる」と皮算用する。
長崎県雲仙市が候補地とした多比良港埋め立て地は、高速道路のインターチェンジ(IC)まで約50分。球団が掲げる「ICからおおむね20分圏内」の公募条件とは合致しない。それでも市関係者は「広大な土地が雲仙市にあるとアピールするのも狙い」と話す。
各自治体が名乗りを上げる中、「市民から『手を挙げてほしい』という要望が多く、無視できなかった」(福岡県八女市の幹部)というケースまで出てきた。
誘致活動も過熱気味だ。福岡県宮若市は8月下旬、新聞5紙に計約700万円をかけて「若鷹(たか)が羽ばたく 上昇気流は宮若市に吹く」との全面広告を掲載。さらに誘致費用2500万円を予算化した。同県では大牟田市や鞍手町なども誘致費用を計上。古賀市は市長が駅でビラ配りをした。
こうした状況に球団は「多くの自治体に手を挙げてもらい、ありがたい」と歓迎する。
ただ、一部自治体には「球団の本音は福岡市残留」「公募は福岡市から好条件を引き出すための交渉術ではないか」との見方が消えない。「これだけ巻き込んで今まで通り福岡市に決定はないだろう」(同県内の自治体)との声も漏れる。
激しさを増す誘致競争に、シンクタンク「地方経済総合研究所」(熊本市)の内田祐史調査一部長は「誘致できれば効果は大きいが、多くの自治体は選から漏れる。落選した自治体は誘致に参戦した理由や、かかった費用を住民に説明する必要がある」と指摘する。
=2013/09/11付 西日本新聞朝刊=